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猫を追いかけて異世界  作者: ふー
奈落侵攻編
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110/112

決着

お読みいただきありがとうございます

「皇帝陛下!私もお連れください!」

ウェブが走り寄ってくる。


「私たちもサヤ様を助けに行きます!」

侍女たちだ。


「ウェブは来てくれ!お前らはダメだ。キマイラの標的に為りに行くようなものだ。」


「だからです!私たちが行くことでサヤ様からキマイラの注意が少しでもそれればそれだけお楽になるでしょう!」

「お願いします!これでも結構私たち戦えます。」

彼女たちは皆ドレス姿でなく兵隊たちと同じ服だ。

戦う覚悟を決めてきているのだろう。


「わかった。自分の身は自分で守れ。おれはサヤだけで精一杯だ。」

非情ともいえるティルルの言葉だが、それはいつものティルルのポーズだ。

彼女たちのおかげで少しは頭に上った血が降りてきた証拠だ。





馬を走らせている間も、テピアスが状況を報告する。

伝令も追いすがるように近寄ってきては報告する。

キマイラの数が少なくなっているので拮抗はしているものの、戦神子の戦線離脱で士気が落ちている。


「各隊に戦神子を中央に集め一気に殲滅すると伝えて士気を保たせろ。戦線を維持またはキマイラを牽制してゆっくりと包囲を広げるだけでいいから持ちこたえろと伝えろ。」


「了解しましたァ!!」


「こちらにアビスとメドーの戦神子が合流します。」


その声に目を向けると大柄のマクベインがアーカネたちとこちらに向かってくるのが見える。

しかしキマイラも引き連れているようだ。

アビスが立ち止まりキマイラに向かう。

マクベインをこちらに先に合流させる気だ。



「すまん。負傷した。アビスに助けてもらった。」


「負傷の程度は?戦闘不能か?」


「いや。」

腕を出す。呪紋のおかげで跡が残る程度にまで回復している。

「動かせるのだが、照準が合わせづらい。」

馬を下りて構えるとアビスの向こうの敵に向かって打つ。

豪音と共にキマイラが吹っ飛ぶ。

「馬に乗りながらだとうまく打てない。」


マクベインは戦力になるようだ。

アブスも合流する。

「『奈落マレフィスクの戦神子』と名乗るものが、現れた。自身と触れたものを高速移動させる能力の持ち主らしい。」


「それで急に後方に現れたのか?」


「そうだ。エリドゥとエステリオも連絡がつかない。」


「エステリオの神子様はこちらに向かって居ります。」

テピアスが報告する。


「よかった。無事だったか。」


「エリドゥの神子は見えるか?」


「森の中で視界が悪いので、配下を一人回しました。近くから見ればわかるでしょう。」


「わかった。マクベイン、悪いがまた馬に乗ってくれ。中央部のサヤとケンジに合流する。」


頷くと手助けを受けて馬上に戻る。

「悪いが乗馬は初めてだ。綱を引いてもらいたい。」

ティルルは部下に支持する。

「行くぞ!」




その頃沙耶は力尽きていた。

キマイラが取り囲んでも、なぎ払うこともできない。

シロと同じ位の大型のキマイラが近寄ってきて沙耶に、生臭い息をかける。


(食われちゃうのかな)


「サヤッチ!」

沙耶の側からキマイラが吹っ飛ぶ。

「しっかりしろって!」


ケンジだ。

ヒーローキャラじゃないくせにこういう時には必ず助けてくれる。

ウザイとかチャラいとか言ってごめんね。


「サヤッチ、口に出して言っているよ。ゴメンな、ちょっと攻撃をくらって動けなかった。」

脇腹を抑えている手から血が滴り落ちている。


「ケンジ、怪我がひどいじゃない!」

《治癒の呪紋》の上に《再生の呪紋》を重ねようとしたらケンジの手がそれを止めた。


「へえ~生きているんだ?」

奈落マレフィスクの戦神子』がいつの間にか戻てきている。

「どいつもこいつもしぶといよね。ま、だから召喚されたんだろうけど。『生きたい』っていう気持ちが強いんだよ。見苦しいくらいにね。」


「ばかやろう!世界を救えばお姉さんたちとこれからイイコトし放題だっていうのに、もったいなくて死ねないだけだ!」

ケンジの本気。ブレないね。


「私もティルルとこの世界に生きていきたいだけ。キマイラなんてどうでもいいのに攻めてくるのはあなたたちでしょ!」

そうだった。怖い目に会うのも、痛い目にあうのも、キマイラが人の世界に来て襲ってくるためだ。


「そうだよ。サヤッチなんて結婚間近のところキマイラのせいでストップかかちゃっているんだから、女のヒスは怖いよ?」


ケンジはシリアスな時はないのか?

