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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第三章

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第五十二話 臨時会議と、セブンスロッドのこれからと。

カイは、燃え残ったシオンの遺体を紫の領へ届けたい、とナギに言った。

ナギは、それに同意した。

「次の領主候補も探さなければいけない。俺が行こう」


ミサキの傷は、イエナの超回復で塞がった。

傷もきれいになくなったようだ。

しかし──心の傷は大きかったようだ。

ミサキはしばらく黙っていた。


戦闘から逃げ出したツバサは、起き上がったアルマが発見し、捕縛した。

部屋に連れて帰り、尋問が始まる。


ミサキはイエナが部屋に連れて帰った。

アルマには、マレクへ伝令の仕事を頼んである。


ヘリオス城の応接間に集まったのは、

俺とタツオ。それにナギ、カイだった。


ツバサは縄で縛られたまま、座らされている。


「さて、どこから話してもらおうか」

カイは、刀を肩に持ったままツバサの周りをまわっている。


「ぼ、僕を殺すんですか?」


「殺さねえよ。だから素直に話せ。お前の問題じゃねえ。

これは、セブンスロッド全体の問題だ」


「し、シオンさんは?シオンさんに聞かないと」


「あ?シオンは死んだよ。立派に戦ってな。逃げ出したお前とは違う」

カイは、ツバサの口を片手で掴む。


「ひ、ひいい!やっぱり殺されるんだ!」

ツバサは泣き叫んだ。


「カイ、お前のやり方は乱暴すぎる。代われ。

ツバサ。お前が裏切った理由と、オルディアについて教えてほしい。

シオンが死んだと知れば、オルディアは方針を変えるだろう。

それまでに情報を把握しておかないと、国も、お前自身も危ない」

ナギが言った。


「ぼ、僕自身も?なんで?」


「シオンを傀儡にしてセブンスロッドを動かすつもりだったんだろうが、もはやその策略がばれたのであれば、まず命が狙われるのは、情報を知っているものからだ。お前のような」


「い、いやだ!なんでも話すから、命は守ってくれ!」


「こいつが領主なんて、黄の領のやつらはどうかしているぜ」

カイが言った。


「まず、知っていることをすべて話せ。シオンの裏切りはいつからだ?」

ナギが座り、ツバサの肩に手を置き目線を合わせた。


「ぼ、僕がシオンさんに誘われたのは、ひと月前の七領会議の後だ。

それまでのことは何も知らない」


「シオンの誘い文句はなんだ?」


「科学と式を融合して、セブンスロッドは——世界で最先端の国を目指すと。

そのためには、反対票を入れる領主をうまく操らなければいけない、と」


ツバサの話に嘘はなさそうだ。


「そんな絵空事のために、国の誇りを売ったのか?」


「実際、青の領は壊滅的だったじゃないか!こんなバラバラな国が、オルディアに勝てるわけない!」

ツバサは言った。


ナギは、それを聞くと寂しそうな顔をした。

「バラバラか。それは、その通りだな。七領がそれぞれ支え合い、一つの国を守るということに、限界が来ているのかもしれないな」


「それは違いますよ、ナギさん」

俺は言った。


「テオロッドは、それを実現できています。東の国々は、相互に信頼し合っている。

ある意味セブンスロッドは、世界の縮図だ。支え合いと自治を否定しまえば……

同時にオルディアの独裁を肯定することにある」


自分でも不思議なくらい、熱を帯びた。

いつの間にか、テオロッドの考えや思想が染みついている。


「確かにそうだな。結局、私たち次第ということだな。

ヘリオス=テオロッドは、この国で世界のあるべき姿を実現したかったのかもしれない」


「難しいことは分からねえが、これからどうするんだ?

オルディアが攻めてくるなら、準備した方がいいんじゃねえのか?」

カイがナギに言った。


「まずは会議を前倒しで行う。明日、残った領主たちを招集しよう」

ナギは、そう言って立ち上がった。


「それなら、俺に提案があります。聞いてもらえますか。

そして、今後の議会のあり方も、いいやり方があります」

俺は、この議会制を成り立たせるアイデアを考えていた。

うまく行くかは分からないが。




翌日。

残った領主たちに加え、俺たち全員も応接室に集まった。


ナギは、領主たちにシオンとツバサの裏切りを報告した。

同時に俺たちの正体も明らかにした。


「彼らがいなければ、この国は分断されたまま、オルディア連邦に加入するところだった。改めて礼を伝えたい」

ナギは言った。


「しかし、まさか二人も裏切るとはな。これからどうするんだ?」

ガンジが呟いた。


「加入賛成派は、俺とシンベエだけか。多数決なら反対で可決だな」

シゲルが言った。


「いや、その決め方はもうやめたい。

我々は、いつの間にか……話し合いから逃げていた気がする。

賛成派の意見もちゃんと聞いた上で、一つの結論を出したい」

ナギが言った。

「まず、シゲルの理由は、オルディアとの戦略差、だったな」


シゲルは頷く。

「今や、オルディア連邦は中央をすべて握っている。

オルディア単体ならまだしも、彼らが手を組んで攻めてくれば勝ち目はないだろう」


「その点については、状況は変わっています」

俺は言った。


「俺たちは連邦のマルカドールに行き、議長のガレオンと対話をしてきました。

彼らは連邦から脱却を検討しています。それに、西のトランジアも、オルディアに完全に与しているわけではありません。ここに来る前、スクエアで鉢合わせたときに話をしました」


