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猫を追いかけて異世界  作者: ふー
奈落侵攻編
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死闘

お読みくださりありがとうございます

キマイラ

様々な生物の遺伝子が歪にまじり、生じた生物。

それでもそれら・・・彼らは生きていかなくてはならない。

生きている限り生きることを選び続ける。

それが本能だ。

そしてもうひとつの本能は、種の保存本能。

キマイラの個々の能力の高さと引き換えるように、繁殖は困難になった。

キマイラにはメスは貴重だ。

だから、キマイラは女はさらう。

殺される喰らわれる男と、さらわれ蹂躙される女、どちらが悲惨かわからない。



いや、今はそんなことよりも目の前の繰り広げられる戦いだ。

小型種であれば一対一の戦いでも勝利を得ることはできるだろう。

しかし中型以上のキマイラとなれば、人がキマイラに勝つためには数で圧倒することが前提となる。

しかし“ポロロッカ”ではそれが完全にできない。


最初にキマイラの集団と衝突したのは、メドー公国の『英雄の系譜』部隊だ。

彼らは戦神子の子孫たちだ。

異世界人の恩寵と『呪紋』の力を行使することができる。

この世界で戦神子を除いたら、最も戦闘力の高い集団だ。

その集団が敗走している。


彼らに向かってきたのは、前線の下位キマイラではなく、中位種のキマイラ。

彼らは一気に集団から分かれて彼らに襲いかかった。

統制のとれた一糸乱れぬ行動は、『英雄の系譜』部隊の動揺を誘った。

それが致命的だった。


「体勢を立て直すぞ!下がれ!」

隊長が声を上げる。


「逃げろ!」

「待ってくれ!連れて行ってくれ!」

怪我をして動けない者を連れて行こうとした者が、キマイラの爪で上半身をもぎ取られて、助けを求めた男に血の雨を降らせる。

「ひ、い、いやだぁ」

いざりながら尚逃れようとする男の足をくわえ、放り投げるキマイラ。


そのキマイラの頭が突然バシュという音がして吹っ飛ぶ。

「戦神子が来てくれたぞ!今のうちだ下がれ!」

隊長がすかざず叫ぶ。


少し離れた丘の上にマクベインが仁王立ちになる。

彼の大きい体は兵の目に力強く映る。

彼が腕を交差させて片方の指をキマイラに向けると、次の瞬間その標的となったキマイラは吹っ飛ぶ。

中位種のキマイラも一撃だ。


「すごい。」


召喚されて間もない戦神子の戦闘力ではない。

5、6体のキマイラをその標的にして、沈めるとキマイラの足が鈍る。警戒し始めたようだ。

隊も大きく数を減らしたがようやく立て直すことができそうだ。


「よし。戦神子と連携をとって、やり返すぞ!」


「「「「おう!」」」」


近づかなくなったキマイラにマクベインは逆に迫るために丘を降りる。

と、脇の森から小型のキマイラが集団でマクベインに襲いかかってきた。


「戦神子を守れ!」

隊長の声に兵たちは剣や弓を構える。


「大丈夫だ。下がっていろ。」

マクベインはそちらに向き直る。

「『掃射モード』」

キマイラの集団を舐める様に手を動かすと


Gyawa Gyawa


と苦痛の声を上げてキマイラたちが転がっていく。


「音がでないと締まらないな。」


それを合図にしたかのようにキマイラの群れは本隊に帰っていく。


「引いたぞ!勝ったのか?・・・助かったのか?」

隊長の声に部下たちの体の力が抜ける。


「戦神子のおかげだ。」

「神子様、万歳!」

「ありがとうございます、神子様!」


マクベインは顔を必死で作る。

念願のヒーローの第一歩だ。

マクベインはキマイラが去っていった方向に歩み始める。


「神子様!マクベインさま!どちらに?」


「本隊を追う。」

「我々もお供いたします。」


マクベインは見渡す。

前の世界では、このような目で見てくれる部下も友もいなかった。


「よし。動けるものだけついてこい。殺られた仲間のリベンジだ。」

「「「「おう」」」」




キマイラの大集団は何かを目指すように進む。

緩衝地帯や国境地帯の住人は避難したが、ここまで内地まで踏み込まれると思っていなかったのか、非難しない非戦闘員―――つまり一般人がいた。

戦う術も力も弱い彼らは一方的にひねり殺されていく。

男を喰らい、女をさらうための“ポロロッカ”のはずが、人を喰らいもせずに突き進む。

彼らの通ったあとには死体が累々と転がっている。

