深夜、幼女を拾う 11
「どうしたの、けーたろー?」
タマが様子を伺ってくる。その気遣いも嬉しかった。
しかしその顔が、どうしても過去の記憶と重なってしまう。
「いや、家族のことを思い出してな」
「家族? けーたろーの?」
「ああ。妹がいるんだよ、タマと同じくらいの。今はもう少し大きくなってるかな?」
「ふーん。もしかして、それでアタシのことが放っておけなかったとか?」
ニヤニヤとした笑みを浮かべるタマ。それに対して蛍太郎は目を泳がせる。
それがないとは言い切れないからだ。確かにタマを見つけた時、真っ先に実家の妹の顔が浮かんだ。特別似ているわけではないが、同年代の少女ということで、どこか面影を感じたのだろう。
咄嗟に警察に対して吐いた嘘も、そこから来ている。妹がいるというのは事実だった。
「俺は……。妹には嫌われたままだからな。あいつの泣き顔が忘れられないから、タマに手を差し伸べてしまったのかもしれない」
「何かあったの? アタシでよければ話聞くよ」
中学生(?)の分際で、随分と上からな物言いである。
だが彼女と話していると、不思議と心がほぐれる。
「まぁ、ほとんど俺が悪いんだ。家を出ることをきちんと話さず、あいつを避けるみたいなことをしたから……」
思い出されるのは、数年前のやりとりだ。進学するにあたって独り暮らしをすると告げたら、酷く罵られた。大泣きされた。嫌いだ、さっさと出ていけと怒鳴られた。
あれはきっと、寂しさからくるものだったのだろう。しかし彼女の態度に腹を立てた蛍太郎も、色々言い返してしまった。
家を出てからは、会えていない。一応正月には実家に顔出ししたが、日帰りだったこともあり、妹とは会えずじまいだった。
お互いに気まずくなってしまい、それが今日まで続いている。いつかどちらかから声をかけ、謝るまで、この関係は続くだろう。
「だからタマを放っておけないんだ。……おかしいよな、タマは俺の妹じゃないのに」
ごめんな、忘れてくれ。そう言うとタマは、全力で首を横に振った。
「ううん。なんか、よかった。けーたろーが優しい理由がわかって」
「わかったのは俺が優しくないってことだろ」
「そんなことないよ。けーたろーがホントに優しくないなら、妹ちゃんのことを覚えてたりしないよ」
そう言われ、なんだか安心する。抱えていた罪悪感が、少しだけ、消えるような気がした。
「妹ちゃんと仲直りできるといいね」
「ああ。今度実家に帰った時は、きちんと会ってみるよ」
タマのおかげで、蛍太郎は久々に家族のことを意識するのだった。




