表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫を追いかけて異世界  作者: ふー
奈落侵攻編
PR
107/112

戦神子

お読みいただきありがとうございます

 コンテスタ盆地はマッシュール王国の南のはずれにある。

 ここを北に上がるとマッシュール王国の王都へと続いている。

 盆地から北への出る街道には、砦がある。

 その砦に連合軍の本陣がある。

 少し小高い崖の中腹に建てられた砦は、盆地を見渡すことのできる絶好の場所だ。


 ティルルは見晴台から動かない。

『俯瞰』できる動物混じり(ミクスチャー)がここに居るからでもあったし、サヤの様子を少しでも早く知るためでもあった。

 ティルルができることは、見守ることと戦場全体を見回し戦神子たちの負担が等分になるように戦力を再配置することだけだった。


 しかしキマイラを確実に引きずり込むために、サヤが残っているということを聞くとと直ぐさま攻撃の合図を上げそうになった。

 今もジリジリして報告を待っている。


「『入った』と今連絡がありました!」


「よし!総攻撃だ!各隊は戦神子と連携をしろ。エステリオとエリドゥの戦神子を守れ。」

 駆け下りてサヤと共に戦いたい。彼女を守りたい。だが司令官としてまとめる立場の今はここを動けない。

「死んでも死ぬなよ。」




 各隊には大地電話(ガイヤネットワーク)のスローン達が張り付いている。

 彼らが状況を知らせてくる。

 こちらも『俯瞰』で見た情報を命令を各隊に連絡する。





 ☆

「まずは俺の出番だな。『重力呪縛グラビティバインド』」

 キマイラの先頭集団が足が縫い付けられたように、立ち止まる。

 後ろのキマイラたちが急に止まったキマイラを踏みつける。

 あたりは途端にキマイラの苦痛と憤怒の声が充満する。


「何?その名前。」


「かっこいいしょ?昨日サヤッチの侍女さん達に考えてもらった。彼女たち、優しいよね?」


 ツッコミどころがたくさんあって、立て込んでいる今はそれどころじゃない。

 熱線で足止めされたキマイラを焼き払う。

 毛皮のこげた匂いと肉の焼けた匂いがする。


「サヤッチ、火力を上げたでしょう?」


 そうなのだ。生焼けだと気持ちが悪い匂いが充満するので、瞬時の火力の温度を一千度まで上げることにしたのだ。

 集中力がいるので、長時間照射できないが、キマイラもその温度に耐え切る物はない。


「焼くって言ってくれなきゃ危険だよ。サヤッチもなんか言って焼いてくんないかな。」


 そんな、恥づかしい事・・・・


「協力して戦うんだからそういうのを連携って言うんだよ。」

 ううう、ケンジに諭された。

 でも、なんだろうな・・・

 ひとりじゃないって心強い。

 しかもケンジって意外に頼りになる。


 吊り橋効果はないよ?


 炭になった仲間を乗り越えてキマイラが飛び込んでくる。


 身構えるより先に白い影がそのキマイラを吹っ飛ばす。

「シロ!」


「すごいな!」


『ふん!』

 ドヤ顔のシロ。

 やる気満々だ。

 こうなると誰にも止められない。




 キマイラの進行方向前方は、サヤとケンジ。

 速度をつけてきたキマイラを受け止めて足を止めさすのが、最初の山だ。

 だが沙耶の広範囲の『沸騰』とケンジの『重力』は見事に受けきっている。

 シロもそこに乱入している。

 これは目論見通り。

 ティルルは皆に気づかれないようにほっと息を吐く。





 ☆

「さあて、本当に面白くなってきたね。」

 ジョニー=グラトニーは唇を舐める。

「逃がさないよ。『ウォール』」


 キマイラが進んでいった盆地の入口に、盆地を閉ざすように壁がそびえ立つ。

 最後尾のキマイラたちの一団がひきかえして来る。


「そうじゃないと面白くないからね。『タイタン』『ギガース』『ヘカトンケイル』」

 3体のゴーレムが地面から現れる。

「遊んでおいで。」



 後方はジョニー。

 木の高さ程もある壁が出現している。

 その壁の手前に、ゴーレムが三体。

 キマイラの攻撃を受けて崩れ落ちても、直ぐさま次のゴーレムがその瓦礫から立ち上がる。

 普通だったら心が折れそうだ。

 壁は予想していなかったが、あれでキマイラはこの場から逃げれないだろう。







 ☆

 マクベインは共に戦ってきた者たちの顔を見る。

 彼らの顔にはマクベインに対する絶対的な信頼がある。

(これだ。あれの求めていたものは!)


