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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第四章

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第六十四話 恋愛作戦会議と、本気作戦会議と。

何か騒がしいと思って目が覚めると、

足の上に何かが乗っている感覚がする。

──柔らかい。

俺は、ゆっくり目を開けると──ミサキが乗っかっていた。


「起きるべ!ユイト!」


──ちょっと待て。確かに部屋にカギはかけていないが……

ベッドにいきなり侵入するのはルール違反じゃないのか。


ミサキは、俺に馬乗りのような形になりながら、

覆いかぶさっている。


──まずい。これ以上ミサキが動くと……当たってしまう。


ミサキが俺のすねあたりから、太ももにジャンプして移動する。

──やめろ。動くな。

ミサキの尻が——俺の足を刺激する。

俺の理性が危ない。


「やめい!起きてるわ!」

俺は身を起こし、ミサキを両手で押した。

「お前は俺の娘か!着替えてから居間にいくから、待ってなさい!」


ミサキは文句を言いながら部屋を出て言った。

ふう。危なかった……。

俺だって健全な男子高校生(元)だ。

反応はしてしまう。

——いや、既にしていた。

朝だからね、仕方ないね。うん。


着替えを終え、体が静まるのを待ってから俺は居間に向かった。


ミサキは腕を組んで座っている。

「遅いべ!」


「いや、なんの約束もしてないだろ」


「約束なんて、今すればいいべ」


……一体この人は何を言っているのか。

理不尽の極みである。


「……分かったよ。で、何の用だ?」


「決まっているべ。作戦会議だべ」


……出た。ミサキによる緊急招集と言えば、大体これだ。

俺は、頷いた。


「場所を移すか。それと、ミサキ」


「なんだべ」


「次から、勝手に部屋に入ってくるのはやめなさい。

君も年頃の女の子なんだから」



俺たちはまだタツオが爆睡しているであろう家を出て、

近所の公園に向かった。

テーブルとベンチがあり、座って話すにはちょうどいい。

近くの売店で、軽食を買う。

ちょっとしたピクニックだな。


「私は、覚悟を決めたべ」

サンドイッチをむさぼりながら、開口一番ミサキは言った。


「なんの覚悟だ」


「この戦いが終わったら、告白するべ」


……なんとまた。脈絡のない作戦だ。


「ミサキ、それは作戦と呼ばないのでは」


「……作戦は、残念ながらすべて失敗に終わったべ」


ガンガンいこうぜ、に始まり、

いろいろやろうぜ。の水着回大作戦。


確かに、タツオがダメージを受けた印象は一切なかった。


「……なんか申し訳ないな」

俺はサンドイッチを食べる手を止めて謝罪した。


「ユイトのせいじゃないべ。あの男が悪いべ。」


あの男。タツオ。

この会議はなぜか個人名を出さないことが暗黙の了解になっていた。


「あいつもなあ……いまだに掴めないからな。確かに、一度思い切り伝えてしまうのもいいのかもしれない」

俺が言うと、ミサキは頷いた。


「別に、一度失敗したら終わりってわけでもないことに気づいたべ。

何度でも言えばいいだけだ」


おお……すさまじい精神力。

零式の壁を越えて、一段とたくましくなった印象だ。

〝武器〟となった胸元も、さらに存在感を増したようだ。

……テーブルの上に乗っかっている。

朝の一件のせいで、つい目がいってしまう。

違うから。俺はイエナ一筋だから。


「そんなことより、ユイトのほうはどうなっているんだべ」

ミサキは俺に話を振った。

「私の見立てでは、状況は後退しているべ」


なん…だと…!?

