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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第三章

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エピソード・オブ・オルディア 侵攻の前談

「申し訳ござません。シャイン=カムイは、マルカドールの闘技場を離れカムイに戻ったようです」


オルディア首都にある科学研究所。

椅子に座って頬杖をつくノクス=ルミナスに向かって、

リーヴァは言った。


「カムイはもうどうでもいい。盾突く気力などないだろう。

そんなことより、マルカドールはなぜシャインを解放した?」


ノクスは不機嫌そうに言った。

物事が自分の思い通りに進むことが前提のこの男にとって、

想定外の出来事はすべてストレスの要因となる。


「そのマルカドールですが……議長のガレオンより要望が入っています。

魔獣研究提携の打ち切りと、連邦からの脱退、および献金の停止についてです」


リーヴァが淡々と伝えると、ノクスは舌打ちをした。


「商人あがりが……至急、マルカドールへの渡航禁止を国民に通達しろ。

オルディアからの観光客がいなくなれば、そのうち泣きつくだろう」


「かしこまりました。続いてテオロッドの動きですが、報告してもよろしいですか?」


いらだちを隠さず、ノクスは言った。


「続けろ」


「テオロッドはオウシュウと同盟を結びました。カムイが仮にテオロッドについたとすれば、東側は完全にテオロッド側になります。今後の我々の動きはいかがいたしましょうか」


「リーヴァ、お前の考えは?」


ノクスは、じろり、とリーヴァを睨みつける。


「はい。早急に西側を固めるべきかと考えます。幸い、情報戦では我々が優位に立っています。今のうちにスクエア、セブンスロッドを篭絡し、東西の構図に持っていくべきです。そうすれば、中央を握る我々が覇権を握るのも、時間の問題でしょう」


「なあ、リーヴァ」


「はい」


ノクスは、そういうと、机を大きく叩いた。


「分かっているならなぜ聞いた!さっさと動け、無能が!」


「申し訳ございません、ノクス様」


リーヴァは頭を下げる。すると、その髪を掴まれ、

無理やり顔を上げられる。


「なんでお前みたいな無能を俺が使っているか分かるか?

言うことを聞くだけが奴隷の仕事と思うなよ?」


頬を張られる。その衝撃で、かけていた眼鏡が飛んでいく。

リーヴァは地面に倒れこんだ。


「ガク!あの兵器は使えるのか」

部屋にいた研究者に、ノクスは言った。


「はい。ノクス様。蒸気での作動も安定しました。

もう実用段階に入っています」

ガク、と呼ばれた男が答える。


「ほう。なかなかやるじゃないか。おい、グライス」

もう一人。部屋にいた、仮面の男を呼ぶ。


「お前が率いて——セブンスロッドへ行け。武力制圧でも構わん。

セブンスロッドを落としてこい。姉妹国が落ちれば、テオロッドも士気が下がるだろう」


「……かしこまりました」

仮面の男は、小さく低い声で答え部屋を出ていった。



「リーヴァ、いつまでそうしている。さっさと仕事をしろ。

──次は成果を出せ」


ノクスの激高がおさまる。

倒れたままだったリーヴァはゆっくりと立ち上がり、

眼鏡を拾うと部屋を出た。


扉を閉じると、リーヴァは頬を触った。

ノクス様が、私を叩いてくれた。


リーヴァの心は、高揚していた。


今日も、ノクス様に罵っていただいた。

そして、顔まで張ってもらった。


喜びのあまり、リーヴァは震えた。


ノクスのために命を捧げると決めてから、

グラディオの利用、アークネイヴァーの転覆まで、

ノクスのために動いてきた。


そして、今は外交のトップとしてノクスの右腕に収まっている。


リーヴァは、指示された通りスクエアを落とすことにした。

そのためには、スクエアの隣国であるトランジアを利用するのが良いだろう。


あのハルカゼという男や、アゲハという参謀は底が知れないが、

オルディアの科学力は信頼を得ている。


震災の爪痕が残る国には、その予防策を提示してやればいい。

捏造した地震予測の成果を伝えるだけで、簡単に信じた。

所詮、田舎の土木屋だ。


利用するにはちょうどいい。


リーヴァは、一瞬の素の表情を隠し、

研究所の前で待機していた部下に指示を出した。

屈強な男たちが十人ほど並んでいる。


「このままトランジアに行くわ。馬車の準備をしてちょうだい」


部下は敬礼をして、馬車の準備を始めた。

リーヴァはそれに乗り込むと、眼鏡を直した。


西を固めたら、次はロッド世界全土をオルディアのものにする。

そして、ノクス様を世界の覇者にした後は……


自身がその夫人となる。


リーヴァが描いた物語は、着々と進んでいた。


霊峰ライゼルに派遣したエルデネも、無事目的のものを持ち帰った。


これで、すべてが完成する。


実現まで、あと少しだ。


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