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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第四章

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第六十九話 異世界の科学者と、決意と。

俺たちが科学研究所を出ると、皆建物の前に集まっていた。

俺がイエナを抱き抱えていても、冷やかす者はいない。

先ほど意識が繋がって、全部伝わっているからだろう。


仲間たちの中に、ハルカゼたちの姿が見えた。

俺が目を合わせると、悪戯っぽく笑い返す。


アレクシオだけ、複雑な表情をしている。

「ちぇっ。もう少し早く生まれてれば、俺だって」

文句を言ってはいるが——本心ではなさそうだ。

「悪いな。ちゃんと、幸せにするよ」

俺はそうアクレシオにそう言った。

俺の腕の中で、イエナが顔を赤らめる。


今だに信じられない。

この子と、両想いだったなんて。


しかし、浮かれている場合ではない。

俺たちには——まだやらなきゃいけないことがある。


「テリーズさん。イエナをお願いします。

俺たちは、研究所の中を調べてきます。

タツオ、ミサキ、行こう」


俺はイエナをテリーズに託すと、研究所の中に戻った。


「リーヴァは……どうなったんだ?」

俺はミサキに聞いた。


「精神世界に行ったままだべ。今は、拘束してある。

——後で元に戻せるかやってみるべ」


「……そうだな。ノクスが死んだ以上、オルディアの全容を知っているのはリーヴァしかいないからな」


話をしながら、上下に続く階段に到着する。

「……下から魔獣の気配がするべ。そっちにいくべか?」


「いや、ノクスの部屋を調べたい。——上だ」


俺たちは階段を昇った。

先ほどノクスを飲み込んだ場所。

部屋の中は、黒の式の影響で散らかっている。


ノクスの座っていた机、あるいは壁に並ぶ書物の中には、重要なものがあるかもしれない。


タツオは、机の上にあったノートを見る。

「これは……多分黒の式の研究ノートだ。

調べれば、発動ロジックが分かるかもしれない」


俺は、机を開けようとする。

が、鍵がかかっている。

何か大事なものがあるのかもしれない。


「タツオ、この鍵だけ焼き切れるか?」


「……随分細かい仕事だね。まぁ、やってみようか」


タツオは、火力を凝縮し、指先に火の線を作り出す。

鍵が焼き切れ、机を開いた。

中には——古びたノートが、大量に入っていた。


タツオがそれをめくる。

「これ……科学のノートだ。色んな技術について、図解してある。書いたのは——ノクスじゃなさそうだ」


俺も一緒にそれを見る。

図解と技術について説明が、この世界の文字で書いてある。


「調べてみるべ」

ミサキはそう言うと、紫の式を手から出し、ノートにかざした。

——そんなこともできるのか。

いわゆるサイコメトリーみたいなものか。


「このノートを書いたのは——コウイチ=ヤマセ。

あんたらと一緒で、別の世界から来た男だ」


「……そうか、ミサキはもう、俺たちの正体を知っているのか」

俺が言うと、ミサキは頷いた。

「意識が繋がった時に——全部分かったべ。

多分、皆も分かってる」


いつか話さなければ、と思っていたが、こういう形で伝わるとはな。

……まぁ、説明の手間が省けたとも言える。


しかし、やはりそうだったか。

異世界から来た男、コウイチ=ヤマセ。

ノクスの師匠だった男が、この世界に科学をもたらした。

そして——科学の過度な発展に、自ら警鐘を鳴らした。


ん……?


「タツオ、お前の苗字って……」


「うん。ヤマセだよ。おんなじだね。

……血縁者だったりして」


俺は、別のノート開いてみる。

「……おい、タツオ。これ」


「懐かしい。日本語だね」


見慣れた文字が、そこには並んでいた。

コウイチ=ヤマセの手記だった。


何故それが日本語で書かれていたか——それは、読んでいく中で分かった。


「この世界にたどり着いて十年が経った。

滅びかけた世界から抜け出そうと試みたタイムトラベルには成功したが、まるでこの世界はファンタジーだ。

想像していたものとはかけ離れているが、戦争のないこの世界は素晴らしい。

生活力を上げるための科学技術は再現しているが、過度な発展は禁物だ。

ノクスは最近、更なる発展を望む。

向上心が、悪い方向に向いているようだ。

なんとしてもこれ以上の科学は、伝えないようにしなければ。

それにしても、ノクス。

テオロッドからやって来たという少年が、ここまで立派な科学者になるとは思わなかった。

前の世界では子どものいなかった私だが、まるで本当の息子のように感じている。

最近は、リーヴァという少女も出入りしている。

ノクスは自身と重ねているのかもしれない。

他人に興味がなさそうにしていたノクスが心を開いているようで、親代わりとしては嬉しい。

来月はカムイは出張だ。

二人にも何かお土産を買ってこよう」


それは——コウイチの本心だった。

ノクスへの思い。

そしてなぜ科学の発展を止めたのか。

その答えが書いてあった。


「……この後シャインに会って、そしてその後。

コウイチは……殺されたんだな」

俺は呟いた。


「……やったのは、リーヴァ。

洗脳し、精神を破壊した後——研究所ごと燃やした。

お土産を嬉しそうにもらった後……なんの躊躇いもなく。

リーヴァの記憶で……見たべ」

ミサキが言った。

苦しそうに胸をおさえる。


「……滅びかけた世界、って書いてあるね。

もしかすると……僕たちのいた時代より、ずっと未来の人なのかもね」

タツオが考察する。


確かめようにも、その本人はもういない。


俺たちはそこにあったノートや書類をまとめて持ち帰ることにした。


「大分疲れたな。——帰ろう。テオロッドに。

ノクスの野望は止められたが……まだ本物の黒の式の脅威はなくなっていない」

俺は言った。


「そうだね。発動条件の解析もするけど……世界が循環しないようにしなきゃね」

タツオが答える。


俺は頷く。


「最後にノクスと約束しちゃったしな。

式術と、科学の融合する世界。

——俺たちはそれを作らなきゃいけない」


俺はさっきまでノクスがいたその場所で、

決意を固めた。

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