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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第四章

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第六十七話 オルディアの罠と、新たな敵と。

「で、早速だけど。この後、どんな罠が待ち受けてるんだ?」

俺はエルデネに聞いた。


目の前には魔獣たちの亡骸が大量に転がっている。

テリーズ、アルマ、カイ、シャイン。


地上戦最強カルテットな気がする。

シャインは〝不殺〟を貫いていたようだが、

結局テリーズやカイがバタバタとなぎ倒していくので、

周りには魔獣の死臭が漂っている。


できるなら、早くノクスの元へたどり着きたい。


「そうだねえ。私も魔獣と一緒にテオロッドの相手をして来い、って言われただけだから、あまり知らないんだよね。信用がないんだね」

エルデネが答える。


そりゃそうだ。

こんなにコロコロ寝返るやつを、ノクスやリーヴァが信用するわけがない。


「あ、でも、科学研究所周辺は、迎撃用に戦闘地になってるよ。住民は南の方に転居してる。そこで、戦車団とかに襲われるかもね」


初めから、俺たちを迎撃する準備万端ということか。

それにしても。

また、戦車か。

正直、式術と相性が悪い。

まともに対抗できたのはアレクシオの雷だが……仮に対策をされているとすると、対抗手段が少ない。


「ほかには、何か分かるか?」

俺は聞いた。

今のうちに、事前情報を引き出しておきたい。


「あとは……神獣級の魔獣は準備してそうだね。

生物研究所あたりが慌ただしかった。

ちなみに、リーヴァがこっちの動きを探知しているから、こっちの状況は筒抜けだよ」


「お前は、霊峰ライゼルに何しに行ってたんだ?」

話をさえぎるように、アレクシオが聞いた。


確かに。

何か明確な目的がなければ、わざわざ険しい山を登るわけがない。


「あの時の坊やじゃん。あれはね。〝図書館〟で式術の秘密を探ってこい、っていうミッションだよ。私も興味あったから行ったけど。

まあ、」


「……一体、何が分かったんだ?」


「なーんにも。第三層に行っても、黒い石板に訳の分からない記号が書いてあっただけだったし。一応、全部書き写してノクスに渡したけど」


黒い石板。

そして——恐らく数式。

それが何を意味するものかは分からないが、ノクスは何かを手に入れている。


「……あの石板か。一体、ノクスは何が目的だったんだろうな」

アレクシオが呟く。


「なにか、式術について探っていたことは間違いないな。

……とにかく、ノクスの元へ向かおう」

俺は、魔獣たちの亡骸を見ながらそう言った。


もう、こんなこと——やめさせたい。



「……想像以上に準備万端だな」


オルディアの中心部に近づくと、俺は呟いた。

茂みに潜んで広場を見つめると、数百台からの戦車が並んでいる。


一斉射撃でもされれば……ひとたまりもない。


「交戦を避ける方法はないべか」

ミサキは何かを思案している。


「え?あんなの全部燃やしちゃえばいいじゃん」

エルデネが言った。


「いや、鉄の塊だぞ?燃えるわけないだろう」

俺が答える。


以前、タツオの火力でも受け付けなかったことを思い出す。


「燃えるよ。凝縮すれば。多分、彼もできるよ」

エルデネはそういってタツオを指さす。


「凝縮?」

タツオは首を傾げる。


「そう。この前みたいに拡散させるんじゃなくて、火力を融合させて合体させる。……もしかして、制御苦手?」


エルデネの問いに、俺とタツオは同時に頷いた。


「うーん。じゃあ、ここは私がやっておくよ。私が注意を引きつければ、

隙ができるでしょ。その間に向かえばいい。

多分、仕切っているのはガクだと思うけど」

エルデネが言うと、カイが反応した。


「ガク……?ガクって言ったか?いや……まさか」

心当たりがあるのだろうか。

考え込んでいる。


「ユイト。俺たちもこっちで戦っていく。トニトルス・ゼロは有効って分かったからな。ブルーオーダー、サポートを頼む」

アレクシオが言った。


「なんでお前、リーダー気取りなんだよ」

ノエルがそう言って笑った。


「いいだろ。エルデネも加わって……チーム・ライゼルだ」

アレクシオが腰に手を当てながら言った。


前にここへ来たときは震えて失神した少年が。

随分頼もしくなったものだ。


