5話 選抜トーナメント
数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。
拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。
5話 選抜トーナメント
学園中央闘技場。
石造りの観客席は、朝から満席だった。
「今年は当たり年だな」「上級候補が揃いすぎてる」「王子殿下も来るらしいぞ」
熱気が、渦巻いている。
その中心——闘技場の入口で、私は静かに立っていた。
「……すごい人」
思わず、小さく呟く。
「当たり前だろ」
隣から声がした。
振り向くと、見覚えのある顔。
先日決闘した、あの男子生徒だった。
「この選抜戦は、上位クラスへの登竜門だ」
少しだけ気まずそうにしながらも、続ける。
「……まあ、お前には関係ないかもしれないけどな」
(……変わったな)
あの時とは違う。
敵意はあるが、それ以上に“理解してしまった側”の顔だ。
「教えてくれてありがとうございます」
軽く頭を下げると、彼は一瞬言葉に詰まった。
「……お、おう」
それだけ言って、視線を逸らす。
(ちょっと面白い)
そんなことを思っていると——
「出場者は、所定の位置へ!」
声が響く。
いよいよ、始まる。
第一回戦。
「開始!」
合図と同時に、相手が詠唱に入る。
「《ストーンバレット》!」
無数の石弾が、一直線に飛来する。
(速い。でも——)
見える。
全部。
「——遅い」
一歩踏み込む。
そのまま、手を軽く振るだけで。
石弾は軌道を逸れ、地面に突き刺さった。
「なっ——!?」
驚愕する相手の懐に入る。
「終わりです」
指先を、軽く向ける。
「《微光》」
ぱちん、と弾けるような小さな光。
それだけで——
「がっ……!?」
相手はその場に崩れ落ちた。
「勝者、アリス!」
ざわめきが広がる。
「今の……何した?」「攻撃、見えなかったぞ……?」
(これくらいなら、まだ)
肩慣らしにもならない。
第二回戦、第三回戦。
結果は同じだった。
「……また一撃」「嘘だろ、全部ワンターンじゃねえか」「しかも魔力の消費が見えない……」
相手が強くなるほど、観客のざわめきも大きくなる。
だが——
試合時間は、むしろ短くなっていった。
(やっぱり)
実力差がある相手の方が、迷いがない分、処理しやすい。
「……化け物」
誰かの呟きが、はっきりと聞こえた。
そして——準決勝。
「ここからが本番だな」
対戦相手の少女が、静かに構える。
周囲の空気が、明らかに違う。
「私は上級クラス筆頭候補」
鋭い視線が突き刺さる。
「簡単には終わらせない」
(……強い)
ここまでで、初めて。
“ちゃんとした相手”だと感じた。
「楽しみです」
自然と、言葉が出る。
開始の合図。
次の瞬間——
「《雷迅》!」
消えた。
そう錯覚するほどの速度で、間合いを詰められる。
(速い……!)
初めて、回避に意識を割く。
直後、雷撃が地面を抉った。
「避けた……!?」
相手の目が見開かれる。
(でも)
それだけだ。
「——いい動きですね」
その背後に、立つ。
「なっ——いつの間に!?」
「でも」
指先に、魔力を集める。
今度は、ほんの少しだけ本気。
「届いていません」
「っ——!」
振り向こうとした瞬間。
「《収束》」
光が、収束する。
爆ぜる寸前で——
ぴたりと止めた。
相手の目の前、数センチ。
「……参りました」
静かな降参。
観客席が、爆発する。
「今の試合レベル高すぎだろ!」「あれ止めたぞ!?制御おかしいって!」
私は、そっと魔力を解く。
(……これで)
あと一つ。
そして——決勝。
闘技場の空気が、張り詰める。
観客席の最上段。
そこに——
王子の姿があった。
(見てる)
視線が、交わる。
「——期待している」
あの時の言葉が、蘇る。
対戦相手が、ゆっくりと前に出た。
「まさか、お前と当たるとはな」
教師だった。
それも——実戦魔法の担当。
「手加減はしない」
(……なるほど)
最後に来たのは、“壁”。
でも。
「大丈夫です」
私は、静かに構える。
「必要ありません」
空気が、震える。
観客すら息を呑む。
——次の瞬間。
本当の“無双”が、始まる。
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