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Transmission  作者: 琉風
第二部「継承」

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#21 贖罪

『…』


怒りと悲しみに任せてesまでテレポートし、壊滅的なダメージを負わせた後、またテレポートで家まで戻って来るまでにわずか数時間――


レナードが張っていたシールドの効果の残りもあって、シヴァの家の周辺はまだ隣り近所の村人たちに異変に気付かれることもなく静かな状態だった。


シヴァは、レナードが隠した茂みの中で、泣き疲れて眠ってしまっていたアーサーを家の中へ連れて行き、ベッドに寝かせると、クレアの遺体を、家の裏山にある小高い丘までPSIを使って運ぶ。

この村はそもそも山道を登った標高の高い位置に存在しているが、さらにそれよりも上――家の裏側にある川を渡り、そこからかなり険しい坂道を上った山の中腹に、小高い丘のような開けた場所があった。

それほど整備された道があるわけでもなく、また、傾斜がかなり急だったため、あまり人が上ってくることもない場所だったが、その丘からは夕陽に染まる村全体の景色が美しく見渡せる絶好のポイントで、レナードのお気に入りの場所だった。


『…』


ここならば、レナードも安心して眠りについてくれるだろうか。

また、クレアと並んで眠ることで、少しでもその魂は報われるのであろうか。

…と言っても、レナードは、シヴァがそのすべてを吸い取ることで、姿を奪ってしまった。クレアの亡骸が眠る隣りには、形見となるネックレスだけが埋葬されたのだ。


『…俺が殺した。お母さんも、レナードも』


自分は、周りにいる人たちを不幸にする。

いったい、自分は何のために生まれたのか。

自分が存在していることで苦しむ人間の方が多いなら、生きている意味も価値もない。


『…』


ほんの数時間前までは幸せだった。

優しい母の笑顔と、可愛い弟の笑い声と、安心できる、父親のような存在のレナードの温かいまなざし。

――その幸せを突然切り裂いたのはesの人間だが、それは、自分がこの場にいたことが原因で起きてしまった出来事だ。


『…』


ごめん、お母さん。

ごめん、レナード。


『…ッ』


ごめんなさい。

ごめんなさい。


『…』


シヴァは、二人を自分の手でしっかり弔った後、身も心も疲れ果てて、その場で泣きながら眠ってしまった。








朝日を浴びて、眩しさで目が覚めたシヴァは、一晩、家に一人で置いてきたアーサーのことが気になり、急いで家へと戻った。ベッドを覗き込み様子を窺うと、アーサーはよほど疲れているのか、まだ眠っている。


『…』


このまま自分がこの場に居続けたら、今度はアーサーの身が危ない。

いや、そもそも、クレアとレナードを失い、子ども二人になってしまった時点で、この家に住み続けることは出来ないだろう。シヴァはアーサーをどうするべきかを考えていた。


村の人たちは皆とても情に厚く良い人たちばかりだが、だからこそ、根掘り葉掘りとお節介な一面もある。まして、親がどちらも消えたとなれば大騒ぎになるだろう。

それに、当分は問題ないとは思っているが、いずれまたesがこの場所までやってくる可能性はゼロではない。その時こそ、アーサーや村人にも危害が及ぶかも知れないのだ。


『…』


この村を出ていくしかない。…でも、どこに行けばいい?

シヴァはしばらく悩んでいたが、ふと、レナードに兄がいることを思い出す。

以前、レナードが話していた。自分には二つ違いの兄がいると。結婚はしているが子どもに恵まれず、自分に息子が出来たと知ってとても羨ましがられたと笑っていた。


その時はまだアーサーは生まれていなかったので、レナードはシヴァのことを実の兄に「自分の息子」だと話していたことになる。それを思い出し、シヴァは涙があふれそうになるのを、奥歯をぐっと噛み締めて堪えた。


――なぜ、疑ってしまったのか。


なぜ、レナードを父親と認めてあげなかったのだろうか。

名前で呼ぶことを許してくれてはいたが、もし「お父さん」と呼んであげていたら、どんなに嬉しそうに笑ってくれただろう。

実の父親を大切に思う気持ちも失いたくはない。だが、その思いとは別のところで、レナードへの愛情と信頼に応える形で「父」だと認めてあげれば良かったのではないか。レナードを父と呼んだからと言って、実の父親を忘れてしまうわけではなかったはずなのに。


『…』


どれだけ後悔したってもう遅い。

シヴァは、溢れ出る涙を拭いながら、レナードの仕事部屋で、レナードの兄の連絡先がないかを必死に探した。


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