男子三日会わざらば、ってやつだな。


「私は、ここでは役に立たなそうだが……保護者役をやろう」

テリーズが俺に向かって言った。


「助かります。連携指揮として、テリーズさん以上に頼れる人はいません。

あと、エルデネが変な動きを見せたら斬ってください」

俺はエルデネを見ながら言った。


「えー、ひどい。信用ないなあ」

口を膨らませる。


逆にどうやって信用すればいいんだ……。


いずれにしても、布陣は決まった。


戦車討伐組と、科学研究所へ向かう組。

二手に分かれることになる。


すると、カイが言った。

「俺も、ここに残る。その——ガクと呼ばれるやつが、気になっている」


「……知り合いか?」

俺は聞いた。


「分からん。——だが、俺とナギの幼馴染の名前は、ガクだ。どこにでもいる名前じゃない」


それを、確かめたいということか。

俺は、頷いた。


「とはいえ、敵陣は戦車で固められているべ。どうするべ」

ミサキが言った。


「チーム・ライゼルが先手を打っている間に——下から行くってのはどうだ?」

俺は、地面を指さしながら言った。




俺たちは、オルディアの地下を進んだ。

茶の式術で、目の前の土を掘り進んでいく。


地上では、アレクシオたちが戦車隊を引き付けている。


戦車による砲弾の地響きと、式術による応戦。

地面の下まで振動が響いてくる。


「ミサキ、方向は合っているか?」

俺は式術を連発しながら聞いた。

この距離を掘り進めるのは、温泉を掘った時以来だ。

さすがに疲れる。


「問題ないべ。……このあたり上がれば、研究所の周辺だと思う。リーヴァの気を感じる」


俺は、穴を斜めに掘り進める。

やがて、地上から太陽が見える。


どうやら、夜が明けたようだ。


地上に出ると、目の前に無機質な建物が見えた。


ここが科学研究所か。

俺たちがそれを見上げていると、

——背後から声がした。

振り向くより先に、嫌な気配が肌にまとわりつく。


「二手に分かれたのね。ようこそ、オルディアへ」


ロッキングチェアに腰掛け、カップでお茶を飲んでいる。

場にそぐわない空気感。異質な雰囲気。

——リーヴァ・バレンタイン。


「皆、目を合わせるな」

俺は、白の式術を発動させる。

式術の絶対防御。


「おもてなしはいかがだったかしら?

少し物足りなかったかしら。

——とっておきを用意してあるわよ」


リーヴァはそういうと、パチン、と指を鳴らした


すると、一つの影が現れる。


全身が鱗に包まれ——角の生えた、人間。


異形。クリーチャー。

どの表現が正しいのか分からない。


ただ、これまで見てきたどの魔獣とも明らかに違う。


あれは——人間だ。


「なんだ……そいつは」

俺はリーヴァに向かって言った。


「カールよ。ドラゴンの遺伝子を注入したの。

上手くいってよかったわ」


カール。フォージリアの司令官。

テオロッドでのあの戦いの後……体を改造されたということか。


テクノロジーの禁忌。

人を遺伝子操作する。

——神獣とのハイブリッドを生み出したということか。


「人間の知能を持ちながら、ドラゴンの力を持つ最強の戦士。ノクス様のアイデアよ。素晴らしいでしょう?

カールもきっと、喜んでいるわ」


明らかに体が大きくなっている。

二メートル以上はある。

——筋肉が肥大化している。

地に両足をつけた怪物が、無表情にこちらを見ている。


——その赤い目は、どこか悲しそうに見える。

かつて見た司令官の面影が、一瞬重なる。


「ユイト、あの女の相手は——私がするべ」

ミサキが、俺に言った。


「こいつの相手は、俺が相応しいだろう」

シャインが前に出る。


「私も、手伝う。ユイトたち、先に中へ行け」

アルマが言った。


——ここで更に戦力を分断することは、果たして正しいのだろうか。

だが、ミサキしかリーヴァの相手をできないことは事実だ。


そして、目の前に待ち構えるカールだった怪物の相手。

それは、〝不殺〟のシャインが相応しい。

オルディアによって改造されてしまったフォージリアの司令官は——殺しちゃいけない気がする。


——全員で当たるべきか、一瞬だけ迷う。

俺は、決意を固めた。


「……分かった。タツオ、イエナ。行こう」


今は——早くノクスの元へたどり着くべきだ。


俺は仲間を信じて、式術研究所の中へ飛び込んだ。


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