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Transmission  作者: 琉風
第一部「観測」

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#09 下へ続く道

ルーカスがやれやれと肩を回している横で、ノアがうつむき加減に小さく息を吐いた。


『…この周波数、頭の中の配線を雑にかき回されてるみたいだ。最悪だ』


グレンがちらりとノアを見る。


『ルーカスアレルギーとでも言っておくか?』

『笑えない』

『文句は言いっこなしだぜ?生まれ持った仕様なんだからな』


思っていたよりもアッサリとオッド・アイの青年――ルーカスはグレン達に協力の意を示した。血気盛んな戦闘屋に見えたが、冷静に話も出来るなら有難い。


グレンは「今出せる分だけで良いので情報を共有しよう」と早速ルーカスに持ち掛ける。


『…とは言っても、情報らしい情報とは言えないんだけどな。今起きている「これ」は、単なる失踪ではなく、大掛かりな組織による連れ去り事件の可能性がある』

『大掛かりな組織って?』

『…特定は出来ていない』

『まさか、情報ってそれだけとは言わねぇよな?』

『痕跡が一切無いんだよ』

『え?』

『失踪した人間の痕跡が不自然なほどに無い。誰かが意図的に痕跡を消している』

『アンタらが辿れないだけじゃねぇの?』

『誰にものを言っている』


ケラケラ笑うルーカスをひと睨みしたグレンが、「お前、使えるPSIは幾つだ?」と聞いた。その問いにルーカスが「三つだけど?」と得意気に答える。


『三つか…』


なかなか見ないエリートだ。

三つなら、自分たちの部署に入る資格にもなるPSIの数である。

グレンは再度ルーカスの内側に意識を集中させる。

その時、グレンの漆黒の瞳が深紅に染まった――

その姿を見てルーカスが慌てる。


『お前ッ!今PSIを使っただろッ!俺に何をしたッ!!』

『…凄いな。フォノンキネシス(音操)、エレクトロキネシス(電操)、クレヤボヤンス(透視)…俺の周りにはいないPSIの持ち主だ』

『…へぇ、単なる筋肉バカだと思ったけど、テレパス(読心)まで使えるのか。…にしても、勝手に人ん中探るたぁ、不躾過ぎねぇか?』

『不躾はお互い様だ。あと、ついでに言うと俺はプレコグニション(予知)とヒーリングも使える。まぁ、ヒーリングは身体専門だからお前のその口の悪さは治せないけどな』

『五つも使えるのか。そんな奴初めて見たな』


ルーカスは素直に驚き、食い入るようにグレンの顔を見つめた。

どうやら喜怒哀楽が激しいだけで、根は素直で純粋なタイプなのかも知れない。


『で?そっちのお前は?』


ルーカスがノアを見る。

やはり、相性の悪さを感じているのはお互い様のようだ。

ルーカスとノア両方の複雑そうな表情を見て、グレンが内心でため息を吐く。


『シャドウキネシス(影操)とロジックマスター(論理支配)、そして、ヒーリング』

『お前もヒーラーなの?』

『僕のヒーリングは生体治癒ではない。機械と情報を対象とした再構築能力だ』

『再構築?』

『身体や心を治す力ではなく、失われた事実や情報を本来あるべき形へと戻す、「再構築」を目的としたメモリー・ヒーリングってこと』

『良く分かんねぇけど、まぁ、三つも使えるのは優秀だな』

『…』


お前に言われるまでも無い――

ノアの表情を代弁したらこんな感じだろうか。

能天気に笑っているルーカスを見て心底嫌そうな顔をしたノアが、「ま、誰一人PSIが被っていないのは良いことだよ」とうんざりとした顔で呟いた。


『いいか?あまり自分たちで自分のPSIをひけらかす様な真似はしたくないが、そういうことだ。足取りを追えないわけじゃない。だからこそ、あまりの不自然さに困惑している状況なんだよ』

『俺なら追えるかもな』

『そう思ったからあれもこれも見逃して協力を持ちかけたんだ』

『…』


索敵に加え透視まで使えるなら、「痕跡を追う」という点に関してのみ言えば自分達よりもよほど精度が上だろう。

粗暴さは少々厄介だが、根は単純そうなので上手く操縦出来れば力になるはずだ。

そんなグレンの期待に応えるかのように、ルーカスが笑う。


『この辺りで痕跡が消えているのは確かだ。だが、この場所は面白そうだぜ?』


その言葉にグレンとノアは顔を見合わせ、ノアが感じた違和感が間違いではなかったようだと確信する。


『一見何もない更地だけど、下からどっか別の場所へ出るための長い道筋を感じる』

『下?地下ってことか?ハッキリ見えるのか?』

『いや、何か変な靄がかかっているような感じがするから、誰かの力が意図的に関わってるかも知んねぇけど、薄っすらだけど確かに感じる』

『失踪者の気配が消えた場所で、どこか別の場所へ続く道の痕跡…か』

『調べる価値は充分にありそうだね』


ノアもやっと仕事モードに切り替えルーカスのことを割り切ったのか、彼の言葉に積極的になって来た。


『それなら直ぐにでもこの辺りを捜査…』


グレンが言いかけた時、警察本部から連絡が入る。

とっさにルーカスを通信先に映りこまない位置へと押し遣り、対応に出た。


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