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Transmission  作者: 琉風
第三部「伝達」

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#23 応えた理由

『…あ…』

『…マジか…』

『…』


怯え切っているアレンと、苦しそうに荒い呼吸を繰り返すルーカスが見上げる先――

ロキが静かに佇んでいる。


『…ありがとう』

『…』

『助けてくれるなんて、俺…』

『…そいつは、放っておけば死ぬが、どうする』

『え?』


ロキがルーカスを見つめながら、そうつぶやいた。

アレンは慌てて、「お願いです!ルーカスを助けて!」と必死に叫んだ。


『…まさかお前に借りを作るとはな…』

『まだ助けるとは言っていない』

『マジか…俺、まだ死にたくねぇんだけど…』


言いながらも、力が入らず完全に倒れこんでしまったルーカスを見て、アレンが涙目になって震えた。


『お願いです!ルーカスを助けてください!』

『…お前、こんなヤツにそんなに頭下げんなって…』

『ルーカスは黙ってて!このままじゃ死んじゃうんだよッ!?』


言いながら、自分の言葉にショックを受けたらしいアレンが、涙を我慢できずにこぼしながら、シヴァに何度も助けを乞う。


『お願いです!お願い!…ルーカスを助けてください!』

『…』


正直、ルーカスを助けても助けなくても、シヴァには関係のないことで、どうでもいい話だった。

アレンがなぜここまでルーカスの命を乞うのか、その関係性も感情も、シヴァには全く理解ができない。

ただ、このままルーカスを見捨てれば、アレンは深く悲しむのだろう。

命を救わなかった自分に対して、憎しみの感情でも向けるのだろうか。


『…』


それでもいい。

誰にどう思われても、自分の人生には何の関係もない。

…その、はずなのだが――


『…』


シヴァは不意に、苦しそうにうずくまっているルーカスの元へと進むと、その場に膝をつき、ルーカスの背中に手を当てる。


『…調子に乗るからこういう目に遭う』

『うるせぇな…神経系の毒を持つサイキックなんて…初めてだったんだよ』


シヴァの手のひらがパァッと白く光り、その光がルーカスの体全体を包んでいく。

無表情に淡々としているシヴァを見て、アレンは「本当に治るのか」と一瞬不安に感じたものの、ルーカスの顔色がみるみる元に戻っていき、抉れていた左腕の傷も消えて流血が治まっていくのを見て、安堵の表情を浮かべた。


『ルーカス!良かった…本当に良かった』

『大袈裟だなぁ、これくらいなんてことないって』

『何言ってるんだよッ!?ロキが来てくれなかったら今頃どうなっていたか…!』

『いや、まぁ…そうなんだけど…』


言いながらルーカスはチラと、隣に立つサイキックを見上げる。

…この男がまるで正義の味方のように現れ自分を助けてくれた…いったい、どういう風の吹き回しだ?


『お前、今までどこにいたんだ?』

『…言う必要があるのか』

『いや別に…』

『…』

『その…ありがとな。正直ちょっとヤバかったから、助かったよ』

『…』


素直にお礼を伝えてきたルーカスを横目、シヴァはアレンの様子が気になっていた。

…やはり、自分が感じていた感覚は、あの店の空間にあるわけではない。

アレン自身が持っているものなのだと、今この瞬間にシヴァは確信していた。


『…お前は、気づかないのか』

『へ?何を?』


ルーカスに問いかけてみても、ルーカスにはシヴァの質問の意図が伝わっていない。


『…ロキ…さん、本当にありがとうございました』

『ロキで構わない』

『あ、はい。あの、ありがとう』

『…お礼を言っている場合ではないと思うが?』

『え?』

『おい、それどういう意味だよ』

『…どうやら、「向こう」も苦戦しているようだ』

『…』


向こう、とは。

ルーカスとアレンは同時に、グレンたちの身を案じた。


『おい、グレンたちは今、どこで何をしている!?』

『…警察ではないようだが…esの連中に囲まれているようだな』

『マジかよッ!捕まっちまったってことか?』

『それは分からない。が、esもようやく本性を現したようだ』

『…兄さん、ノア…』


真っ青になるアレンを見たシヴァは一瞬目を逸らしたが、直ぐにでもルーカスに声を掛けた。


『お前が望むなら、二人がいる場所まで飛ぶこともできる』

『連れていけッ!!今すぐにッ!!』

『…また死にそうな目に遭うかもしれないが、いいのか』

『死なねぇしッ!それに、助けに行かないという選択肢はないッ!』

『…もの好きな奴だ』


小さくため息をついたシヴァは、アレンを見つめた。


『…悪いが、お前は連れていけない』

『そんなッ…』

『アレン、当たり前だ。来るのは危険すぎる』

『ルーカス、でも俺…』

『あの店に強力なシールドを重ねておく。何があっても店から出るな』

『え?』

『!』


アレンが言葉を返すより先に、シヴァはアレンを花屋の店内へと移動させた。


『…おい、大丈夫なんだろうな?』

『自分の店にいる。店から出なければ安全だ』

『…』

『気は進まないが、仕方がない』


シヴァが、今度は自分とルーカスの二人を目的の場までテレポートで移動させる。

グレンとノアが追い詰められている、その場所まで――


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