45章 勇者と魔王 07
『魔王城』の周囲に現れた『ヘカトンケイル』を一掃して、いよいよ地上へ降下する準備が整った。
地上へ降下して魔王城へ乗り込むのは、俺のほか、青奥寺、双党、新良、レア、雨乃嬢、絢斗、三留間さん、リーララ、宇佐さん、カーミラ、ルカラスの12人だ。前に乗り込んだ時は4人だったが、勇者パーティも増えたものだ。
更にイチハ、フタバ、ミツバのエリートアンドロイド三人に率いられたアンドロイド兵500人も一緒である。
「お兄ちゃん、必ず戻ってきてください!」
抱きついてきた清音ちゃんの背中をポンポンと叩いてやる。
他の居残り組の九神、山城先生、明智校長、関森先生、イグナ嬢、そして人化したクウコも、並んで俺たちを見送る形になる。
「先生、そして皆さん、お戻りになることを信じておりますわ」
「清音のためにも必ず戻ってきてね、相羽先生。そして皆も、無事に戻ってくることを祈っているわ」
「皆さんにこのような戦いをお任せしなければならないことを心苦しく思います。皆さんが無事に戻ることを祈ります」
「ああ、こういうのは少し苦手だが、戻ってきたら色々話を聞かせて欲しい」
「ハシルさんも皆さんも頑張ってください~。帰ったらまた尻尾触ってもいいですから~」
「皆様に……武運の……あらんことを……」
そんな言葉を全員からもらうと、いよいよ決戦という雰囲気が高まってくる。
俺は涙を浮かべる清音ちゃんを山城先生に預けて、「ありがとうございます。必ず全員を無事に帰すことを約束しますよ」と言って、出撃組の方を見た。
皆がうなずくのを確認し、直立不動の『ウロボちゃん』へ目を向ける。
「じゃあ、この後近寄ってくるだろうモンスターの相手は任せるぞ」
『了解でっす。「勇者艦隊」の他の艦も惑星に降下を開始してますので問題ありません~』
「ならよし。手こずるようならいったん退避してもいいからな。安全第一で行ってくれ」
『わかりました~』
「じゃあ地上に転送を頼む。あの魔王城の入口の前だ」
『了解でっす。では転送しまっす。お早いお帰りをお待ちしていまっす。お気をつけて~』
いつもの『ウロボちゃん』の緊張感のない言葉とともに、俺たちは光に包まれた。
次の瞬間立っているのは、荒れ果てた大地の上である。
正面には超巨大な黒い建造物。『魔王城』が俺たちを睥睨するようにそびえている。
遅れて、俺たちの周囲にイチハたち503人のアンドロイド兵が転送されてくる。全員が特製魔導銃を持ち、背中に大きな箱を背負っている。箱がいわゆる『ポータブルマギジェネレータ』だろう。
青奥寺たちはいつもの装備である。青奥寺と雨乃嬢がそれぞれファンタジー日本刀『ムラマサ』と『マサムネ』。双党とレアは、アンドロイド兵と同じ『ライトアロー』と『ジャッジメントレイ』を切り替えて撃てる特製魔導銃と『ポータブルマギジェネレータ』。カーミラは魔導杖。三留間さんは勇者パーティの大僧正が使っていたローブと杖の一式。魔法少女スタイルに変身したリーララは弓型魔導具『アルアリア』。新良はオリハルコン製アームドスーツに魔導銃を、絢斗は長剣『デュランダル』を装備している。ルカラスは素手だが、ツノと翼と尻尾を出しているので本気モードである。
もちろん全員、『勇者コレクション』からあるだけのお役立ちアクセサリをつけている。
「さて、じゃあ入っていくが、間違いなく中には高ランクのモンスターがうじゃうじゃいるから覚悟してくれ」
「あっ先生、アロープロテクトって魔法かけてくださいよっ」
双党の言葉で思い出した。どうも俺も知らない間に緊張していたようだ。
「悪い悪い。『アロープロテクト』」
双党たちだけでなく、イチハたちアンドロイド兵にもかけてやる。
「よし、ではいざ『魔王』退治だ」
俺は『魔王城』へと振り返り、禍々しいレリーフの刻まれた、巨人が出入りするような巨大な両開きの門を押し開けた。
中は恐ろしく広いロビーになっていた。ロビーというより、『ウロボロス』の貨物室をさらに広くしたような無機質な空間である。
幅と奥行きは50メートル以上あるだろう。天井も見上げた首が痛くなるほど高い。
壁面は灰色ベースの色合いで、近未来のマテリアルで作られた秘密基地の内部みたいな雰囲気である。
前方と左右に両開きの扉があるが、これも銀河連邦の建物で見たようなデザインだ。ただその大きさはトラックが出入りできるくらいに大きくて、本当に軍事基地かなにかのような趣がある。
ロビー内に敵影はない。拍子抜けするほど静かなものだ。
「これが魔王城……。見た目は広いこと以外は普通の建物に見えますが、どことなく圧力みたいなものを感じますね」
青奥寺がそんな感想を口にすると、双党と新良も、
「なんか、誰かに見られてる感じがするかも。監視カメラがあっちこっちにあるっていうか」
「センサーにはなんの反応もない。けれど確かに監視されていると感じる」
と、それぞれ感想を述べた。
「ま、どこかで『魔王』がこっちを見てるんだろうな。そういうことする奴だからな。よし、とりあえず進むぞ」
とりあえず正面の扉に近づくが反応はなし。扉の左右にもスイッチ類は一切なく、『ウロボロス』謹製のリストバンド端末を近づけてもハッキングできなかった。つまりこの扉は条件を満たさないと開かないタイプのものである。『掘削』魔法を試そうと思ったが、ズルして開くと余計な面倒が起こりそうな予感がしてやめた。
諦めて右の扉に向かうと、こちらは近づいただけで自動的に開いた。
双党が素早く魔導銃を構えて扉の奥に銃口を向けるが、その先の廊下にはなにもいない。
「先生、なんでこっちは開いたんですか?」
「あの正面の扉は多分魔力でロックされているんだ。で、そのロックしてる奴が左右の扉の奥にいるって寸法だな」
「つまりこの先にいる誰かを倒さないと、正面の扉は開かないってことですね」
「そういうことだ。ちなみにこれは昔の魔王城と同じシステムだ」
異世界にあった魔王城ダンジョンはダンジョンだったが、この魔王城は一応ダンジョンではなく、きちんとした建物になっているようだ。
ただまあ、その構造が理に適ったものになっているかは怪しいところだ。前の魔王城も一応城っぽい間取りにはなっていたが、おかしなところも少なくなかった。
とりあえず開いた入り口をくぐって、その先の廊下に入って行く。
廊下は広く、車が3、4台は並んで走れそうなくらいの幅がある。天井も高く、奥行きは500メートル近くありそうだ。その最奥には大きな両開きの扉が見えたが、その先になにかがいるのだろう。
広い廊下は500人オーバーの勇者部隊でも問題なく行進できる。しかし11人の勇者パーティと500人オーバーの勇者軍が後ろにいるのは頼もしい。半端なモンスターなんて一斉射撃で終わりそうだ。
【告知】
別に連載をしている『娘に断罪される悪役公爵に転生してました』のコミカライズ1話が、カドコミ様にて先日21日から公開されております。
コミカライズしてくださっているのは朝ケ夜様になります。
好感度アップに励む公爵様の姿を、コミックで是非ご覧になっていただければと思います。
よろしくお願いします。




