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Transmission  作者: 琉風
第三部「伝達」

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#03 追うべき影

『はぁ…結局、やってることは同じだな』


グレンとノアは、ロキについての聞き込みを地道に行っていた。

ロキを追うと決めたものの、何から手をつけていいのか分からない途方もなさに、結局は「ロキの目撃情報」を聞いて回るしか術がなかったのだ。


『だいたいさ、見てる人なんているの?って思うしね』

『俺が聞いた話では確か、狙われた奴は100%やられちまうから、誰も顔を見たことがないんじゃなかったかな』

『それだったらさ、いったい誰がどうやってこの噂広めてんのよ』


二人でぶつぶつと文句を言いながらも、一軒一軒聞いて回る。

一つ確かなことは…と言っても、あくまでも「伝説」の中では、だが――

ロキという人物は、ノーマルへの差別を原因とする横暴な振る舞いによって、ノーマルを傷つけるサイキックを粛清している存在…として知られている。

もしそれが本当なら、助けられたノーマルがロキの姿を目撃しているかもしれない。

…必然的に、ノーマルが住んでいるT-14地区とT-15地区で聞き込みを行うべきだ、との考えに落ち着いた。


『でもさ、ロキって実在するとして、今も活動してんのかな?』

『さぁね。そもそも伝説化してるってことは、今はもういないんじゃないの?』

『いつ頃から語られている話なんだろうな』

『分かんないよ…いや、待って、昔グレンのお父さんが言ってなかったっけ?』

『何を?』

『自分が子供の頃に、何か悪さをすると「ロキが連れ去りに来るよ」って脅されて怒られたって』

『…なんか、言ってた気もするな』

『言ってたよ。僕はそれで「ロキ」の存在を知ったんだから。グレンのお父さんもさ、今思えば、なんで小さな子にあんな恐ろしい怒り方をしたんだろうって、当時の躾の風潮に嘆いていたじゃない』

『あったなぁ、そんな会話』


グレンの父親と祖父は、どちらも警察の人間だった。

二人の背を見て育ったからこそ、グレンも自然と警察の道に進んだと言っても過言ではない。だからこそ、父親は厳しい家庭環境で育ったのだという。

今も存命の祖父は、基本的にはとても優しい人間なのだが、常識やルールを守らせるという意味ではとても厳しく、それは、孫であるグレンやアレンに対してもそうだった。


『グレンのお父さんはあまり怖くないイメージだけどね』

『じいさんのようになりたくないって思っていたらしいからな』

『でも、別に悪い人じゃないでしょ?おじいさん』

『もちろんだよ。優しくていい祖父だと思う。でもまぁ、孫と子どもでは、接し方も違ったんだろうな。未だに実家に顔を出すと愚痴ってくることもあるくらいだから』


そういえば、最近はあまり両親に顔を見せていなかったな。

今度アレンと一緒に帰るとするか…

グレンがそんなことを思っていると…


『…っていうか、グレンのお父さんの話を考えると、ロキっていったい幾つなわけ?』

『…確かに…』


グレンの父親が子供の頃には、既にロキの話が存在していた。

…ということは、少なくとも五十年近くは経過しているということだ。

しかも、当時にロキが活動中であればまだ分かるが、その時点で既に、存在していたのかどうかも分からないような伝説上の人物になっていたのだとしたら…


『…伝説化する前に何歳だったのかも分からねぇしなぁ…』

『ヘタすると、グレンのおじいちゃんくらいの年齢だったりして』

『それで、あれだけのことをしでかすのか?正真正銘、化け物だろ』

『…難しいなぁ…やっぱりロキの線はやめとく?』

『うーん…』


グレンは一瞬本気で迷ったが、ロキが犯人だという仮説を消したとして、他に目星をつけられる相手もいない。

それに――


『地道に聞き込みを行うことは、ロキ探しだけのためじゃねぇしな』

『…まぁ、そうだよね』


ルーカスが、戻ってこない。

あの日アレンが、「自分が受けた依頼に関する仕事で出かけて来ると言っていた」と。その日を境にルーカスが戻らなくなって、暫くの日数が経っていた。

無鉄砲なところはあるが、ルーカスは約束やルールは守る人間だ。

自分たちの家で暮らし始めた矢先だったこともあって、何も言わずにいなくなるなど考えづらい。


では、いったいどこへ?グレンもノアも気ばかり焦ったが、仕事を放り出すことも出来ず、まだルーカスを本格的に探すことが出来ずにいた。

だが、このままではアレンが一人で動き出してしまいそうで、それも不安だった。


ルーカスが戻らなくなったことに一番落ち込んでいるのはアレンだ。

もしかしたら、自分が強引にルーカスを引き留めて、本当は嫌な思いをさせていたのではないか――

そんな風に考え、もしそうならば謝りたいと、毎日かなり塞ぎ込んでいる。

グレンもノアもそんなアレンの姿は見たくはなかったが、とにかく今は仕事を休めない。


ならば、仕事をしながらルーカスのことも探そうと、こうして地道に聞き込みを行っていた。

…探しているのは「ノーマルを助けて回っている最強のサイキック」、そして、

「金髪で褐色の肌を持つオッド・アイのサイキック」の二人だ。


『…とはいえ、こっち(T-15地区)は失踪者事件の方でA班も聞き込みを続けているからなぁ…』

『僕たちはT-14地区の方へ移動してみる?』

『うーん…』


失踪者事件はその殆どがT-15地区で発生していた。

そのため、引き続きこの事件を担当している特治のA班がT-15地区を捜査しているのは当然だ。

だが、今二人はあくまでも「esへの襲撃事件の犯人」を追う形で聞き込みを行っている。その聞き込みの対象がノーマルであることには違いないのだが、別にT-15地区にこだわる必要性は、ないと言えばない。


『…こっち(T-15地区)はルーカスも含めるともう、何周聞き込んだか分からないくらいに周っているからな…移動するのも一つの手か…』

『…ねぇ、それなら、最後にもう一度だけ、立ち入り禁止区域内を見てからここを出ない?』


ノアの提案にグレンも頷く。

あの場所は最初から色々と怪しかったが、ルーカスが消えたことでより一層、早く調べ直したいと思っていた場所だった。


『まぁ、あまり時間は割けないけどな』


異捜に監視されている可能性もまだ捨てきれない以上、たとえロキを追うためにesの外へ出ることが許されたとあっても、あまり捜査に関係のなさそうな場所で時間を割く訳にはいかない。


『…ルーカスの痕跡がないかどうかだけ、調べてから移動しよう』


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