一体どこにそんな予兆が感じられるというのか。


「なんでだよ。相変わらず仲良くやってるぞ」

俺が言うと、ミサキは深くため息をついた。


「ほんっとに、ポンコツだべな。いいか、水着大作戦の時は、

かなりいい感じだったべ。問題は、そのあと。

アルマが合流してからだ」


アルマ──。確かに、一度アルマの船酔いを気づかいすぎて、

イエナを怒らせたことがあった記憶が。


「あれ以降、一定の距離が生まれたまま──ククノチの森、アウレオの森と、

修行モードに入ってから──あの子はユイトのことを考えていないべ!」


ミサキは、俺に指をドーン、と指していった。


「う、うぐっ……」

なぜか、胸が痛んだような気がして、俺は胸を押さえた。


「──少し油断していたようだべな。付かず離れずがいいとか、

甘えたこと言ってると、気持ちなんて一瞬で離れていくべ。

緩急のある動きをしないと、盛り上がらないべよ!」


ミサキは熱弁する。

そして、言われてみれば──特に大した行動を起こしていない。

というか、旅の出来事が濃すぎて、恋愛モードに頭がなっていなかったことも要因だ。


「……いや、でもそっちも似たような状況じゃないか?」

俺は苦し紛れに言い返す。


ミサキは、立ち上がりテーブルを叩いた。


「だからこそ!覚悟を決めたんだべ!」


ううっ……強い。

凄まじい棚上げ力。

なんて強いんだ、ミサキさん。


つまり、今俺に求められているのは──


「……分かった。俺も旅が終わったら──気持ちを伝えるよ」

俺が立ち上がりそう言うと、ミサキは強く頷いた。

俺たちは立ったまま握手をした。


決戦の日が、近い。

だが、その前にオルディア──ノクスとの決着が先だ。


俺たちはその後たわいもない話をしていたが、

どうしても——オルディアとの戦いが頭にちらつく。


「ミサキ、もう一つの作戦会議してもいいか」

俺はもう一度座ると、言った。


「そうだべな。——まずオルディアとの決着をつけないと」

ミサキも同じ気持ちだったようだ。


「手始めに——現状の俺たちの戦力と適性を、可視化したい。

その上で、戦闘時の配置を決めたい」


オルディアがどう応じるかは分からないが──

戦闘になる可能性は高い。


現状の戦力を把握し、共通認識化しておくことは重要だ。


「まず──火力担当だ。

式術でいけば、タツオの破壊力がトップだろう」

俺は、持ってきた紙に書きながら話をする。

「──切り込みであり、切り札でもあるって感じだべな」


そう。一点突破だけに配置はしやすい。

が、火力が効かない相手──例えば機械などは、相性が悪い。


「同クラスにアレクシオ。雷の零式なら、戦車も無力化できる」


「生意気な子どもが、頼れる戦士になって帰ってきたべな」

うん。こういう見解も含めて、やはりミサキは話が分かる。


「あのシャイン=カムイはどうなんだべ?」


「さっきの二人と同等か、それ以上の式者だと思う。ただ一つだけ課題が」


「なんだべ」


「〝不殺〟のシャインだよ。通り名の通り、無益な殺生はしない。

戦争となると──それが必要になる場面もあるだろう」


「……まあ、皆、殺したくないのが本音だべ」


「誰と組むと相性がいいかは後で考えよう。

次に、物理担当。テリーズさんと、カイ。

二人とも剣術は相当のレベルだ。物理攻撃が通る敵なら、まず安心だろう」


「アルマはどうなんだべ?」


「どっちかっていうと陽動──攪乱に向いている気がするな。

集団戦での火力そのものは高くないが──個人戦なら相当頼りになる」


「イエナはもちろん回復担当だべな。──後は、ブルーオーダーの連中か」


「あいつらも、霊峰ライゼルで相当腕を上げている。

サポート要員としては、かなり頼りになるだろう。

特にアレクシオとの連携は抜群だ」


俺は、先日のフォージリア強襲での彼らの活躍を思い出した。


「王族は自陣固めとして、残るは、私とユイトだべな」


「ミサキは──本当にリーヴァと対峙するつもりか?」

俺が聞くと、ミサキは頷いた。


「あの女は──私が倒さなきゃいけない気がするべ。

ユラ様のためにも、私のためにも」


「……分かった。危険を承知で、頼む。

多分——ミサキしか戦える相手がいない」


人の精神に干渉し、操作し、破壊さえもできるという式術。

ノエシス──とリーヴァは言っていた。

今のミサキなら──あるいは。


「ミサキは、精神干渉の術を──覚えたのか?」

俺が聞くと、ミサキは小さく頷いた。


「紫の領での修行を経て──いろんな知識が流れ込んできた。

今の私なら、できるべ。

ただ、あれは──人を相手に使うべきものじゃない。

だからこそ──リーヴァを許せないべ」


ミサキが修行で何を見て、何を得たのか。

それは俺には分からない。

でも、ミサキがその術を悪用することはない。

そう確信できた。


「そうだな──そして、ハルカゼたちを──助けよう」


「アゲハは、私の数少ない友達だべ。必ず助ける」


たった数日共に過ごしただけの、トランジアの面々。

それでも──俺たちにとって、大切な仲間になった。

リーヴァの呪縛から解き放ち、また一緒にバカ騒ぎしたい。


「ところで──ユイトは、何をするんだべ」


ああ──。すっかり自分のことを忘れていた。


「俺は、全体を見て——足りないものを埋める役割と思っている。

ただ、ノクスとの話は──俺が直接したいと思っている」


「うん。それがいいべ。最後まで……リーダーとして頼むべ」


リーダー。

その響きで、式術学校の頃を思い出す。

タツオとミサキがどっちがリーダーか争っていたっけ。


なし崩し的にレオニス王からリーダーを拝命した俺だが──。


せっかく受けた仕事。

最後まで、やりきろう。


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