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猫を追いかけて異世界  作者: ふー
能力発現編
39/112

無垢の残虐者

皆さん、熱中症には気をつけましょう。

読んで下さりありがとうございます。

 互いに顔を会わせて固まった。


(この子が、『無垢の残虐者』?)


 目の前にいるのは、

 シオと同じくらいの年の男の子だ。栗色のくせっ毛がかわいいって・・・・昨日描写したまんまのあの子がいました。

 この子に『無垢の』は合うが、間違っても『残虐者』は似合わない。


「あ、あの。」


「はじめまして?ラールヴェルの新しい戦神子です。」

 戸惑っているジョニーに助け舟を与える。


「あ、はい。」

 握手をする時にコソッと


「内緒にするんだったよね。鷹の子供は元気だから。」

 というと嬉しそうな顔をする。


(ほら、可愛い子じゃない。どこが残虐なのよ。かわいそう。こんな異名を付けられて。)


「サヤ=ミコト=スメラギです。」


「僕は、あっ、私はジョニー=ミコト=ケネルです。」

 ジョニーの後ろの人が咳払いをする。


「違う。私の名はジョニー=ミコト=エリドゥ。戦神子であり、エリドゥ帝国の女帝ガランティア=ディーナ=エリドゥの息子である。」

 胸を張って言い直す。


 なるほどね。黙っててという意味はこれか。大人のいいように育てようってのが見え見えよ。


(なんかムカつく。)

 そう思うと、沙耶の美貌は冷たく冴え渡り迫力を増す。


 まだ年端は行っていないにかかわらず、ジョニーも含めて皆見呆ける。


「マッシュールの戦神子のお言葉ですと、エリドゥの神子様に魔法についてご教示をしていただけと言うことですが、よろしいでしょうか。」

 カルガーイが見慣れている分だけ、立ち直りが速い。


 ジョニーが後ろを振り向いてお付の人間を見る。

 頷くのを見ると、こちらへ振り向き

「ぼ、私で役に立つなら、お教えいたします。」


 沙耶はカルガーイに耳打ちする。

「ジョニー君と二人になれないかな?」


 カルガーイがエリドゥ側に話をする。

 どうやら渋々ながら承知してくれたようだ。


 二人で大聖堂の中にあつらえられた庭園の一角に移動する。

 もちろん付き添いの人たちは、少し離れたところについてきている。


 出された冷たい飲み物に一口くちをつけて、

「びっくりしたよ。」


「私もびっくりしました。」


「いいよ。僕で。」


「すぐに忘れちゃうから練習しないと。」


 大変だね、と言って飲み物をすすめる。両手でコップを持って飲む姿は、可愛い。

 シオと同じくらいの年なのに。シオの方が大人びているのは、くぐり抜けてきた経験の差か。


「君はやっぱり向こうの世界からきたの?」


「・・・アメリカ。向こうのお父さんとあ母さんが僕のことをいらないって言ったから、この世界に呼ばれたって言ってた。」


「そんなことないよ。」

 誰がそのような傷つけるようなことを、吹き込んだのかは予想がつく。

 里心を断ち切らせるためだろう。


「でも、向こうのあ母さんはよく僕を叩いて、『お前さえいなければ』って言っていた。お父さんは何も言わなかった。」

 淡々というこの子が悲しい。


「で、でもこっちで新しいお母さんができたんだよね。さっきエリドゥの女帝の息子って言っていた。」

 どのような母親になっているかが、問題だ。


「お母さんって呼んでいいって。今度は僕いらない子って言われないために頑張るんだ。」

(痛いです。悲しいです。暗いです。)

 話題を変える。


「そ、そうだね。頑張ってね。ところで、魔法を使えるって聞いたのだけど。」


「使えるよ。使うと褒めてくれるんだ!」

 顔が途端に明るくなる。

 役に立つ、必要とされるということが嬉しいのだろう。

 その気持ちは、よくわかる。


「今、ちょっと見せてもらっていい?」


「うん。」

 そう言うと、指先を地面に向ける。

 すると、地面がボコボコと何かが出てくる。


「あっ、可愛いかも。」

 20センチくらいの土人形ゴーレムだ。

 よちよちと歩いてジョニーのところに来る。


「ブサイクだな。いらないや。」

 そう言うとジョニーは、土人形ゴーレムを足で押しつぶした。

 その声は、今までの彼からすると、ゾッとするほど酷薄に聞こえた。


「せっかく作ったのに。」


「もっと綺麗なのや大きいのも作れるんだ。」

 そう言うとまた地面に指を向ける。


 今度は犬の形をしている。


「すごいね。どうしたら、こんなことできるの?」


「頭の中で、作ると出来上がるんだ。慣れると早くなるし、考えるだけで出来上がる。大きいのはちょっと時間もかかるけど。」


「最初から出来たの?」


「最初は遊びで土人形を作ったら、動いたんだ。面白かった。いっぱい作って戦争ごっこをしたんだ。」


「遊びのなかからね。ジョニー=ミコト=エリドゥ、ちょっと見て欲しいものがあるんだけど。」


「ジョニー、でいいよ。」


「こっちもサヤでいいよ。」


「じゃあ、サヤお姉さん。」

 二人でこっそり笑い合う。


「いくよ。『光あれ』。」

 相変わらずか細い光指の先に灯る。


「うわぁ、ロウソクみたい。」


(すみません。)


 か細い光に、恥ずかしくなるがジョニーの方は、純粋に驚いていた。

「サヤお姉さん、魔法使いなんだ。」


「でもこれだけしかできない。」


「お姉さんもできないと捨てられちゃうの?」

 心配そうに沙耶を見上げて言う。


「そうだね。居づらくなるかな。」


「じゃ、教えてあげる。サヤお姉さんはこれくらいの光しか、考えていないんだよ。」


「?」


「もっとねえ・・・車のヘッドライトとか、太陽とか!」

 そう言って空を差す。


「やってみるね。」

 車のヘッドライト。夜道を歩いていて突然目の前に煌々ときらめく、二つの・・・・

 手のひらに明るい光球ができる。


「できた・・・・」

 あれだけ苦労していたのにあっさりと。


「ほら!」

 ジョニー君が嬉しそうに跳ねる。


 遠くでレシュが騒いでいるのが聞こえる。


冷たい飲み物は、『冷却の呪紋』でできます。

『呪紋』は接触していないと施せません。

戦闘向きではないですが、付与や補助には使い勝手の良い能力です。

戦神子の血を継ぐ、純血種の能力です。

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