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遠距離戦

 遠距離戦、ダンジョンのように区切られた空間でもなく、まして地上という平面でもない、地上にいながら空中の相手をする『地対空』となれば射撃が得意なシシオンの領分だろうな。


 意気揚々と金龍の方に数歩向かっていくシシオンを見て、キャビンは思案する。

 金龍はようやくキャビンの肉眼でも空に点があるのが何見える程度だ。

 普通の、シシオンの通常装備で金龍相手は難しいはず。射程が足りないし、当たっても威力が足りない。


「取りあえずやってみっか」

 シシオンは片手を伸ばし、銃口を金龍の方へ狙いを定める。金龍は気づいているのかどうか進路を変えず、一直線に山頂のシルバードラゴンたちの所へ向かう。


 こんな距離じゃ当たらないはずと思いながら、金龍がいると思う方を見ていると、一瞬、さっきの点が光った気がした。

「顔の……右頬りに当たったみたいだ。全く効いてないな。だが、この距離でも当てるか」

 バンニングが双眼鏡片手にキャビンに教える。


「やっばり硬ぇ。擦り傷くらいはついたか。んじゃ次」

 キャビンは、言われて初めて、今の火花が銃弾が当たったせいだとわかった。


 シシオンは銃を体の中心に持ってきて両手で握ると、魔力を込めて弾丸を放った。

「くらえっ!」

 弾丸は一直線に金龍に向かっていく。光の反射で一、二度 気にせず真っ直ぐ進んでいるのが見えた。


 金龍の下顎に当たり、大きな破裂がした。

 金龍は首を少し上にもたげて、ちらりとシシオンを睨みつけるも、進路を変える様子はなかった。


「おいおい、もうちょいリアクションとってくれよ。そこらの大型魔物なら消し飛ぶ弾だぜ?」

 そう言っても、まだ余裕な様子でシシオンは左で弾丸をギュッと握ると小さな魔法陣が光って消えた。


「とっておきだ!全員耳閉じとけ」

 そしてシシオンは大声で叫ぶと、金龍のかなり前方に狙いを定めて弾丸を放つ。

 弾丸は少しゆっくり、ひゅ~〜と音を立てて登っていく。弾丸は流れが見えるかのように線を引いて高く高く進んでいった。


 高さが金龍に届いた頃、ひゅ~〜が止まり、一瞬静になる。


 キャビンが何だろ?と思った瞬間ドン! と、心臓が大きくなるような、地面が揺れるような、息が止まる音がした。


 そのまま音の中心を見ていると光が瞬き始める。初めは火のような赤い色。続いてオレンジや黄色の明るい色が周りに広がる。

 無数明かりが広がって、空中に玉の形に火花が散っていた。


「花火?」

 キャビンが次はどうなるのかなと見ていると、金龍を中心にゴロゴロと音が鳴る。


 キャビンにも金龍の小さな影がしっかり見え始めていた。金龍はさすがにそこには突っ込まず横に避けて通ろうとしていた。


「避けられねぇよ!」

 シシオンが銃をホルスターにしまうと、同時に、視界が完全に明かりに包まれた。


 眩しい!とキャビンが反射的に目を閉じると、追って雷鳴が響く。


 鋭い音の中に、小さな悲鳴が短く聴こえて、また、雷鳴が段々と弱くなるまで続いた。


 やがて、空の音がすべて止んだ。

「おし!落としたぜ。こんだけやっときゃもう来ないだろ。俺も疲れたから戻ろうぜ〜」

 とシシオンは先にトラックの方へ降りていった。


 白銀の王は真っ直ぐこっちを見ていたが、唸るように「アリガトウ」というと、また雛の方を見つめた。


「っ!! しゃべった!!ドラゴンしゃべった!!!」

 興奮してバンニングの裾を掴んで引っ張る。


「これだけの魔物ならちょっとくらい話せます。さて、餌もあげましたし我々も戻りましょう」

 バンニングが困りながら促すので、キャビンは最後に、バイバイと手を振って、キョトンとしている雛の無垢な表情に、やっぱ連れて帰りたいと口から出ないように堪えるのだった。


