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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第四章

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第六十一話 帰宅と書簡と、来訪者と。

「けほっ……なんだべ、これ」

ミサキは、扉を開けるや否や咳き込んだ。


「……まあ、こうなるよな」


俺たちが家に帰ると、家の中は埃が舞っていた。

元の世界でも経験があるが──人がいない家は、驚くほどすぐ荒れる。


心のどこかで誰かが維持してくれていると期待していたが。

それはおこがましい話だったようだ。


「さて、僕は釣りにでも行ってくるよ」

しれっと逃げ出そうとするタツオの首根っこを摑まえる。


「逃げるな。今日は三人で大掃除だ」


俺たちは、手分けをして家の大掃除を行った。

といっても、もとより引っ越したばかり。

換気をして、床や壁を拭くだけだ。



タツオは役に立つ式が使えそうにないので、

お手製のモップを作らせた。

こういう小道具を作らせると、タツオは上手い。

あとは俺とミサキの青の式を活用し、三人で水拭きを行った。


数時間の掃除で、我が家はきれいに回復した。

俺は部屋で一息つきながら、サイレスに渡された書簡を読み始めた。


まずは、ガレオン。

あの拝金主義商人は、元気でやっているだろうか。


「ユイトの指示にあった穀物は、早速栽培を開始した。

これまで家畜の餌になっていたのが信じられないほど美味い。

マルカドール、世界の食糧事情は大きく変わるだろう。

そして、闘技場の方だが、魔獣を廃止してにも関わらず順調だ。

オルディア連邦を脱退した結果、

経済制裁の影響でオルディアからの観光客はいなくなった。

だが、これまで血を嫌っていた女性層の観客が増え始めた。

結果、前より動員は増えたくらいだ。


残念な報告としては、ヴァルドが卒業してしまったことだ。

これで、元Sランカーは誰もいなくなった。

が、また新たな闘士が生まれてくるだろう。

興行の相談もしたい。落ち着いたらまたマルカドールへ来い。

ここ一か月の利益の一割は額が額なので来た時に渡す。

合計で二千万ソルだ。待っているぞ」


うん。色々と情報が古いが、仕方ない。

約束通り、ガレオンはオルディア連邦を抜けてくれたようだ。

米も闘技場もうまくいっているようで良かった。


それに、利益の一割という約束もきっちり覚えているようだ。

少しでもお小遣いになればと思っていたが……

二千万ソルって。闘技場の卒業、二回分じゃねえか。

元の世界だと……一億七千万円くらい?

ってことは、ガレオンは一か月で十七億稼いだってことか?


とんでもない。

手前みそだが、アドバイスが確かにした。

元の世界の知識を使って。

だが、それを実行する力──やはり、ガレオンは商売の天才なんだろう。


次の書簡。ラグナ。

まったくそんな印象なんかなかったが、意外と筆まめなのか?

開いてみると、似合わないきれいな字で書かれていた。


「よう、ユイト。元気か。俺は字がうまくねえから、

フィオラに頼んで書いてもらっている」


そういうことか。道理で字がきれいなわけだ。


「あれから、観光地づくりは順調だ。みんな、生き生きと働いているぜ。

そば作りも上手になったし、温泉はかなりいい感じだ。

簡単には来れないと思うが、遊びにこい。

もしかしたら、お前らが来る頃には、家族が増えているかもしれないがな」


……ん?もしかして、フィオラ……ご懐妊か!


「アルヴァルドの爺さんは、新たな趣味を見つけて楽しんでる。

釣りに飽きたと思えば、今度は山だ。一人で山に登って、野営ばっかりしている。人に仕事を押し付けて、気楽なもんだ。

当分はくたばりそうにない」


要するに、キャンプが趣味になったっていうことか。

アルヴァルド元王も、呪縛から解かれてのびのびと生きているようだ。

よかった。


往復合わせても、たった数日しか過ごしていないが──

ブレイヴェンの皆も、忘れられない仲間になった。


続いて──シャイン。

マルカドールで別れてから、無事カムイに着いて……王になったということか?


「〝奇術師〟ユイト。マルカドールでは世話になった。

俺がカムイにつく直前、親父が倒れていた。

幸い今は回復したんだが、いかんせんいい歳だ。

王位の継承でもめている所に帰ってしまったもんで、

うっかり王になってしまった。

正直、面倒くさい。

だが、良い点もある。

それは、カムイは正式にテオロッドと同盟を結ぶ決定をしたことだ。

カムイに戻る旅の途中、様々な話を聞いた。やはり、オルディアのやり方には疑問を感じる。それに、どうせ手を組むなら、仲の良いやつのほうがいい。

もう少ししたら国も落ち着く。そうしたら、テオロッドに向かう。

俺たちも待っているだけでは駄目だと気づいた。

共にオルディアと戦おう。また新しい式の名前を考えてくれ。

〝不殺〟のシャイン」


短いながらも、シャインらしい文章だ。

そして──彼も、動いてくれていた。


俺が旅で出会った人たちが、テオロッドの──世界のために動いてくれている。

それが、何よりも嬉しい。

俺は、その書簡を丁寧にしまった。


──これは、俺がこの世界で生きた証だ。


この戦いが終わってどうなるかは分からない。

だが、いずれにしても──宝物にしよう。


書簡を棚にしまいながら、ふと気づく。


ん?シャインの書簡……


テオロッドに向かう、って書いてあったな。

いつ出したものなのか分からないが。


向かっているとすれば───


俺が考えていると、呼び鈴がなった。

扉を開けると、そこには。


「久しぶりだな、〝奇術師〟」


相変わらずの、美青年。

透き通る肌。百八十を超えるであろう、高身長。

グラデーションの、青と白の髪。


カムイ王となった、シャイン=カムイが立っていた。


訂正しよう。

どうやらパーティは十一人ではなく。

十二人になったようだ。


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