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あこがれのゆうしゃさま  作者: workret


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第四百四話 演者勇者と導かれし仲間達5

「ローズ君の事は、私達の気遣いも不足だった」

 ライト、レナを引き連れて改めてヨゼルド、ヴァネッサと面会。開口一番に出てきたのはヨゼルドの後悔。

「そんな物の為に彼女に来て貰ったわけではなかった。責任は取らねばならない」

「国王様……」

 いつもの明るい雰囲気は微塵も感じられない。本当に心を痛めているのがわかった。彼が本当に優しい人間であると再認識すると同時に、その姿にライト達も心を改めて痛める。

「ローズのケアは、俺達も責任を持ってやります。最後まで、必ず」

「ありがとう」

「私からも。ありがとう、ライト君」

 ヴァネッサにもお礼を言われ、自分の言葉の重みを再認識する。――必ず守るからな、ローズ。これ以上、傷付けさせない。

「ところで、何か報告というか、大事な話があるとの事だったね?」

「はい」

 まずライトは、先刻聞いたレナの考え――今が最初で最後のチャンスではないか、という話を説明。

「それに関してはこちらも考えていたわ。私、リンレイちゃんを中心に、いつでも軍を動かせる様に準備をしてる」

「でも、迂闊な行動は悪手、ですよね?」

「ええ。何とか糸口を見つけたい所なんだけど……」

 ふーっ、とヴァネッサは溜め息。実際悩み所なのだろう。

「俺、だから考えたんです。――シンプルに、ハインハウルスの方が、圧倒的に正しいという事が証明出来れば向こうを黙らせる事が出来る。反抗してくれば実力行使に出る事が出来る」

「理論上はそうだな。だが、実際の現状はそれが難しいのはわかっているだろう?」

「それもわかってます。国王様、王妃様の存在はハインハウルスの象徴で、圧倒的ですが、今タカクシン教は注目の的、勢いがある。その勢いにどうしても負けてしまっている部分があると思うんです。だから、それ以上の勢いを作り出せば、風向きも変わってくる」

「……具体案があるのかね?」

「はい」

 そこでライトは一度深呼吸。覚悟を決める。

「俺にもう一度、勇者を――演者勇者を、やらせて貰えませんか」

「!」

 そのライトの言葉にヨゼルド、ヴァネッサは驚き、レナは「ああ、そうきたか」という表情を見せた。

「俺は演者でしたが一応先代の勇者、という事になってます。だから勇者として、向こうの大広域魔方陣以上の奇跡を起こす。その事実を元手に、ハインハウルスとタカクシン、どちらが本当に正しいのか、民衆の人達を味方につければ、今混乱している人達も目を覚ましてくれるんじゃないでしょうか」

「…………」

 ヨゼルドはただ真っ直ぐに、ライトを見ていた。ライトも目を反らす事無く話を続ける。

「君の言いたい事はわかった。だが君の案は君が、私達が考えている以上に君にとって重しとなる。君が最初に演者勇者となったのは本物の勇者が見つかるまで。だが今回もしももう一度演者勇者になるのなら、君はもう二度とその肩書を無くせない。それはわかっているかね?」

「はい。――覚悟の、上です。全部背負います」

 ライトの目に実際に迷いは無かった。どちらかと言えばヨゼルドの方に迷いの目が一瞬浮かんでしまう程。

「それに、背負うのは俺ですが、背負って生きる俺を支えてくれる人達がいます」

 チラリ、とレナを見る。その目が合う。

「ではそのライト君を支えるレナ君、君は今の話を聞いて、率直にどう思うかね?」

「実際大変だと思いますよ。国王様が仰る通り、この戦いが終わっても大小毎日。でもま、私はどんな内容でも、この人が間違えた道を進まないなら、支えますし守りますよ。そういう立場だし、そういう約束だし、婚約してくれるって言うし」