どの死体も酷い有様だ。


「ここで食い止めるぞ。」

マッシュール王国の守備隊の隊長は部下を鼓舞しなければならなかった。


近代兵器のないこの世界で彼らの侵攻を止めるのは容易ではない。

しかも今回は進路の予測が立たないのだ。

塹壕を掘り、橋を落とすという事前の布石が全く役に立たなかった。

緩衝地帯や国境地帯にマッシュール王国の前戦神子の精鋭部隊が配置されていた。

今、彼らは必死でこちらに向かってきている。

しかし間に合うのは一部。

その一部が合流するまでにここを守らなければならない。


「盾構え!」


アダマンタイトの合金で表面をコーティングした盾を並べる。


「弓隊、構え!」

キマイラの頭上に狙いを定める。

もちろん『呪紋』が施された矢だ。


「槍隊も位置につけ。」

弓では中位キマイラの致命傷にはならない。

ひるんだところを槍の投擲を見舞う。

近づく前にどれだけ減らせるかにかかっている。


「後方のラーヴェラルの友軍の支援をはまだか!」


「『大地ネットワーク』で『至急支援に向かう。持ちこたえられたし!』の返事はきております。」


「正確な時間は!」


「不明です。」


「チィ!」


「キマイラ!見えました!」

部下の『遠見』が告げる。


「援軍もすぐに到着する!ラーヴェラルの軟弱者たちにマッシュールの勇姿を見せつけてやれ!」

隊長は声を張り上げる。

目の前にはキマイラの立てる土煙が見える。

(多い・・・多すぎる)

誰の目にも状況が圧倒的に不利であるとわかる。

だが、引けない。

自分の肉親が、愛しいと思う人が自分の後ろにいるからだ。









隊長は自分の視界が歪んだのを感じた。

なんだ?

顔を触るとそこにあるはずの左目がない。

いや、左側(・・)がない。

体が左に倒れていくのがわかる。

死ぬのか

食われるのは嫌だな

死んでしまえば同じか


かすみゆく視界に人が立つ

女神だ

よかった

最後に見たものが女神で・・・・




アビスとともにサヤは騎馬で先行する。

よく訓練された馬は、しがみつくように走らせる沙耶を乗せて走る。


「見えた!」


そう叫ぶ声と共に急激に、スピードが弱まる。

キマイラと遭遇し慣れているはずのアビスの馬たちが怯えている。


「ハイ!ハイ!」

脇腹を強く押して促すも、足踏みするばかりで前にと進まない。


「仕方がない。降りろ。」

一斉に下馬する。

沙耶もなんとかすがるように降りる。

強制されるものがなくなった馬たちは一斉にキマイラと逆の方向に走り出した。


「走る!」




走りながら、前方のキマイラに向かって熱線を放つ。

遠いので致命傷にはならないが、そこにいるはずの『再生の呪紋』を施されているマッシュールの兵士の延命にはつながるはずだ。


「使えるようになったな。」


「特訓・・・したもの。」

息が上がる。


「体力はまだまだだな。」


「こっちの・・・アビス・・と・・くらべな・・いでよ!」


「帰ったら基礎訓練だな。」


「逃げようかな。」


不安と恐怖を紛らわすために必死で会話をする。

アーカネもそのために振ってきているのだろう。


「マッシュールの部隊もよくやっている。小物は殲滅したようだ。」


「残念。一掃してあげたのに。」

彼らというほど生き残りは少ないようだ。

まだ中位種と上位種が残っている、というか本隊はほとんど無傷に近い。


「アーカネ。」


「なんだ。」


「私に近づかないでってみんなに言っておいて。」


「標的になるぞ。」


「望むところ。周りを『沸騰』させるのに誰かいると邪魔になる。」


「・・・わかった。」


「ありがとうね。」


「サヤ、そこで礼など言うと『フラグ』とやらになると聞いたぞ?」


「誰に!」


「小うるさい侍女どもに。あいつらキマイラより始末に困る。しかもとんでもなく強くなっているぞ?」


「?アビスより?」


「張るな。シロと『遊ぶ』なんて信じられん。」


「そっか。じゃあ彼女たちの心配はしなくていいかな。」


「自分の心配をしろ。泣く奴は多いぞ。」


「アーカネ、それも『フラグ』になるかもよ。」


「面倒だな。」


キマイラと沙耶との戦いが始まる

沙耶は無事にティルルのもとに帰れるのか

マクベインは沙耶と合流できるのか

沙耶の危機

そこに現れたのは・・・『死地』

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