「ここから銃撃をする。上位種を中心に始末していくので、小物がこちらに来たら始末して欲しい。」


「お任せ下さい。マクベイン様の邪魔はさせません。」

 隊長が胸を張って受け合う。




 左はマクベイン。

 後方に負けず劣らず轟音を響かせている。

 サヤを助け出したときは、あんな音が出なかったような気がしたので問題が発生したのかと連絡をしたら、『効果音が出たほうがヒーローらしいのでつけた』という返事が来た。

 一番まともそうに見えた戦神子だったが、やはり戦神子ともなると皆ネジの締め方が違う。




 ☆

「本当に今回はイレギュラーすぎる。最悪の場合も想定しておかなくてはならないかな?」

 手の上に生じさせた種を地面に落とす。

 地面に落ちた種は、小さい芽を出すとそこで止まる。


 しかし見えていないだけで、地中深く根を張って地脈を断裂させる。

 これがエステリオ国内にキマイラが出没しない理由だ。


「まずはこれでよし。長引くと不確定要因が増えていくな。」

 手のひらに再び種を生じさせる。

「『カーリー』『チャンドラ』『シヴァ』」

『カーリー』は艶のある黒い肌で赤い髪四本の腕にそれぞれ長剣を持ち首からドクロのネックレスを下げた壮絶美女の姿。

 その夫とされる『シヴァ』は片方の手に独鈷杵、もう片方にチャクラムを回している。

 そして『チャンドラ』、先の2体とは違って螺髪だ。それが塔のように盛り上がっている。手には壺。この髪は戦闘用というより回復用だ。手に持つツボには“ソーマ”と呼ばれる霊薬が入っている。


「地脈封鎖に加えて三体も同時にとは、大丈夫でございますか?」

 シンの耳元にかすかに気遣う声がする。


「大丈夫だよ。チャヤ。君がついているだろう?」


「はい。命に替えても(・・・・・・)お守りいたします。」



 右はシン。

 遠くからでもあそこの異様さはよくわかる。

 極彩色が舞い踊っているのだ。

 シンが種より生じさせた異世界の『神』は一様にきらびやかだ。裸足にシャラシャラと音がする金属を付け長い髪をして原色の衣装を纏う踊り子のような姿をしている。

 踊り子と違うのは、『神』が一閃する事にキマイラが倒れて行くことだろう。


 戦況は優勢だ。

「戦神子の能力とはこんなに圧倒的なものだったのか。」

 救世主として国教会が召喚し、また国教会が『契約の儀』で拘束するのも無理からぬことかもしれない。

 エステリオのシンがその気になれば、人の世界は戦神子のモノになるだろう。



 ティルルはその考えを振り払う。

 今は、勝つことだ。

 この勝ちつつある状況を確かなものにするだけだ。

「アビスに左に回れ、マクベインを援護。」


「アビス隊にメドー公国の戦神子の支援に回るように伝えます!」






 ☆

「なんだ?どうした?」

 後方にそびえ立っていた壁が崩れていく。ゴーレムも同時に崩れていく。

「何があった!」


「状況を知らせよ!」

 スローンが後方のスローンと連絡を取ろうとする。

「・・・連絡がつきません!不明です!」


「エステリオ王国の戦神子より通信。『こちらより“種”を回す』とのことです。」


「援護に回ってくれたか。」

 エリドゥ帝国の戦神子は自身が無力なだけに、護衛をつけていたのだが。

 油断したのか?

 伏兵か?

 キマイラに伏兵という観念があったのか?

 キマイラが戦術を持ったという話は聞いたことがない。

(くそ!リガードかオーリスを連れてくるべきだったか!)

 彼らは帝国を抑えるためにおいてきたのだが、純血種である彼らは、『軍』というものを動かすことについて特化している。

 キマイラが相手なのでアビスを連れてきたのは間違いではないが、アーカネは頭は切れるが、軍を動かす司令官タイプではない。


「皇帝陛下!メドー公国の戦神子の後方にキマイラです!」


「何!なんで今まで気がつかなかった!」


「わかりません!急に出現しました!」


「地脈か!」

 ティルルは驚愕から立ち直る。

「なら、小型のキマイラだな。アビスにそちらを優先して叩けと伝えろ。」


「了解しました。」

 帝国の大地電話(ガイアネットワーク)はモールス信号で簡略化してある。短時間で多くの情報を送れる。


「中央部に動きがあります!」


 こちらが優勢だったはずなのにここに来て慌ただしくなってきている。

(何かが起こっている?)

 中央部といえばサヤに近い。



 ☆

「なあ、サヤッチ。」

 ケンジが一息ついたサヤに声をかける。

 ケンジとのコンビネーションは結構うまくいっている。

 キマイラの抵抗が薄くなってきたのがわかる。

 もう少し。

 シロもそばに来た。


「気の抜けた声出さないでよ。」


「わりい。でもさあ、あれって、“人”じゃなえか?」

 ケンジが指を指す方向を見る。

 上空にキマイラに掴まった人が見える。

 誰か襲われてる?

 いや、でも掴まっているのは人の方?

 キマイラで空を飛べるものがいたのか!

 そのキマイラの姿はヤギの頭に漆黒の体。

 コウモリのような翼

 そう悪魔として膾炙されている姿だ。



 人はそのキマイラを話すと地上に落ちてくる!

「危ない!ケンジ!」


 その人間は速度を緩めると音もなくキマイラのひしめく地上に着地する。


 男・・・青年?

 キマイラの阿鼻叫喚の中に涼やかに立っている。

 場違いだ。

 あまりにも。


 シロが前進の毛を逆立てて威嚇する。

 シロの態度は明らかに『敵』に対するものだ。


 敵?


 その青年が口を開く。

「はじめまして。私は『奈落マレフィスクの戦神子』です。」


戦場に現れた《奈落の戦神子》

敵として現れた彼の真意とその能力は?

『最終決戦』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