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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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45章 勇者と魔王 23

『魔王』の大量光球攻撃は、結局30分くらい続いた。


 続いたということは、俺もそこまで『隔絶の封陣』をもたせたということだ。


 さすがにおかしいと思ったのだろう。『魔王』は今出現させている数千の光球を一斉に俺に撃ち込んでくると、そこで様子を見るために攻撃の手を休めた。


 大陸一つ吹き飛ばしかねない凄まじい飽和攻撃を受け、それでも俺の『隔絶の封陣』は健在だった。『魔王』の攻撃を凌ぎ切ったのだ。


「……貴様の魔力はとうについえたはず。なぜここまで耐えられるのだ」


「外から魔力を借りられるのは、なにもお前だけじゃないって話さ」


 俺は答えながら、腰に着けた弁当箱みたいな容器を『空間魔法』に放り込み、別の容器を取り出して、腰のホルスターに差し入れた。


「魔力の充填槽だと? まさか貴様がそのような小癪こしゃくな小細工をするとはな」


「意外と物知りだな。まあそういうわけで、こっちも準備はしてきるんだ。ちなみにこの充填槽はウチの技術者が作った特注品で、お前が知っているものの軽く100倍くらいは魔力を蓄えられる」


「なるほど、そのような形で理を曲げてきたか。やはり貴様は、最後まで余を邪魔せずにはいられぬ存在ということか」


「そういうことだな。で、どうする。またさっきの攻撃を続けるか?」


「貴様のことだ、その充填槽も無数に持ち運んでいるのだろう。ならば貴様の望み通り、普通に戦ってやるしかあるまい」


「だよな」


『魔王』はそこで両腕を組んだ。


 すると肩のあたりから、赤黒い剣が四本にゅっと飛び出してきた。長さはそれぞれ2メートルくらいだろうか。しかもその剣は宙に浮いたまま、『魔王』の周囲を漂い始めた。


「ゆくぞ、勇者よ」


 言葉と同時に、『魔王』は腕を組んだままの姿勢で滑るように突っ込んできた。


 赤黒い四本の剣が、まるでそれぞれが意思を持っているように動き回り、同時に俺の首や心臓や腕や足を同時に狙ってくる。


 俺は『天之九星』と『ディアブラ』で受け止めるが、単純に数が足りてない。その分は『高速移動』で動き回って避けるしかないが、『魔王』自身がバルロ並みの速度で動くので、避けること自体簡単ではない。


 もちろん『魔王』の剣の一撃一撃に、山を砕き海を割るほどの魔力が込められている。剣と剣がぶつかることで生じる光と衝撃と音と熱とは、前の時のそれより桁違いにデカくなっている。


 互いに音速を軽く超える速度で飛び回り、その軌道が交差するたびに数十回もの斬撃が交わされる。その度ごとに俺の身体は皮膚が裂けたり肉が殺げたり骨が折れたりするが、『再生』スキルと回復魔法が瞬時に修復する。


 一方で魔王の半液体状の身体も、あちこちが吹き飛んで黒い飛沫を飛び散らせている。もちろん欠けた部分はすぐに周りの液体が集まって元通りになってしまう。その身体自体の大きさも変わらないので、無限に再生可能なようだ。


 ともかく剣の数が単純に違うので、受けるダメージは確実にこっちの方が多いのが問題だ。さすがに勇者と言えども腕の数は増やせない。ならばそれは剣技と、剣そのものの性能差で補うのみだ。


「真の力を得た余とここまで渡り合えるとは。つくづく貴様はあってはならぬ存在よ」


「そりゃお互い様だ。お前がこの世界にいちゃいけない存在だから、それを滅ぼすために勇者が生まれたんだ」


たわけたことを。この世界が余に支配されるのは摂理。貴様はその摂理を押しとどめようとする愚か者に過ぎぬ」


「摂理じゃないから何度も勇者に叩かれてるんだろ。現実からものを考えろって」


「余がここに存在していることが現実である」


「ならこれから起きる現実をしっかり心に刻み込めよ」


 俺がさらなる魔力を注ぎ込むと、『天之九星』と『ディアブラ』は一段とまとうオーラを増す。『天之九星』は聖なる白、『ディアブラ』は混沌たる赤と黒が混じった色だ。


 再び始まる超高速の斬り合い。完全に空中戦と化している俺と魔王の戦いは、もはやそれ自体が膨大なエネルギーの爆発となって、この魔王城の広大な空間に広がっては消えていく。この魔王城がダンジョン特有の不思議空間でなく普通の建物であったなら、とっくに消滅していたことだろう。


