45章 勇者と魔王 04
きっかり1時間後、作戦は開始された。
50隻の敵艦隊と500匹近い宇宙モンスターだが、艦隊は惑星の近くを動かず、モンスターだけ依然としてこちらに向かってきているようだ。
やはりジャンプ航法などは持っておらず、通常航行でこちらに向かっている。まあ通常航行といっても音速の30倍くらい出てるらしいので、実際はすさまじいスピードなのだが。
『まずは「ソリッドマギキャノン」を3連射しまっす。銀河連邦支援艦隊のリードベルム級との連携を行いたいので、データリンクをしたいと思いまっす。艦長、よろしいでしょうか~』
「データリンクってなんだ?」
「戦艦の間で戦術情報を共有するシステムですよ。どの船がどの船を狙うとか、そういうやり取りをするんだと思いますっ」
答えたのはミリタリーマニアの双党だ。なるほど便利な世の中になっているものである。
「じゃあやってくれ」
俺が許可すると、『ウロボちゃん』は『了解でっす』と言って、一瞬動きを止めた。
『データリンク完了。銀河連邦艦隊リードベルム級戦闘砲撃艦「カリアナッサ」「メリテー」の「ソリッドラムダキャノン」とのリンク完了。最大効果を得られるよう設定』
少しして、モニター向こうのメンタードレーダ議長が語り掛けてくる。
『ミスターアイバ、そちらの「ソリッドマギキャノン」の効果範囲データに誤りがあるのではと「カリアナッサ」の艦長が言っていますがどうでしょうか? こちらの「ソリッドラムダキャノン」と比較して半径で3倍ほどになっているそうですが』
「あ~、それで合ってます」
『承知しました、伝えておきましょう』
議長は何気なく言ったが、多分かなり驚いているだろう。現有の最強艦載兵器の威力がそんなに簡単に上げられたらたまったものではないからな。まあでも銀河連邦の科学力なら、もっと強烈な兵器があってもおかしくはない気がするが。
『敵モンスター群、「ソリッドマギキャノン」射程に入りました~。最大効果が出る距離まで接近して攻撃を開始しまっす』
「おう。多分一発目でモンスターどもは散るからそれも注意な」
『了解でっす。現在の速度から散開ルートを予測』
宇宙モンスターが近づいたからか、三次元モニターにモンスターを表す光点が大量に表示されるようなった。片側に90隻くらいの俺たちの艦隊、反対側に500匹のモンスターだ。その表示だけ見ると絶望的だが、さてどうなるか。
『敵モンスター群、「ソリッドマギキャノン」最大効果範囲に入りました~。艦長、攻撃の許可をお願いしまっす』
「攻撃開始」
『了解でっす。「ソリッドマギキャノン」第一射、発射~』
『統合指揮所』に微かな振動が走り、『ウロボロス』の艦首巨大砲身から大型の弾頭が射出される。隣の『ヴリトラ』からも、そして離れたところにいる銀河連邦の『カリアナッサ』『メリテー』からも同じように弾頭が発射された。
三次元モニターには、モンスターの群れに向かって飛んでいく4発の光弾が表示されている。青奥寺たちも皆、その様子を固唾を呑んで見守っている。と言いたいところだが、明らかに双党とレア、そして清音ちゃんはワクワク顔である。
『「ソリッドマギキャノン」、エネルギー解放地点到達まで後10秒、9、8、7、6、5、4、3、2、1、マギエネルギー解放』
三次元モニターに大きな球が二つ、それより小さな球が二つ現れる。同時に正面モニターにも、遠くにいきなり4つの光球が現れた。基本はどちらも白い光だが、大きい方は縁が赤みを帯びていて、小さい方は緑色である。
『全弾エネルギー解放成功。おおよそ100体のモンスター消滅を確認。ただし、「ソリッドラムダキャノン」によるラムダエネルギーには耐性のある個体がいる模様でっす』
三次元モニターを見ると、敵モンスター群に、ぽっかりと4つの球形の空洞ができている。ただ大きい方、『ソリッドマギキャノン』の空洞に比べ、小さい方、『ソリッドラムダキャノン』の開けた空洞には、ぽつぽつと生き残っているモンスターがいるようだ。
『ソリッドラムダキャノン』は特Ⅱ型までなら間違いなく吹き飛ばせる兵器なので、あの超巨大モンスターの中のいくつかが特Ⅱ型を超えるものであるのは確定である。