俺は、昨夜に聞きまわった加入賛成派の理由を把握していた。

残る賛成派は二人、シゲルとシンベエ。

この二人の賛成理由は──覆せる自信があった。


「なんと。じゃあ、実質、連邦はオルディアとフォージリアということか?」

シゲルは言った。


「フォージリアについては分かりませんが、それも強固な関係ではない気がします。

オルディアが連邦を実態以上に大きく見せていることは間違いありません。

実態は、緩やかな経済同盟といったところです。」


「そうなのか。……テオロッド側は、どうなっているんだ?」


「東側、特にブレイヴェン、オウシュウは同盟に参加してくれました。カムイも、シャイン=カムイが中心となって協力してくれるはずです。

あくまで、テオロッドがこれまで培った信頼が元になっていますが、東側の信頼関係は厚いと思います」


「もし、連邦に加入するとそれらが敵に回る、ということか……得策ではないな」


「損得ではなく、理念で考えるべきだと思います。独裁国家をよしとするか、このセブンスロッドやテオロッドが守ってきた、各国自治の価値観を大切にするか。

本当に民にとっての幸せを考えるべきです」


俺がそう言うと、シゲルは小さく頷いて黙り込んだ。

よし、手応えありだ。


「……次は、シンベエか。確か、経済的利益を重視していたな」

ナギが場を回す。


「ほっほ。そうですな。わしは儲かればなんでもいいのです。

科学が生み出す利益は絶大です。あの技術が輸入できれば、国も潤うでしょうぞ」


「確かに儲かるかもしれませんが、それは本当に産業になるんでしょうか?」

俺はシンベエに言った。


「産業?」


「はい。他国の技術ではなく、セブンスロッドの強みを生かしたビジネスをする方が、将来性が高いと思います。ブレイヴェンをご存じですか?」


「聞いたことはありますぞ。山の国でしたな」


俺は頷く。

「ブレイヴェンは、これまで自国の魅力に気が付かずに、奴隷貿易で国益を得ていました。しかし、調べてみると豊富な食材があることが分かりました。それに、新たな観光資源も発見しました。今、ブレイヴェンは国を挙げて自国産業を作り直しています。恐らく、近くその評判はここにも届くでしょう。

マルカドールも、同じです。これまでの闘技場から、新たな形へ変革しています。

商人のあなたなら、セブンスロッドならではの産業を知っているのではないですか?」


「それはそうですな。七国全て、特徴があって面白いですぞ」


「残念ながら、俺たちはその強みを知りません。今あるものを、正しく伝え流通させる。それだけで、十分国益は出るはずです。そしてそれは、あなたにしかできない仕事です。オルディアの技術を輸入するのはあなたでなくでもできる。

それに、一番利益を得るのは──オルディアです」


俺がそう言うと、シンベエは少し考え込んだ。

むむ、と言っている。


──こっちも行けたか?