「そうなの!?」「そうなのかね?」「あら、そうだったの?」

 最後の一言に驚く三人。というか一番驚いているのが、

「俺そんな約束したっけ!?」

「じゃあ今しようよ。私は嫌?」

「いや別にレナがどうとかそういう話じゃなくてこういうのはここでする話でもないしもっと何て言うかそのだな!」

 ライトなのは御愛嬌。――うーんもう一押しかな、と考えるレナ。

「で、話を戻しますと、ライト君本人が言ってる様に、私以外にも彼を支える人一杯いますし。――お言葉かもしれませんが、国王様と王妃様もそれぞれそのお一人、ですもんね?」

 そのレナの言葉に夫妻は顔を見合わせる。

「アナタ。これは彼だけの試練じゃない。私達の試練でもあるのかも」

「そうかもしれない……な。――少し待っていてくれ」

 そう言うとヨゼルドは一旦席を外す。

「あーあ、でも残念だわ。ヨゼルドがいなかったら私もライト君に貰ってもらえたのかしら?」

「その発言は色々問題になりますから許して下さい!」

 そんな会話をしていると、直ぐにヨゼルドが戻ってくる。その手には一通の手紙。

「国王様、その手紙は?」

「ガルゼフが亡くなる前夜、私に託してくれた最後の予言だ」

「!」

 ガルゼフ。ハインハウルスが誇る伝説の魔導士であり占い師であり、ニロフの主。ニロフを救ったその日、亡くなっている。ライトの演者勇者の始まりも、そもそもがガルゼフの予言から始まってはいる。

「手紙には具体的にはこう記されていた。そう遠くない未来に、ハインハウルス王国を大きく脅かす新規の団体が現れる。ハインハウルスを一時的に越える先導力で王国は追い込まれるが、それを打破する為には力無くとも心強き青年を、新たに国を導くシンボルにすべきだと」

「ガルゼフの予言の的中率が高いのは私達も重々承知してたわ。でも、そんな大役をライト君に押し付けるわけにはいかない。これは私達が解決しないといけない事案。だから、ライト君に伝える事はしないって決めてたの。でも」

