夢魔の安堵と願い(リーディエ視点)
「……本当生きててよかった。」
去っていく車に手を振るのをやめてそう呟く。
初めての友達。かつてあたしを照らしてくれた人。
あの子が生きているのは知っていた。
手紙に書いてあったから。
それでもこの目でみるまで安心ができなかった。
オーナー代理として店に戻る。
琥珀姐さんは拗ねたように髪の毛を弄っていた。
ここは桃花楼。
人でないもの達が人間に一夜の夢をみせる場所だ。
金華猫の琥珀姉さんは躍りで人を魅了する。
「もう、何年ぶりかに会えたのにすぐ帰っちゃうだなんて。リーディエも止めないでよ。」
「可哀想だから止めたのよ。……というか、姐さん。
綺麗な人が好きだって言うのにあの銀髪の男には反応しなかったわね。」
「知っててきいてる?あれ、人間じゃないわよ。あたし人間じゃなくても好きだけど……というか下手に触れたらこっちが死にかねない爆弾よ。いくら綺麗でもそんなのにはテンションあげてられないわ。」
琥珀姐さんは金華猫という妖怪。
あたしよりも長く生きている分気付くことも多いのだろう。
「……香炉、気付かれたかしら。あの子勘がいいから。」
「気付かれてもいいから迎え入れたんでしょ?」
「相変わらず、本音を隠させてはくれないのね姐さん。」
連絡を送る。
『術について調査しているようだけどどうする?』
「……あなたはどうするのかしらね。全てが明るみになって、それでも何もいわないの?」
ねえ、貴女一人が背負わなければいけないほどもう弱くはないみたいよ。
一度向き合えたならきっと……。
この事件を仕組んだ相手が報われることを願った。
あたしは半分人じゃないけど、祈るくらいはいいだろう。
「どうか……うまくいって、朔、貴女が気付いてくれたならきっと。」
香炉に息を吹き掛け消した。
「さあ、営業よ。」
先程まで年相応に感傷に浸っていた姿はどこにもなく、辣腕を振るい店を盛り上げた。
さあ、夜はこれから。




