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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第三章

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エピソード・オブ・オルディア リーヴァの報告

「グライスはどうした」

リーヴァが部屋に入ると、ノクスは低い声でそう言った。


「申し訳ございません。洗脳が解け、敵に捕縛されました。

現在、セブンスロッドに捕らわれています」

リーヴァは、極力毅然とした報告をした。

その方が、ノクスの怒りが上がる。

結果──より罵倒される。


これから待ち受ける罵倒への期待で、リーヴァは胸が高鳴った。


「そうか。分かった。剣技しか能のない男だ。

式術者の間では、その程度だろう」


ノクスの反応は、予想に反するものだった。

リーヴァは、肩透かしを食らう。


「……グライスが所有している、グラディオの手記の場所は、不明のままです。

再び洗脳し、吐かせたほうがよいでしょうか」


ふざけるな、当たり前だろう。自分で考えられないのか。

リーヴァはそんな言葉を期待した。しかし。


「放っておいていい。世に出たとしても、王を殺した狂人の妄言と言えばいい。

──それより。問題は、青の領で蒸気戦車が返り討ちにあったことだ」


ノクスは、立ち上がり、ガクの元へ近寄った。

そして、ポケットに両手を入れたまま、体を前に折る。

ガクの耳元に、直接話しかける。


「もう、実装段階って言っていなかったか?

せっかくフォージリアに作らせたのに、なんの役にも立っていないじゃないか」


「はい。申し訳ございません」

ガクは、姿勢を変えずそう言った。


「ただ、今回の青の領侵攻でかなり課題を発見できました。

このあたり対策すれば、次回は期待できる見込みです」


「ほう。侵攻すら実験だったというわけか」

ノクスは小さく笑った。

「その姿勢は嫌いじゃない」


次の瞬間。

ガクの頭が机に叩きつけられた。


「謝罪をするときは頭を下げるんだ?分かったか」


それを見て、リーヴァは全身が震えた。

恐怖ではない──嫉妬だ。


ガク。一介の研究者の分際で、ノクス様に罵倒どころか……

体罰を頂くなんて。


「所詮、剣術は式術には勝てん。それは分かっていた。

だが。その式術を科学で潰すことに意味がある。分かるか」


「……はい。科学は、世界を救います」

頭を机に打ち付けられたまま、ガクは言った。


「違うな。科学だけが、世界を救うのだ。

——お前も、私も。科学に救われた身だ。

次は必ず成功させろ」


ノクスはそういうと、自分の机に戻った。

椅子に座ると、リーヴァを一瞥して言った。


「リーヴァ、貴様の仕事はなんだ」


「はい。──フォージリアに行き、カール=クラウス司令官を洗脳して参ります」

不意に話を振られ──思わず正答を言ってしまった。

なじられる好機だったというのに。


ノクスは笑った。

「さすがだな。文脈判断ができる。生産指示はガクからさせる。

お前は秘密裏にカールを操ってこい。

カールがいなくても、フォージリアの生産能力は変わらん」


リーヴァは頷いた。

まずい。このままでは、何もないまま終わってしまう。

とっさに、愚鈍な質問を思いついた。


「ノクス様。トランジアの幹部たち──ハルカゼ=ドモンたちの洗脳はもう解いてもよろしいでしょうか。これ以上続けると……廃人になる可能性があります。

そうすると、トランジア側への説明が難しくなりますが」


すると、ノクスは立ち上がった。

荒い足音をたて、リーヴァの元へやってくる。


──やった。成功だ。


平手が、リーヴァの頬を叩いた。

リーヴァは、それを集中して受け止めた。


ああ。なんて幸せな瞬間なんだ。


「続行に決まっている。廃人になっても構わん。一度でも逆らったやつは……

徹底的に追い込め」


知っている。

ノクスであれば、そう言うだろう。

知っているからこそ、この罵倒がいただけるのだ。

笑みが溢れてしまいそうになるのを堪える。

早く、ここを出よう。

頬の痛みが消えないうちに。

リーヴァは、喜びをかみしめながらフォージリアへ向かった。

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