『敵モンスター群が散開を開始。「ソリッドマギキャノン」再装填まで1分』
三次元モニター上のモンスターが微妙に広がっていくのが確認できる。と言っても向こうは高速移動しているので、そんなに急に進路を変えられるわけではない。
『「ソリッドマギキャノン」再装填完了。ターゲットデータ修正。「ソリッドマギキャノン」第二射、発射しまっす』
さらに次の4発が飛んでいき、同じようにモンスター群を消滅させる。
『全弾エネルギー解放成功。さらに100体のモンスター消滅を確認。「ソリッドマギキャノン」再装填まで1分』
残りはあと半分ちょい。
『「ソリッドマギキャノン」再装填完了。ターゲットデータ修正。「ソリッドマギキャノン」第三射、発射~』
最後の4発が飛んでいき、また同じようにモンスターの群れに穴を開ける。しかしこれ、相手がモンスターだからいいようなものの、やはり『ソリッドマギキャノン』はとんでもない超兵器である。
『敵モンスター群、残存数209。次に「ソリッドキャノン」の攻撃に移りまっす』
「おう」
ちなみに『ソリッドキャノン』は対ズワウル艦隊戦で全弾撃ち切ったが、すでに再装填済みである。『ウロボロス』だけで400発のミサイルをどう補充したかだが、実は事前に大量に作っておいて俺の『空間魔法』に入れてあったのだ。
俺が宇宙空間に出したミサイルをアンドロイド兵が宇宙遊泳しながら発射管に詰めていく様子は、なんかそれはそれで凄まじいものがあった。双党とレアは興奮しまくっていたが。
『「ソリッドキャノン」、データリンク完了。艦長、発射許可をお願いしまっす』
「撃ってよし」
『了解~。「ソリッドキャノン」、全弾発射しまっす』
いつもの通り『ウロボロス』の上部甲板に開いた400の発射管からミサイルが次々と垂直に飛び上がっていき、弧を描きながら敵モンスターへと向かって行く。
銀河連邦支援艦隊の多くの戦艦からも同様に射出された『ソリッドキャノン』は、全部で3000発を超えている。
「これほど大規模な戦艦の一斉射撃は、銀河連邦の戦史の中でも初めてではないでしょうか」
新良がぼそっと言うが、それはその通りだろう。そもそもこれだけの武器を景気よく使ったらいったいどれだけの金がかかるか。会計担当は全員泡を吹いて倒れるのではないだろうか。
三次元モニターでは、凄まじい数の光点が残りモンスターに向かって飛んでいく。普通に考えれば、これだけで勝負が決まりそうだが……。
『敵モンスターから小型モンスター分離を確認』
そういえば、あの超巨大モンスターにはコバンザメみたいな小型モンスターがへばりついていた。分離したのはきっとそれだろう。
モンスターを現す光点から、小さな光点が無数に分かれ、『ソリッドキャノン』を表す光点へ向かっていく。それらがぶつかると小さな光球が発生し、そして両方が消えていった。
『小型モンスターは迎撃システムの役割を果たしているようでっす。「ソリッドキャノン」、4割が損耗。「ソリッドキャノン」着弾まで5秒、4、3、2、1、着弾開始』
『ソリッドキャノン』の光点が、モンスター一匹につき10発くらい命中する。正面モニターでも、いくつかの強い光がパパッと光っては消えるを繰り返していた。
三次元モニターの、超巨大モンスターを表す表示が次々と消えていく。
全弾の着弾が確認されると、モンスター群は残り60匹ほどになっていた。
『敵モンスター、かなりの耐久力があるようでっす。残存数58。本艦隊はこの後最大戦速で「惑星X-0192」へと向かいまっす』
『ミスターアイバ、こちらの艦隊は敵を引き付けた後、後退しながら戦闘を継続します。ご武運を。そして無事の帰還をお祈りしています』
メンタードレーダ議長が敬礼のポーズを取り、俺も敬礼を返した。
「そちらもご武運を。危なくなったら全力で逃げてください」
メンタードレーダ議長は身体を揺らしたが、これは笑ったようだ。そこで通信が切れた。
「よし、じゃあ『ウロボロス』。勇者艦隊を発進させてくれ」
『了解でっす。勇者艦隊、最大戦速で前進~』
『ウロボロス』を含めた12隻の宇宙戦艦は、遠くに見える青い惑星へと加速を開始した。




