十三話
帰りの西風駅には人もそれなりに多い。
先を歩く森羅さんとキョウを見失いそうになる。
「まって……え?」
手を掴まれていることに気付く。
振り返るとそこにいたのは。
「荊、兄さん……?」
垂れた瞳なのに鋭い眼光。
紫の髪にオレンジ色の瞳。
短い眉の秋の一族の顔立ち。
その顔はとてもあの人に似ていた。
「兄さんと呼ぶな。お前、何をしに来た?生きていたんだな。母さんを殺しておいてよくこの西風に足を踏み入れられたものだ。」
「……ごめん、なさい。」
「言え。何をしに来たのか。」
ギリギリと腕を掴む手に力が込められていく。
突きつけられた憎悪の重さに胃の底が痛い。
そうだ。私はあの人を……舞さんを死なせた。
それなのにどうしてここにいるんだろう。
──いなくならなきゃ、いけないのに。
──そうだ、いなくならないと、罪を償わないと
「お前が何をしてるんだよ。」
「さくちゃん!!」
氷のように冷たいその声が意識に割り込む。
……二人の声が聞こえる。
いつの間にか腕を掴む手が無くなっていた。
「放せ。他所の者が口を挟むなよ。朔来、お前この男達を誑かしたのか。母さんを殺したみたいに。」
息ができない。
荊兄さんの放った言葉に空気が重く揺れる気配がした。
仰ぎ見た森羅さんの瞳は紅く紅く光を帯びていた。
咄嗟に森羅さんの服を掴む。
そうしたのはきっとこのままにしておけば荊兄さんが死んでしまうと予感したからかもしれない。
「ごめんなさい。大丈夫です、大丈夫だから何もしないで、ください。お願いします。」
掴んだまま身体がぐらりと揺れる。
意識が遠のいていく。
──ごめんなさい。貴女の最期がほしいの──
暗い意識の中で舞さんの声が頭に響いていた。




