九話 これからのこと
「以上になります。」
「うん、やはり汚染事変の際にはすでに封印を凌駕し神力を無意識に扱ってた可能性が高いね。そしてわざわざ封印をもう一度施すために君たちを拉致した。それでおおよそ間違いないだろう。」
キョウの語ることはあまりにも恐ろしい真実だった。
父はわざわざ私を拉致して……その際に私の右目を貫いた。
私は汚染体によって傷つけられていたとしか聞いていない。
それが嘘だったということはやはり私の病気も嘘だったのでは?
私には思い出せない記憶が数多くある。
でもきっとキョウの言っていることこそが真実なのだろう。
嘘をつく子ではないし、帝のもつ全てを見抜く瞳に嘘は通用しないだろう。
「朔来くん。君は生まれつきの神力がある。そしてその神力は神月家最高の純白。間違いない。」
「どうして純白だと……。」
「そうだなあ。今剣を出すことは出来るかな?」
「ちょっと、この場で武器を?」
「紫雲。いいから。」
どう出していただろうか。
強く願うと出していたのだったか。
(お願い……。)
心臓の方から白い光が現れ一か所に集中していく。
まばゆい光が収束して現れたのは白いレイピアだった。
「ほら。それは君の魂からつくられる力なんだよ。神力の色が現れる。そこにあるのは純白の剣、これこそ君が神月家の素質をもつ証だ。」
その剣を握りしめふと思った。
どうして生まれた頃から扱えなかったのだろう。
父はどうして私を封印したのだろう。
この力を扱えていたのなら私はあんな風に嗤われることもなかった。
桜一人に重責をかけずにすんだ。
キョウをもっとうまく守れた。
曉山の家に引き取られなかったらあの人が死ぬことだってなかったのに。
「うーん。やっぱり最悪じゃない?そいつ公衆の面前で引き回した後死刑にでもしないと割に合わないよ。」
「ノエルくん。國的にもそうしたいのは山々なんだがもう死んでる。」
「はあー。そうだった。悪運の強いことで。」
「まあ、つまり君がそれほどの力を有していると神月茨は知っていた。そして自身の何らかの目的の為にその力を封印し結果無理に施した反動の事故で死んだ。……國としては無許可の神性封印に二名の拉致監禁。そして暴走事故発生前の三人への集団での暴行。汚染事変の際に拉致しにいったとするとその日に事変が起きると知っていた可能性も高いし、禁術使用の疑いさえある。まあ死刑が妥当だろうね。」
言外に君は悪くないのだとそう言われていた。
それでもやっぱり私は私がしたことを忘れてはならない。
結局父を、使用人を殺したのは私なのだから。
剣は光となって分散し腕の中から消えた。
「私はそれでも人を殺してしまったことに変わりはありません……。どうか罰を。」
「君は赦されたいのかい?」
心の底を見据えるように真朱の瞳が光る。
「罰を受けてもしたことは消えません。……それでもこのまま生きていくのはあまりにも都合がいいのではないかって……。」
「さくちゃん、なにいってるの?あの男が全部悪いのに……!」
「分かった。君が罰を受けなければ前に進めぬというのなら罰を下そう。」
膝に置いた手が震えている。
罰を望んだのは自分だというのに怯えていることに嫌気がさした。
震える身体を嗜めるように瞳を強く瞑った。
「君にはいずれ神月家当主候補として名乗りあげてもらう。神力をもつ神月家の素質をもつものとしてね。そしてその為にある調査を罰として命じる。」
「調査……?」
「青葉キョウくんが保護された日に調査隊がいたとノエルくんに報告されてね。だがあの日湾岸付近に調査隊を派遣はしていない。……調査隊を騙るものと調査を妨害するものがいる。その者を捕縛し連行してほしい。」
確かにキョウを見つけたあの日不可解なことが多い。
調査隊を名乗った集団は春の一族の特徴を持っていたこと。
それらを燃やした人形の式。それに燃やされたものも式神だった。
なぜ調査隊を騙るのか。
それが罰になるかは分からなかったけれどキョウを追っている者を知ることができる。
「承知しました。」
「ひとつ、いっておこう。罰を受けたなら前を見なさい。そこに囚われたままでは誰かを背負うことなど出来ないからね。」
「はい。……努力致します。」
「じゃあ、それまで引き続き身柄を保護してくれ。ノエル・アウトクラトルくん。」
「もちろん。じゃあね。」
手を振りさっと出ていった皇さん(アウトクラトルさん?)の分も帝に深く礼をし退室した。
帰りの車の中で帝からいただいた指摘を思い返す。
前を見る……。
人を殺した私が前を見て生きていいのだろうか?
だけどキョウは生きていてほしいと言っている。
私に生きていてほしいと願ってくれた人の為になること……。
どうすればいいのか、何もまだ分からない。
だから、まずは罰として命じられた調査をやり遂げよう。
そして、考えよう。
自分が何をしたいのか、どうするべきなのか。




