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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第四章

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シャイン・アンド・アルマ

「さて、どう戦うか」

シャインは、眼前の異形を目の前に構える。


「ノクス様のところに行かせるわけに行かないわね」

そういって動き出したリーヴァの前に、ミサキが立ち塞がる。


「あんたの相手は——私だって言ったべ」


「あら。あなた程度の式で——私に勝てるつもり?」

二人は——睨み合う。


「ノエシスは——効かないようね。

いいわ。ここはカールに任せて——相手をしてあげる。

すぐに終わらせて、ノクス様のところへ向かえばいい。

ついてらっしゃい」

リーヴァはそう言って、ユイトたちが入っていった扉とは別の場所に向かった。

ミサキは、それについていく。


ミサキは、アルマと目が合う。

アルマは、小さく頷く。

ここは任せたという意味と——任せておけという意味に感じた。

ミサキは、セブンスロッドでの試練を乗り越えた。

——負けるはずがない。

アルマは意識をカールに集中させる。


リーヴァがいなくなると、親を見失った子どものように、

カールは叫び始めた。

「フォージリアのカールと言えば……カムイでも知られる誇り高き名軍人だったがな。……話は通じそうにないな」

シャインが呟く。


「もし私たちもオルディアについていたら。

……ああなっていたかもしれない。

オルディアは——止めなければいけない」

アルマは言った。


「それはスクエアの代表としてか?

それとも、お前の意見か?」


「私の意見だ」


「同感だ。俺もカムイとしてではなく、そう思う。

——どうだ?スクエアはいい場所か?」

シャインは言った。


アルマは頷く。

「戦いが終わったら、来ればいい。

ユイトが温泉を作ってくれるらしい」


「——それは最高の報酬だな。

では、始めるか」


カールだった怪物は、四足歩行で一気に距離を縮めてくる。


「グレイシアウォール!」

シャインが叫ぶと、氷の壁が眼前に立ち上がる。

カールはそれにぶつかり、咆哮を上げる。

——理性を失っている。


「なんだその名前。かっこいい」

アルマが呟く。


「そうだろ?ユイト命名だ」

シャインが答えると——

カールはその氷の壁に向かって火を吐いた。

「っ……!それはマズイな」


壁は溶け、間からカールが突っ込んでくる。

刹那——アルマが瞬間移動で近づき、ナイフで斬りつける。

肩口を斬られたカールが叫びを上げる。

「い、た、い……」

傷を抑え、叫んでいる。


——やはり、怪物とはいえ、元は人間だ。

それも、オルディアに賛同したとは言え——オルディアの被害者だ。殺しては、いけない。

シャインは少し躊躇いを感じる。


「油断、するな。私が引きつける。さっさと凍らせろ」


「助かるよ。アルマ——だったな。

少し時間を稼いでくれ」


シャインは、目を閉じる。

式力を集中させて——技を放つ。

「アイスバインド!」


カールの足元に、氷が走る。

カールの四肢が凍りつき、地面に結ばれる。


「アルマ!この後に大技を撃つ!そこから離れろ!」


シャインは、式力を集中させる。

青い髪が、白く変わっていく。

辺りの気温が——下がり始める。


アブソリュート・ゼロ。


全てを凍らせる——シャインの奥義だ。


今まさに放たれようとしたその瞬間、

カールの背中が盛り上がり——羽根が生えた。


そして、叫びを上げると氷の拘束を破り——

空へ舞った。


「予想外だな……」

呟くシャインの元に、空から火が降ってくる。

——カールの口から放たれた火球。


「避けろ、シャイン!」

アルマは、咄嗟にシャインの元へ瞬間移動し、シャインを突き飛ばす。

アルマの背中を、火球がかすめる。

燃え移る炎。

アルマは地面を転がり、それを消す。


——が、上半身の衣服は燃え、肌が顕になる。


「アルマ!大丈夫か!」

シャインは、近寄る。


「痛みはある。だが——止まる理由にならない」


「しかし……服が」


アルマは、上半身裸の状態になる。

背中の火傷はオートヒールの力で回復していく。


「気にしている場合じゃない。早く、凍らせろ」

アルマは隠す素振りもなく、空を舞うカールを見つめる。


「……すまない。俺の油断だ。

責任は、取る。

ただ、ああ逃げ回られては——捕捉が難しい」


「分かった。地上に誘導する。その隙に力を溜めろ」


アルマはそういうと、分身を作り出す。

白と、黒。

カールはそこに向かって炎を吐くが——炎は分身を素通りする。

物理攻撃は効かない。


アルマはズボンを破り胸を隠すように縛ると、

再び素早く動き始める。


背中には——生々しい火傷がまだ残っている。


「あんな女は——カムイにはいないな」

シャインは聞こえないように呟くと、再び式力を集中し始める。


カールが地上に降りる瞬間。

そこを狙わなければいけない。

間違ってアルマを凍らせるわけにはいかない。


呼吸を合わせなければ。


アルマと二体の分身は、巧みに動きを重ねる。

カールは焦りを見せ始め、少しずつ地上に近づいていく。


地上まで一メートルまで降りてきた瞬間。

アルマは跳んだ。

跳躍とともに、ナイフで翼を斬りつける。


カールは悲鳴を上げ、地面に堕ちる。


「シャイン!今だ!」

アルマは叫ぶと、その場を一気に離れ、シャインの横に戻った。

一瞬、二人の目が合う。

「アルマ、最高だ。決めさせてもらう」


シャインが溜めた式力を解放する。

地面に氷が走る。

空気が凍り——音が消える。

アルマは、その温度に、一瞬恐怖を覚える。


「アブソリュート・ゼロ!」


シャインが叫ぶと、絶対零度の式がカールを包み——

カールは氷の像に変わった。


辺りの空気は——まだ白い。

ダイヤモンドダストが降り注いでいる。


「〝不殺〟のシャインじゃなかったのか?」

アルマが言った。


「——普通の人間なら分からんが、恐らく生きているだろう。氷が溶ければ、な。

今のうちに拘束しよう」


シャインが言うと、アルマは腰からロープを取り出し、手際良くカールを縛り上げる。


「……器用なもんだな」


「灰忍衆も、〝殺さず〟が掟。捕縛は慣れている」

答えるアルマは、背中の傷が治りきっていない。

オートヒールの、限界なのだろうか。


「……傷、残ってしまったな」

シャインは、その背中を見つめながら言った。


「問題ない。元々、傷だらけの体。気にするな」


確かに、よく見れば背中以外にも古傷が見える。


——数々の戦いを潜り抜けてきた証なのだろう。

シャインはその背中を見ながら、少し考えた。


「——いや、さっきも言ったが、責任を取らせてくれ。

王としてではなく、一人の男として」

シャインは、覚悟を決めたように言った。


「責任を取る?どうするんだ?」


「男が取る責任と言えば、一つしかないだろう」


アルマは捕縛を終え、顔を上げる。

思い当たることが——ない。

首を傾げる。


「分からんやつだな。つまり——俺と結婚してくれ」

シャインは捕縛を終えたアルマに言った。


「……は?」


敵地オルディアの中心部で、アルマの間の抜けた返事が響いた。

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