金剛のスサノオ
「若い頃日本に留学してな。そこで『カラテ』にであったわけだ。」
「だから日本語がお上手なんですね。」
「いや、今はもう忘れた。今話しているのはこっちの言葉だ。」
「すいません。」
顔が赤くなりそうだ。
アーカネが一緒に来なくてよかった。
グレーの長衣を着ている助祭に、先に到着して待っているマッシュール王国の戦神子のもとに案内された。
クラウス=ミコト=バール。
見た目60代にしか見えないおじいちゃんだ。体も大きい。ウェイ隊長さんといい勝負だ。
ドイツ出身だそうだ。
自己紹介の後、若い頃日本に居たことを話し始めたのだ。自分が青春を過ごした国から来た戦神子というので、親しみを持ってくれているらしい。
「その時、日本の神で強いのはスサノオだと日本の友人に言っていたことを思い出して、スサノオを名乗った。若気の至りだ。笑ってくれ。」
(やっぱり自分でつけたのですか・・・・・)
「強そうですね。」
マッシュールの神子はぶっとい人差し指を立てると目の前でチッチッと横に振る。
「『そう』ではない。強いのだ。今もな。メドーのドラゴンにも一歩も譲っていないのだからな。」
「? ドラゴンがいるのですか?」
「お前はまだ来たばかりとは言え、知らんのか。」
呆れられてしまった。
(すみません。でも、ここは情報を得ないと)
「お教え願いますか?」
にっこりと微笑む。
今までの経験上、今の私にはこれが一番の武器だとお墨付きをもらっている。
「その殊勝さはよし!なんでも聞け。話してやろう。」
「ありがとうございます。先生。」
「懐かしい響きだ。だが、この場合師匠と呼べ。」
「はい、師匠。」
「で、なんだ?」
「ドラゴンがいるのですか?」
「お前はテイマーだったな。ドラゴンを従えようというのか?なかなかいい目の付け所だが、あいにくとドラゴンはおらん。ドラゴンらしきものは皆キマイラだ。」
「ではメドーのドラゴンの意味はどういうことですか?」
「メドーの戦神子の異名は『三元竜マジ・ダハーカ』だ。あいつは、ドラゴンに変身できる。それも3種類だ。ファイヤードラゴン、アースドラゴン、アイスドラゴンこの三体。特性は名の通りだな。それぞれ一日に一回だけだから、あまり脅威ではないな。何回か実際に戦ってみたが最近は本気でかかってこんからつまらん。」
(師匠、後ろに控えている方々が、ちょっとうろたえてますけど、社外秘なのでは?)
「戦争を仕掛けているのですか?人の世界の中で?」
「人の欲は、際限がないからな。」
マッシュールの戦神子は今までの会話が別人のような声で言った。
「自分も含めてだが。」
「師匠の欲はなんなのですか?」
(ティルルが戦闘バカって言っていたけど、そんなことないよね。全く口が悪すぎる。)
「わしはもう72だ。(そんなに年取っているんですか!お肌ピチピチで、あまりシワもないのに・・・)そろそろ先が見えてくる年だ。この世界に来てカラテを我流ではあるが極めたと言いたいが、相手が小物のキマイラでは判断できん。それにこの格闘術をわしと共に葬るのが心残りだ。弟子を取って鍛えている最中だ。・・・相談だが、お前の使役している『白い守護獣』と一回やらしてくれんか。聞いたところ、まだ能力が十分ではない時に既に上位キマイラを退けるほどの強さだったと聞く。どうだ?」
「できません。」
シロを自分の都合で危険にさらすことはできない。
「そうか、残念だな。」
がっくりしている。血の気の多いおじいちゃん戦神子だ。
「他の戦神子たちも強いのでしょうね。」
「他の戦神子とは実際には手合わせする機会がないが、強いな。」
「魔法を使われる方はいるのでしょうか?」
これこそ聞きたいことだ。
「エリドゥとエステリオとも魔法を使う。ただしエステリオは召喚魔法と言う。」
(出た~。ラノベの☆召喚魔法。バハムートとかイフリ―トとか。)
はやる気持ちを抑えつつ、まずは
「魔法の種類があるのですね。」
「魔法は個人のイメージする力が具象化しているほど力が増すと言われている。わしは魔法は使えんからよくは知らんが・・・そう言えばラールヴェルの戦神子で伝説級の魔法使いがいただろう。」
「?」
師匠が難しい言葉を口にしたので、一瞬ついて行けなかった。
(イメージの具象化?)
(もしや・・・)
「テンペストですか?」
「そうだ、そのテンペスト。最初はただの風使いと聞いているぞ。マッシュールの戦神子がひねれる位の能力だった。ところが、みるみる強くなったのは風からイメージして、さらに能力を拡大させたからという。」
「召喚魔法も同じですか?」
「召喚獣の能力は召喚者の認識によって決まるな。ただの猫でも能力を付与した状態で召喚すれば強い。」
そこで、一旦きると改めて
「『白き守護獣』は召喚獣なのか?」
「いいえ、違います。」
「そうだろうな。召喚されっぱなしの召喚獣や成長する召喚獣というのは聞いたことがない。だが独立して行動する使役獣の話も聞かん。」
(疑っている?っていうかやっぱり戦闘バカは振りじゃない・・)
「よくわかりません。どういうものかなんて私には経験のないことですから。」
沙耶の答えを聞くと、師匠は笑い出した。
「違いない。」
笑い顔はなんか人が良さそうだ。
「コステリオ王国の戦神子の召喚するのは、召喚獣ですか?精霊ですか?」
「なんだ、そっちはいろいろ知っているのだな。」
(はい、ラノベで)
「あの男は、インド人だ。インドの神を召喚している。」
「シヴァとかガネーシャとか?」
「ん?なんだったか。話にしか聞いてないからな。」
「そうですか。」
(ちょっと興味があったのだけど。)
部屋に助祭が入ってきた。
「マッシュールの神子様、マクリール猊下がお会いしたいと申しております。」
そう告げると、手をクロスさせてお辞儀をする。
「そうか。懐かしい顔見知りのお招きだ。すぐに伺うとお返事申し上げてくれ。」
「はい。かしこまりました。」
「そういうことだ。久しぶりに若くて美しい女の戦神子に会えて楽しかった。」
「いろいろ教えていただきありがとうございました。」
「5大国の戦神子のパワーバランスは今、南に傾いている。このスサノオがいなくなれば、さらに傾く。それはこの世界にとって好ましいとは言えない。これが永きにわたって戦神子をしていたわしの経験が言っていることだ。まあ、マエールの枢機卿もどうやらそう思っているから、わしをお前と会わせたのだろう。エリドゥの小僧に魔法のことを聞いてみるがいい。本職だからな。」
そう言うと、あとを見ずに部屋を出ていった。
最後にとっても大事なことを言ってくれた。
「初めて間近にお会いしましたが、流石の威圧感でしたな。」
ガルガーイが汗を拭いている。
沙耶にはさっぱりだ。
達人は達人を知る。
凡人にはわかりません。
レシュは・・・ちょっと目がキラキラしてるよ。あなた、どれだけ年上好きなの・・・・
3人目の反応は、
「いつでも麻痺薬を打ち込むつもりでしたが、隙がなく。」
あなたは、お医者さんでしょう。
さて、問題を抱えつつエリドゥの戦神子に会いに行きますか。
ただ『無垢の残虐者』の異名持ち、無事に帰れるか心配。
バハムートとイフリートともに初出はイスラム系のモンスターです。
シヴァとガネーシャはインドの神様です。
由緒正しきでの方々なので伏せなくて大丈夫ですよね?




