エリアボス
お読みくださいましてありがとうございます。
短めです。
たったあれだけのことなのに、とっても嬉しい。
みんなの元に戻ると、レシュが興奮して話しまくる。
みんなのいる前でもう一度見せる。
まぐれじゃなかったことにほっとする。
「これだけでは、無力のレッテルは外れませんが、ともかく一歩前進です。今日はお祝いしましょうか。」
毒はあるけど、アーカネも私が悩んでいることを知っているから、喜んでくれている(と思う)。
さて、みんなで3件しかないお食事處の一番高級なところで、食べ放題へでっかけましょ♪
いそいそ準備しているところに、お呼び出しが。
「マルリール枢機卿が戦神子様と是非お話がしたいので、お食事にお招きしたいということですね。」
招待状を読むアーカネ。
「断れますか。」
「無理ですね。」
アーカネは使者に
「晩餐にお呼びいただきありがとうございます。ただ、持ち物の中にこちらの不手際でドレスの用意をしてございません。」
(断ってくれ~)
気の張る人と食べてもどこに入ったかわからん。
しかも、向こうのご招待ではこちらから大勢で押しかけるわけにもいかず、私一人の可能性87%(根拠なし)。
「それにつきましては、猊下の方から騎士服で苦しからずと承っております。」
「では、喜んでお招きに預かりますが、神子一人のご招待でしょうか?」
「はい。あまり人がいるとかえって御子様には気を使わせてしまうだろうと、こちらも猊下と側使えの者が一人、三人でということであります。」
「重ね重ねのお気遣いありがたく存じます。」
(どこが気遣いなんじゃ~、みんなと祝杯をあげさせてくれ~食べ放題が~)
「では後ほどお迎えにあがります。」
「いいですか。余分なことは言わないように。聞いてみないとわかりませんとはっきり言うのです。馬鹿で、無能な振りをしていなさい。」
(はい。それは得意です。)
ああ、初めての魔法を使えた(満足に)お祝い・・・・
(! ティルルに報告しないと)
パソコンを出そうとすると、
「マエールにいるときは禁止です。」
気分が上がらない。
重厚な扉を開ける。
そこには広間があって、中世貴族の晩餐会の図があった。
ロウソク(呪紋が施されているなんちゃってロウソク)が意外に明るく照らしている。
いや、沙耶にとっては、顔色の変化がわからないほど暗くあって欲しかった。
「急なお呼び立てして申し訳ありませんでしたな。」
ハリー・Oッターの校長先生のように長く白いヒゲを蓄えたおじいさんだ。
意外に気さくに声をかけてくる。
沙耶はお辞儀をする。
「思いがけなくお声をかけていただき身の縮む思いでございます。」
「気張らずとも。三人しかいない晩餐で固くなっても仕方がなかろう。」
「はい。」
「顔がこわばっておる。ま、そのかんばせも麗しいが、笑った顔も是非見せてもらって命冥加をしたいもの。」
話し方は古めかしいが、こちらの緊張をほぐそうとしてくれていることは伝わる。
「そんな。」
笑みを浮かべると、
「それそれ。」
と喜ぶ。
「ほらの、美人はやっぱり笑っている方が生気があって良いのう。」
すっかり相手のペースだ。
「聖都マエールは5大国全てに接しておる。神子の食したことのない産物を選って用意させた。きっと気に入られることじゃろう。」
そう言って席に案内する。席を引いてくれた男は、側仕えの男だろう。
「もしや?」
男に見覚えがあった。
人の顔を覚えるのは苦手だ。(営業職だったのに)
だが、ひと悶着あった時の当事者同士だったので覚えていた。
「あの時は失礼いたしました。」
確か・・・・
「今は藍色の長衣なのですね。」
「お人柄を試させていただきました。申し訳ありません。」
「わしが命じたのじゃ。許してくれまいかの。」
事実を指摘しただけだが、皮肉に取られたらしい。
「今後はないと。」
「もちろん。戦神子は皆同格じゃ。そう教義で定まっておる。」
「では、済んだことにいたします。美味しくいただきたいですし。」
言われたように今まで食べたことのない食材が使われた料理が、たくさん出た。
その食材についての話や異世界の話で食事時間は過ぎていった。
沙耶が来てよかったと思ったのは、デザートにプティングが出たことと、コーヒーが出たことだ。
「コーヒーが取れるのですね。」
「たまたま、戦神子が苗を持っておられての。貴国とエリドゥ帝国の緩衝地域の高山に生えておる。」
「飲めると思っていませんでした。」
「異世界から召喚されるとき戦神子はいろんなものを持ち込まれる。また、この世界にない知識も持ち込む。そのことについてどう思うかの。」
「どうと言われますと?」
「異世界の技術を広めるつもりがあるかどうか。」
沙耶は言葉を選びながら答えた。
「・・・キマイラのことを考えると武器は導入できるものはしたほうが良いのでしょうが、今より少し改良や発想のきっかけがあればこの世界で発明できたというレベルのものしか、入れてはいけないと思います。急激な進歩は歪みが生じやすいと思います。」
どうやら求められていた回答だったらしい。
枢機卿は黙って頷く。