「俺が……自ら名乗り出てしまった」

 ヨゼルドとヴァネッサが、ライトの前にやって来る。

「ライト君。私達と一緒に、戦ってくれるかね?」

「貴方の事は、私達が必ず守るから。一緒に、この国を導いてくれるかしら」

 ヨゼルドとヴァネッサの目を見る。最初から覚悟は決まっていたが、改めてライトの覚悟が強固な物になる。

「はい。絶対に、この国を守りましょう。タカクシン教の自由にはさせない」

「ありがとう」

 こうして、勇導師ライトは、先代勇者として、再び勇者の座に返り咲く事になったのだった。



「というわけで、これから忙しくなるとは思うけど、皆、改めて宜しくお願いします」

 決定後、ライト騎士団団室にて。ライトはヨゼルド・ヴァネッサとの会談の内容を団員に報告。――残念ながらローズは自室で療養中の為不在ではあるが、

「フフフ、ついにライト殿の肩書が演者勇者ではなく勇者、になるわけですな」

「いや、結局演者勇者な事に違いはなくて」

「団長、そこの違いは私達にとって最早問題ではないです。私達は世界を導く貴方の為に、戦います」

 それ以外の団員達は、その決定事項を素直に後押しする姿勢だった。――改めてライトとしても仲間の存在の大きさを感じる。

「でもライトくん、具体的にはどうするの? 世界を導くって……ライトくんの似顔絵を大広域魔方陣で描くの? 出来ない事もないけど」

「サラ、子供の張り合いじゃないんだから……」

 というかサラフォンやろうと思えば出来るのか流石だな、と思いつつも、

「具体案はまだこれから。悩む時間は多くはないけど、その辺りは国王様と王妃様が上手くやってくれるって」

 大胆かつ慎重に。迂闊な行動は逆効果。その辺りはライトが単独で考えられる事ではないので、まずはヨゼルド達に託す形に。

「でもライトならどんな任務でも大丈夫ですわ。今までだってやってこれたんですもの。私が保証しますし、王女としてちゃんと支えますわ」

「ありがとう」

 古参メンバーのエカテリスの後押し。思えば出会った当初認めて貰えなかったのが懐かしい。……と、

「ご主人様。差し当たっては王女様との婚約発表というのはいかがでしょうか」

「ぶふーっ!」

 クレーネルの率直な提案に、真っ先にエカテリスが口に含んだ紅茶を吹く。

「ハインハウルス内での現状のこの暗い空気を吹き飛ばす明るいニュースになります。選ばれし勇者様とその勇者様に憧れる王女様の正式な婚約発表。奇跡の一環と考えても構わないでしょう。二人で更に国を盛り上げていく事を公約、さり気なくタカクシン教との決別を宣言して――」

「待て待て待ってくれクレーネル、客観的に見れば良い案なのかもしれないけど、ほら、婚約となるとエカテリス本人の気持ちとかあるだろ、そういうのが」

「王女様は勇者様に憧れていらっしゃるのでしょう? そしてご主人様にも一定以上の好感を持たれているご様子。更に言えば」

 チラリ、とクレーネルがエカテリスを見ると、エカテリスは顔を真っ赤にしながら、

「わ、私はその、勇者様とかじゃなくて、そのライトの事は、えーっと」

 と、小声でごにょごにょと呟いていた。――何だろう。可愛いけど今その反応は非常に困る。それじゃまるで大丈夫みたいじゃないか……

「とりあえず今心に隙が出来ているのでそこを突けば問題ないかと」

「サラッと凄い事言うね!?」

 ある意味心の隙間を突かれた経験があるからだろうか。クレーネルは何処までも冷静だった。

「まーでも、結構大事な話かもよ。王女様を差し置いて私とハルが先に婚約しちゃうのもあれだもんねえ。本妻はやっぱり王女様じゃないと」

 と、賛成派(?)のレナからそんな意見まで飛んでくる。

「ちょっと待ちなさいよレナさん、何さり気なくマスターと婚約しましたみたいな言い回ししてんの!? しかもハルさんを巻き込んで! ハルさんに怒られても知らないわよ!?」

 一方で勿論そんなレナの発言を許すわけがなく詰め寄るネレイザ。そして経験上自分一人が騒いでも意味がない、ここはハルも一緒に怒って貰おうとハルを促し、チラリとハルを見ると、

「…………」

「え?」

 サッ、と無言でハルはネレイザからの視線をかわした。つまりそれはレナの意見に否定をしないという事であり、つまりそれは婚約に関して同意という事であり、

「マスタァァァァ! 事務官の私を通さないで婚約とか認めないし許可しないからね!? 今後こういう話は逐一私に報告して!」

「ネレイザちゃん姑みたいになってるけど」

「違うわよ! 私だって婚約し……だあああああもう!」

 色々な物が爆発するネレイザであった。どんどんどん、と吐き出せない想いを地団駄で誤魔化す。

「ライト様。先日お伝えした通り、姫様と婚約する場合、私を倒すか、私を女性として攻略するかの二択になるのですが、覚悟は宜しいですか?」

「待って本当に勝手にどんどん話進めないで!?」

 そして笑顔で詰め寄るリバール。

「ソフィさん、どうしよう、ボクとソフィさんだけまだ婚約の気配がない……!」

「焦らずとも大丈夫ですよ。団長が私達だけを見捨てたりするわけないですから」

「そ、そうだよね、良かった……」

 そして謎の確認をするソフィとサラフォン。――場はカオスになる一方で。

「とりあえず、婚約は一旦置いておこう! 落ち着いて、他の案もちゃんと練ろう!」

 ライトは何とか場を収めたくてそう発言。――どうしよう。本当に俺ハーレムまで後一歩の所まで来てしまったのか。

「え、何言ってんの? 後一歩所かもう十分ハーレムじゃん」

「違うよっていうか頼むから俺の心そんなアッサリと読まないで!?」

 そんなやり取りがもうしばらく続くライト騎士団の団室であった。

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