念のため、ダメ押しをしよう。


「こうやって、話し合うことが一番大事です。多数決は、すぐに決められるという強みもあると同時に、採用されなかった側の意見が無視されるという弱みがあります。

なので、多数決をやめましょう」

俺は大胆な提案をした。


「三百年続くやり方を変えるってのか?」

ガンジが言った。


「はい。時代の変化に合わせることも大切です。

提案したいのは、時間を決めた合意形成方式と、調停機関の設立です」


「何言ってるか全然わからねえよ」

カイが口をはさむ。


「カイさんには、昨日説明したでしょ……

分かりやすく言うと、まず徹底的に話し合います。理想はここで一つの結論が出ること。前提は、結論は一つしか出せない、ということです。

参加者の意識はおのずと尊重と理解に向かいます。

残念ながら、現状の方式では個人の主張の延長にしかならない」


「……確かに意見はまとまらないな」

シゲルが呟いた。


「そもそも、議会制国家の結論はまとまっているべきです。

現状は、多数派が少数派を抑え込んでいるだけです。

票の取り合いでは政治的な動きや、今回のような裏切りも再び起こるかもしれません」


「ほっほ。いつも少数派の私は助かりますな」

シンベエが言った。


「その、調停機関ってのはなんだ?」

ガンジが聞いた


「どうしても一つの結論が出ないときの予防線です。最終的な意思決定のみを行う機関として、七領の上位に組織を作ります」


「それは……事実上の国家首領ではないか」

シゲルが立ち上がった。


「いえ。機能面だけです。権限はありません。決議の際にも参加しません。

あくまで、会議の決定が優先されます。決まらなかった時のみ、その権利が発動します」


「なるほど。会議で決まればその意思が尊重されるのか」


「はい。なので、権利が発動しないことが理想です。皆さんなら、話し合いで解決できるでしょう。そして、その調停機関はナギさんが適任だと思っています」


俺の提案に対し、反論が出ることを覚悟していた。

だが。予想に反して、反対意見はなかった。


「まあ、ナギが適任だろう」

シゲルが言った。


「ほっほ。ナギさんなら安心ですな」

シンベエが続く。


「むしろ、残ったやつらで会議ができるか心配だな」

ガンジがそう言って笑った。


よし。うまく説明できた。


「俺は反対だ!」

カイが立ち上がり、机を叩いた。


おい。

話をややこしくするな。


「えーと、カイさん。なぜ反対なんでしょう」


「決まっているだろう!なんかナギが偉くなった気がするからだ!」


……本当に昨日戦っていたあの人か?

アホすぎる。


「あの、だから、別に偉いとかじゃなくて。どうしても決まらないときの話で」


「別に俺でもいいだろう!」

カイが叫んだ。


「いや、無理だろ」


声がユニゾンする。

領主たち、満場一致で否認がされた。


素晴らしい。


場がしん、となる。


「……えー、では意見もまとまったところで、ナギさん、一言」

俺はカイを無視して話を進めた。


「えー。コホン。というわけで、調停機関とやらの担当になった。

——青の領主は後任を探さなければいけない。

合わせて黄の領主、紫の領主も当てを探してこようと思う。任せてもらっていいか?」


一同、頷く。

こちらも満場一致で可決。


「これからは皆の相談役的な役割を果たせればいいと思っている。

各国自治をしていくなかで、連携したほうがいい部分もあるだろう。

それぞれの強みを生かしながら、皆でセブンスロッドを強くしていきたい。

この国の未来は——俺たちで決めよう」


そう語るナギは、もはや実質この国の首領のように見えた。

ハルカゼのように勢いで引っ張るのではなく、誠実さと真摯さで人々の人望を集める。

これも、一つの領主の在り方だ。


「連邦加入はなくなったが、さしあたりオルディアの脅威は続いている。

オルディアは、恐らくここヘリオス城を狙ってくるだろう。

領主のみんなはそれぞれ自国へ帰り、防衛の準備をしておいてほしい。

万が一ここが落ちたら、次は各国が標的になる」

ナギは言った。


応接間に、緊張感が走る。


「俺がいる限り、そんなことは心配いらん!」

カイが叫んだ。


「いや、お前も無の領に帰れよ」

ナギが言った。


「帰らない!少なくとも、一回オルディア軍と戦ってからだ!」


……こいつ、戦いたいだけじゃないか?

誰かに似ているな。


領主たちは、それぞれの領へ帰っていた。

俺は。ナギから感謝を述べられた。


「ありがとう、ユイト。君たちのおかげで、セブンスロッドは何とかやっていけそうだ。テオロッドとセブンスロッドの関係は、俺たちで守っていこう」


俺たちは握手をした。

その日は、セブンスロッドに宿泊することになった。


「一旦、ミッションは終わった感じ?」

応接間を出ると、タツオが言った。


「まあ、そうだな。セブンスロッドの状態は改善できたし。

ただ、オルディアからの侵攻が心配だ。

カイが滞在するなら平気かもしれないが……。

ミサキの状態も心配だし、少し滞在して様子を見よう」

俺は答えた。


部屋に戻ると、女性陣が集まって話をしていた。


「遅いべ!ユイト、紫の領に行くべ!」

ミサキが立ち上がった。


「……どうしてそうなるんだよ。元気になったのか?」

俺は答えた。


「私が元気じゃなかったことなんかないべ!

ちょっと考えてただけだべ!」


「その結論が、紫の領か?」


「そうだべ!私が知らない紫の式が存在するなんて許さねえべ。

聞こうにもシオンってやつは死んじゃったし、もう直接紫の領にいくしかねえべ!」


いつものミサキだった。

話の内容はおいといて、元気になったことは良かった。


「うん。分かった。お父さん疲れているから、またあとでね」


「……駄々をこねる娘扱いするな!」

ミサキが切れのよい突っ込みを入れる。


「まあ、落ち着いてくれ。現状、オルディアから攻め込まれる可能性が高いのは——ここ、ヘリオス城だ。この地の安全が確認できてからでもいいだろ?」


「もしかしたら、他の領にも私たちが知らない式術があるかもしれない。

テオロッドは、黄の式が中心だから。私も緑の領は行ってみたい」

イエナが続いた。


おいおい。紫に緑に行っていたら完全にセブンスロッド旅行じゃないか。


「それも、終わってから決めよう。今日は休ませてくれ。

久しぶりに生徒会長役で疲れた」


俺はそういうと、ベッドに寝転がった。


「生徒会長ってなんだべ」

ミサキが言ったが、俺はそれを聴きながら眠りについた。


こっちの世界に来てから、結構頑張ってないか俺。

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