だが、気力をさらに振り絞るにはいい理由を言ってくれた。


「そう!愛のために戦う!」


奈落マレフィスクの戦神子』は外国人のジェスチャーのように手を広げると

「聞いている方が恥ずかしいよ。『サヤッチ』・・・変な名前だね?君は僕と『奈落マレフィスク』に来てもらうから殺さないけど、『ケンジ』は退場してくれるかな。」


シュっと姿が消える。

今度は見える。

「そうそう同じ手は食わないっての。周辺の重力を強くしたからそう軽々とは動けないっしょ?」

ケンジ、あんたかっこいいよ。

そのケンジがこそっとサヤに耳打ちする。

「サヤ、動きを止めたらあいつにかましてくれるかな。まだ動くには早すぎたみたいで血が足りなくって、よく見えないんだわ。」


ケンジとタイミングを合わせて攻撃する。

『熱線』はケンジの影響を受けるので『マイクロ波』だ。それも最大出力だ。


当たったと思った。

「ハズレ。残像だよ。惜しかったね。本体だったら君たちの勝利だったのに。」

恐ろしく爽やかな顔で微笑む『奈落マレフィスクの戦神子』

「『ケンジ』はもう打ち止めみたいだね。しぶとかったけど私の勝ちだ。」


ケンジも沙耶も崩れ落ちる。

ケンジは言葉も発することができない。

顔色も土気色になっている。

「でもしぶといから止めをさしておこうかな?さてこの小石だけど、私の能力で加速すると『銃使いの戦神子』と同じようなことができるんだよね。」


ケンジの体が跳ねる。

新しく傷ができて血が溢れる。


「やめて!「「お願いだから」」

言葉尻を取る。

「お願いされてもやめることはできない。これは生存競争だ。さあ一緒に『奈落マレフィスク』へ行こうか。住めば都というからね、きっと気に入ってくれると思うよ。」

信じられないほどの綺麗な爽やかな笑顔で、沙耶に手を伸ばす。


ズギュン


奈落マレフィスクの戦神子』の目の前に半透明の銃弾が浮かんでいる。

「危ない危ない。もう打てるようになったのか。全くしぶといね。」

親指と人差し指で半透明の銃弾をつまむ。

「おお、摘めるんだ。ならこれを反転させて、打ち出せば『銃使いの戦神子』に返すことができる。」

シュと空気を切る音がした。


「マクベイン!」

「戦神子様!」


体の大きなマクベインがゆっくりと崩れ落ちる。

「これで片付いた。『神使いの戦神子』はもう限界だね。『サヤッチ』一人になったわけだ。どうだい?戦神子が全滅した今、キマイラに街を村を『ティルル』という男も殺しまくることができるのだけど、どうする?」


「そう言えば私があなたについていくと思うの?」


「思うね。『愛のために戦う』って宣言したばっかりじゃない?」


「そうね。『愛のために戦う』って言った。」


奈落マレフィスクの戦神子』は飛びのく。

体の反面が熱傷を受けている。

「痛覚を遮断しておいてよかったよ。話し合いできてくれればと思ったけど、実力行使が必要なんだね。」

最期の言葉は耳元から聞こえた。

首筋に衝撃を受けて、意識が遠くなる。


(嫌だ!嫌だ!嫌だ!)





暗い

暗い

目を開けているのか閉じているのかわからないほど暗い


HAHHAHHAHHA


動物の激しい息遣いが聞こえる

シロ?

そう言えばシロはどうしただろう


みんなはどうしただろう

ティルルは無事だろうか


体を動かそうとしてみたが重りが詰まっているみたいで、指の先さえ動かせない

暗さに慣れてきたのか

どこからか明かりが来るのか少し周りが見えてきた


そばに大きなモノがいる

それが息遣いの主だ

シロの目と違った色だ


目が合うとそのモノの目が眇められた

ゆっくりと近づいてくる

口から牙と驚く程長い二股に分かれた蛇のような舌が見える


その顔が沙耶に近づく


(いいいいやっぁぁぁぁ!)

喉が張り裂けんばかりに拒絶の声を上げたつもりだが、モノの息遣い以外にほかに音が沙耶の耳には届かなかった。

(助けて!ティルル!シロ!)


次話 最終話『終わりと始め』

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