45章 勇者と魔王 05
『艦隊密集隊形。前方に火力を集中~』
『勇者艦隊』は今、魔王がいる『惑星X-0192』へと全速で突き進んでいる。前方には超巨大モンスターが依然として58匹いるが、そいつらはかなりバラけていて、しかも凄いスピードでこっちに進んでいるので俺たちの突撃には対処できない。
12隻が集まって進む『勇者艦隊』は、前方の邪魔になりそうな超巨大モンスターだけに通常兵器を束で叩きつけて粉砕している。
マギレーザーによる赤いレーザー光が数十本、レールガン――こちらも弾頭は魔力兵器に改造済み――の弾頭数百発が前方に射出される光景は凄まじく、ミリタリーマニアの双党やレアだけでなく、清音ちゃんや九神、三留間さんや明智校長までが見入っている。
『敵モンスター群を抜けました~。モンスター群はそのまま直進、銀河連邦支援艦隊の方へ向かっていまっす』
「残りは敵艦隊だけか」
『そちらに関しては、正面に「ソリッドマギキャノン」での砲撃を行い、本艦と「ヴリトラ」はそのまま「惑星X-0192」への降下を行う予定でっす。敵残存艦隊についてはこちらの残り艦隊で掃討しまっす』
「構わないが、それで大丈夫なのか?」
『問題ありません~』
正面モニターに映る『惑星X-0192』が次第に大きくなってくる。
よく見ると、その手前に50隻ほどの宇宙戦艦が点々と浮いているのが確認できる。それぞれステータスが表示されるが、『ウロボロス』に匹敵するような巨大戦艦はいないようだ。
『敵艦隊、ガルガンティール級戦闘艦2、トライレル級砲撃艦12、ミッドガラン級駆逐艦30、それにモズモント級強襲揚陸艦8の計52隻でっす。「ウロボロス」「ヴリトラ」』、ともに「ソリッドマギキャノン」装填完了。照準セット。艦長、命令をお願いしまっす』
「発射してくれ」
『了解でっす。「ソリッドマギキャノン」発射~』
2発の巨大弾頭が超高速射出され、そして十数秒後、前方に超巨大な光球が2つ出現する。敵艦隊はかなり広い陣形を取っていて回避行動も取っていたようだが、それでも3分の1くらいの戦艦が消滅したようだ。
『ガルガンティール級戦闘艦2、トライレル級砲撃艦6、ミッドガラン級駆逐艦11の撃沈を確認。敵艦隊、「ソリッドキャノン」射出を確認』
「俺が守る。密集させてくれ」
『了解でっす』
一塊になった『勇者艦隊』を、俺の『隔絶の封陣』の多面体シールドが包む。飛来した「ソリッドキャノン」のミサイルはその表面で次々弾けて消えていく。
情報が行っているなら向こうも無駄だと分かっているはずだが、それ以外やりようがないのだから仕方ないのだろう。上司が『魔王』じゃ、逃げたら即死刑だしなあ。
『敵「ソリッドキャノン」を全弾撃ち尽くした模様でっす。これなら残存艦隊は問題なく掃討できまっす』
「よし、『ウロボロス』『ヴリトラ』は惑星に降下。残りは敵の片づけだ」
『了解~』
『ウロボロス』『ヴリトラ』以外の戦艦は減速しつつ、回頭しながら周囲に散っていった。この後戦艦同士での格闘戦を行うはずだ。
一方『ウロボロス』『ヴリトラ』は高速で惑星に接近を続けている。どうやらもう障害はないようだ。
さて、それではいざ『魔王城』へ。
俺は青奥寺たちの顔を見渡してから、再び正面モニター一面に映る青い星へと目を向けた。
今、『ウロボロス』と『ヴリトラ』は、大海原の上空2キロを音速の5倍ほどのスピードで飛行している。
眼下を映すモニターには、地球のそれと変わらない深い青の海が広がっている。
外洋なので波のうねりは大きいが、船が浮かんでいるわけではないのでその規模はわからない。
と、その海の中からいきなり黒い影が現れて、海上に姿を現した。
「あれって蛇……なんですの?」
お嬢様の九神が、モニターを見てつぶやいた。
そう、現れた黒い影は細長く、まるで蛇のように蛇行しながら海の上を泳いでいる。
だがよく見ると、その蛇は全身が尖った硬そうな鱗に覆われていて、頭部はウツボに似ており、ついでに角が二本生えている。しかもモニターの表示からそいつは全長80メートルあるようだ。
「あれはシーサーペントの成体だな。あそこまで育った奴は俺も見たことがないが」
「シーサーペント……ということはモンスターなのですわね。もしかして、この海にはすでにモンスターが繁殖しているということでしょうか?」
「だろうな。もっとも海は広いからそうそうモンスターに出くわすことはないんだが、あんなのがいるってことはウジャウジャいてもおかしくないな」
モンスターは普通の動物とはその生態はまるで異なる生き物だが、一応成長過程はあって、小さいうちは普通に野生動物に狩られてしまうこともある。だからモンスターが発生したからといって、野生動物がすぐに全滅するとかそういうことはないが、あんな巨大なシーサーペントがいるということは、この星は完全にモンスターに支配されている可能性もある。
その後も海上には他のシーサーペントや、全長30メートルオーバーの巨大サメ『ポリメガロドン』、傘だけで直径30メートル超えの発光するクラゲ『ファイアメドゥーサ』などが現れ、清音ちゃんや三留間さん、そして明智校長などが目を輝かせていた。
一方で俺の顔は、そのモンスターの出現頻度にかなり渋くなっていた。
「この様子じゃ、この星はもうだめかもしれないな」
「どういう事です?」
九神が反応し、青奥寺たちもこちらを見る。
「ここまでモンスターが増えてるってことは、複数のダンジョンがオーバーフローを起こしていて、もう手が付けられない状態になってる可能性が高い。もし『魔王』を倒せても、この星に人が入植するのは無理だろうな」
「なるほど。ですが逆に考えれば、あの魔石というものを好きなだけ取れるということではないのでしょうか」
「あ~、まあ確かに、上手くやれば資源採掘用の星になるかもしれないな。さすが九神、考え方がデカいな」
「ふふっ。先生にそう言われると嬉しいですわね」
ドリルな金髪をパサッと手でかき上げながら、お嬢様っぽいポーズを取る九神。意外と余裕があるのも、さすが次期九神家総帥と思わずにはいられない。
さて、それまで青一色だった正面モニターに、緑と茶色が混じってきた。遠くに陸地が見えてきたのだ。