 全開状態の『天乃九星』と『ディアブラ』は魔王の四本の剣に対して一歩も譲らず、俺の意のままにその力を振るっている。


 一方魔王も、勇者と聖剣と魔剣の全力攻撃にいささかも遅れを取ることなく、むしろ時には優勢を保って立ち回っている。


 一瞬の隙が致命的な結果をもたらし、刹那の停滞が状況を決定的にする――


 針の先で激しいダンスを踊るようなそんな矛盾に満ちた戦いは、『感覚高速化』によって無限に引き延ばされた時間の中で、永遠と思われるほどに続いていく。




 そして……どれくらいの時間が経っただろうか。


 俺の中では1年くらい続けているような感じだが、客観的にはたぶん1時間くらいだろうか。それでも短くない戦いの中、俺と魔王は互いに健在で、未だに全力でぶつかり合っていた。


 互いに早期決着のつもりで臨んだ剣での戦いだが、結局我慢比べになっているのは笑うしかない。


 だがまあ、俺は何となくこうなることは予想していた。攻撃も防御も極まった者同士、力が拮抗していれば後は体力勝負、魔力勝負になる。魔法の撃ち合いをしていても結局は同じ展開になっただろう。


「どこまで余の邪魔をすれば気が済むのだ、勇者よ」


「お前が消えてなくなればそれで満足するさ」


「愚問であったか。だが、貴様もそろそろ気付いているはずだ。力を出し切っても余を圧倒できぬのなら、貴様の勝ちはないということを」


 腕組みをして四本の剣を周囲に巡らせながら、魔王はそう言い切った。


 まあ確かに、それはその通りである。魔力充填槽は大量に用意はしてあるが、さすがにこの惑星全体から供給される魔力の量に勝てるとは思えない。


 実は結構省エネしながら戦っていたのだが、それでも充填槽の残量はすでに半分を切っているはずだ。


「だが最後に勝つのは俺だ。その理由は簡単だ。お前は手下を使い捨てにした。そして俺には勇者の仲間が大勢いる。それだけだ」


「リードベルム級などいくら揃えたところで余を滅ぼすことなどできぬぞ」


「安心しろ、お前を滅ぼすのは俺だ。だが、俺の背中には仲間がいる。その差は大きいってことさ」


「勇者の精神論とやらか? 確かに過去の余はそれで倒されたこともあろう。侮れぬことは余も理解している。だが此度の戦いにおいてそれが役立つとは思えんな」


「お前自身がその身で確かめるんだな」


「ならば最後は互いの魔力をもって力を比べるか? 剣の差し合いはもう飽きが来たゆえな」


 おっとそう来たか。だが結局、剣を使おうが魔力だけで戦おうが、俺と魔王の間では変わりがないのかもしれない。俺の手の中で『天乃九星』と『ディアブラ』が微かに震えて抗議したように思えたが、まあ最後に出番はあるはずなので我慢してもらいたい。


 俺と魔王は空中で距離を取り、互いに両手前に伸ばした。


 その前に俺は剣を一旦しまって、代わりに魔力充填槽を大量に身体にくっつけている。


「そのような小手先の技がどれだけもつか、見物だな勇者よ」


「なに、これを使い切る前に終わるさ」


「その態度は最後まで変わらぬか」


 魔王の両手の先に膨大な魔力が凝縮され、それが黒い球となって膨らんでいく。それに対抗するように俺の両手の先にも同じくらいの魔力が集まり、白い光球となって強烈な光を放つ。


 そして、それぞれの魔力が臨界点に達した時、魔力の奔流が一方は黒い柱となって、一方は白い光の帯となって互いに伸び、中間点でぶつかり合った。


 瞬間起こる、白と黒の相克のページェント。白と黒が混ざり合い、しかし決して相容れずにうねり、猛り、せめぎ合い、極大のエネルギーを周囲に撒き散らす。もはやそれは光や音、衝撃や熱といった分類が無駄と思えるほどの、単純な力の放出だった。


 さて、ここからどれだけ頑張ればいいか。


 たぶんそろそろ効果が見えてくるはずなんだが……まあここは、勇者らしく仲間を信じて耐えるとするか。


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― 新着の感想 ―
勇者の仲間がこの惑星にあるダンジョンとモンスターを全て駆逐してしまえば魔王に力を供給する存在が無くなるってことかな?
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