45章 勇者と魔王 10
2体目のボスを倒した俺たちは、再び入口ロビーへ戻った。
正面の扉は相変わらず閉ざされていたが、2体のボスを倒したことで条件が満たされたのか、俺が近づくと自動で開いた。
「本当に開きましたね」
「だな。問題はこの先だ」
双党に答えて、俺は扉を潜った。
扉の先はやはり廊下になっていて、50メートルくらい先に巨大な扉がある。
モンスターは出現しなかった。扉も何事もなく自動で開く。
その先にあったのはまたしてもロビーのような空間だった。正面と左右に扉があり、正面の扉は強力な魔力を感じるのも同じ。
つまりさっきと同じことを繰り返せという訳だ。
「ちょっとこれって意地悪くない? 魔王ってそういう性格なワケ?」
リーララが口をとがらせながら横にやってくる。俺はその頭を撫でながら、
「ま、奴に比べりゃお前ですら聖人君子に思えるほどだな」
と教えてやる。
「はぁ~? 私はもともと性格良すぎる人間ですけど~」
「確かにいい性格はしてるな」
リーララの蹴りを躱しながら、俺は右の扉へと歩いていった。
扉が開くと、そこはやはり広く長い廊下になっていた。突き当りに大きな扉があるのも同様である。
廊下の左右に扉が並んでいる。一つこじ開けてみたが空の部屋だった。もしかしたら当たりの部屋には宝箱があるのかもしれないが、さすがに全部の部屋を確かめるのは面倒くさい。
前進すると天井から『魔導廃棄物』が垂れてきた。出現したのはグレーターデーモンだが、体格が一回り立派で、顔もどことなくイケメンだ。
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アークデーモン Aランクモンスター
悪魔、魔族と呼ばれることもある上位モンスター。
グレーターデーモンの上位種。
飛行できることに加え魔法も使用し、特に炎の魔法を得意とする。
二刀による剣術の使い手でもあり、格闘戦にも長ける。
非常に好戦的、かつ戦闘好きで、強者を優先的に狙う特徴がある。
特性
打撃耐性 斬撃耐性 刺突耐性 魔法耐性
スキル
全属性魔法 双剣術 威圧 咆哮
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「グレーターデーモンの上位種だな。炎魔法が得意になった以外はグレーターデーモンと同じらしい。ただ能力は高いだろうから注意な」
と俺が注意をすると、ルカラスが首をかしげた。
「ハシルよ、グレーターデーモンの上位種といえばデーモンキングではないのか?」
「だよな。俺もコイツは初めて見る」
「むう……。新種を呼び出せるということは、『魔王』も昔のままではないということか」
「そりゃそうだろ」
そんなことを話している間に、アークデーモンは50匹くらいが出現していた。
すでにアンドロイド兵は廊下一杯に広がっていて、青奥寺たちも構えていて俺の指示待ちである。
「よし撃て」
相手を待ってやる理由もないので先制して指示を出す。
500本を超える『ジャッジメントレイ』が迸り、アークデーモンを次々と貫いて炭にしていく。たださすがに上位種、それだけで全滅はしない。数匹が両手に炎の剣を持って滑空して突っ込んできた。
「ここは任せて」
青奥寺たち前衛陣5人が前に出て1対1で切り結ぶ。上位種らしく剣技も強力なアークデーモンだったが、勇者パーティには勝てずにすぐに斬り伏せられていた。
というか、元々空を飛べるルカラスはともかく、青奥寺たちも普通に『機動』魔法を使って格闘戦をこなし始めている。いや本当に強い。これなら俺がいなくても地球はもう大丈夫な気がしてきたな。
さて、最奥部のボスだが、広い部屋に現れたのはさっき話に出た『デーモンキング』だった。
見た目は身長2メートル半ほどの、端正な顔立ちの貴族的な男である。服装は群青色を基調とした超高級そうな貴族服で、いかにも位が高そうなモンスターだ。
長い銀髪を後ろでまとめ、額からはねじくれた二本のツノが天を衝くように上に伸びている。背中には蝙蝠の羽根と尻尾、真紅の長剣を地面に突き立て、腕組みをしてこちらに赤い目を向けている。
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オーヴァーロード Sランクモンスター
デーモンキング族の最上位モンスター。
極めて高い魔力を内包し、剣魔両面に優れたモンスター。
元の身体能力も極めて高く、振るう長剣は大地を割り海を裂くと言われている。
配下を指揮する能力にも長けており、基本的に多くのモンスター、特にデーモン族を従えている。
極めて高い物理耐性、魔法耐性と再生能力を持っている。
弱点は聖属性。
特性
身体超強化 強物理耐性 強魔法耐性 状態異常耐性
スキル
上級長剣術 飛行 上級指揮 超再生 召喚
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おっと、デーモンキング自体は前も一度戦ったが、今回はその上位種か。
しかもSランクとは凄まじい。前に『サタン』というのと戦ったが、それと同等の奴だろう。
「これはまた強そうなのが出てきたなハシルよ。我でも手こずりそうな相手だ」
「Sランクらしいから『魔王』と同等のモンスターだな」
ルカラスに答えつつ、俺は『天之九星』を取り出す。さすがにこれは俺が相手をしないといけないボスである。
「俺がやるから下がっていてくれ。スキルに『召喚』というのがあるから、もしかしたら他のモンスターを呼ぶかもしれない。そっちの相手は任せる」
「任せておけ。娘たち、聞いたな?」
ルカラスの言葉に、青奥寺たちが「はい」と答える。
なんか、前から気になっていたのだが、青奥寺たちはすっかりルカラスをリーダーみたいに扱ってるんだよな。
まあ古代竜は明らかに上位の存在だし、力も上だから自然とそうなるんだろうけど、なんかそれ以外にも理由がありそうな気がする。同じ女性同士で気が合うとかあるのだろうか。いや、俺はまだルカラスを女だとは思ってないが。
俺が一人で前に出ると、『オーヴァーロード』は右手で真紅の長剣を床から引き抜いた。
「我が前で跪かぬは不敬であるぞ」
「うわ、また喋るモンスターですよ先生」
双党は『サタン』の時も反応していたな。まあ確かに喋るモンスターは珍しいけどね。
「気にするな。そういうキャラクターってだけだ」
「それはそれで酷い扱いだと思いますけど」
俺がさらに前に出ると、『オーヴァーロード』は左腕をこちらに突き出し、手のひらを向けてきた。
「二度は言わぬ。不敬なるは正すのみ」
手のひらの前に魔法陣が浮かび上がるが、攻撃魔法のものではない。
見ると部屋のあちこちの床から『魔導廃棄物』が滲み出して、アークデーモンに変化していった。
『召喚』というスキルだろうが、一度に100体近くを呼ぶのはかなりのものだ。こいつが勇者時代に出てきていたら、勇者パーティも結構ヤバかったかもしれない。