 下山しがてら、キャビンはシシオンに尋ねた。

「金龍は倒したの?」

「いや、電気で痺れただけだ。体を撃ち抜いたわけじゃないし、最悪後遺症は残るだろうが、魔物にしちゃ運がいいだろ。普通は倒される」


「戻れる頃には雛も少しは自衛できるだろうからシルバードラゴンたちには野生で頑張ってもらうしかないな。俺が時々様子を見には来るから安心してくれ」

 サンポはドンと胸を張ると続けてシシオンの方に向いた。

「それにしても、優れたガンナーがいて助かった。射程強化に魔法弾。どちらも見事だった。魔法弾は君が作ったのか?」


「ヘヘッ。褒められるのは嬉しいが、種まで知られているのは驚いたぜ、魔法弾は相方製だ」

 シシオンは得意げに答える。 


「彼女は魔法使いで魔具も作れるのか。相当に鍛えたのだな」

「スゲェだろ!」

「スゲェぞ。魔法弾は魔法に加えて、その道具の特性も学ばなければならん。短時間で習得できるものではない。銃を扱うものとずっと一緒にいる気があったからこそ得た技術だろう……何せ、自分で使うものではないからな」

「……わかってる」

 サンポの褒め言葉にシシオンが不意に真顔になる。 


 キャビンは色々聞きたかったが、黙々と歩いた。


 トラックに戻ると、脇でエイテルとクインテがお茶の準備をしていた。


「クインテ、もう休んでなくて平気か?」

 シシオンが心配そうに尋ねると、クインテは弱々しく微笑んだ。

「大丈夫ザマス。それにあなたこそ、魔法弾『雷』の反動はないザマスか?」

「全然平気だ、指先にちょいとピリッと来たくらいだ」

 シシオンが笑顔で言うがクインテは真剣な顔つきで尋ねる。

「それは、電気的なもの?反動によるもの?」

「電気だと思う。反動なら慣れてるからわかる」

「一旦魔法弾全部回収して調整するザマス、リコールザマス」

「大げさだぜ?ちょっと気になったくらいだ」

「駄目ザマス、本来全ての電気は発射方向の空中へ行くザマス。想定の挙動をしてないってことは、いつ大きな事故に繋がるか……」

「わかった。わかった。任せるから。落ち着いたら頼むぜ」

 シシオンが降参したので、クインテは満足する。

「任せるザマス」


「みんなー、寒かったやろ。とりあえず休憩せぇへん?美味しいお茶沸かしたし、美味いクッキーも開けたで」


「そうしましょ、この綺麗な景色の中でお茶するのは素晴らしい思い出になるわ!」

 キャビンは意気揚々と配膳を終わらせると、クッキー缶からブールドネージュを摘み、口に放り込んだまま、(行儀悪いかもと思いながら)お茶を飲んで、溶けて染みるバターの味を楽しんだのだった。

キャビン:雛可愛かった〜。一個質問いい?何で「シルバードラゴン」と「金龍」なの?銀龍とかゴールドドラゴンでいいじゃない?


サンポ:「シルバードラゴン」てのは種族名で冒険者共通の呼び方だ。「白銀の王」つうとこいつ一匹だし、子供「シルバードラゴン」呼びになるな。「金龍」てのは金龍山つう南の方の山にいるから金龍だ。 

今回来たのは、勢い余った若いオスがちょっかいかけに来たところだな。自分が次代のボスだっつう箔付けをしたかったんじゃねぇか?

そんで本来の金龍山のボスである「ゴールドドラゴン」は「龍主」と言われている。胴体はデカい。氷嵐の範囲でも覆えないじゃないか?ってくらいデカい。それに比べりゃ今回の金龍は若造もいいとこだ。卵さえなきゃ白銀の王の相手にはならねぇよ。

キャビン:絶対見たい!大きいドラゴン!何食べるのかしら?

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