表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/87

第五十話 役割分担と、内通者探しと。

「見てもらったの通りだ。……あんな感じだ。まとまる気配がない」


会議が終わり、領主たちが応接の間を去ると、

ナギは俺たちに向かって言った。


「結局、決議は持ち越しになった。各領持ち帰り検討し、三日後にもう一度会議を行う予定だ。

領主には、しばらくこの城に滞在してもらう」



「いやあ……なかなかでしたね。特にあの無の領主のカイって人、ものすごい暴論だったような」

俺が言うと、ナギはため息をついた。


「すまない。あの男、カイは……私の幼馴染だ。同じ村で育ったんだが……二十年前と何も変わっていない」


「え?そうなんですか?……なんか、ナギさんと全然性格違う気がしますが」


そんな話をしていると、外からドカドカと足音が聞こえてくる。

扉が大きな音を立てて開いた。


「おい!ナギ!なんで俺の意見を通さないんだよ!」


噂をすればなんとやら。カイだ。


「通すために動いてるのが分からないのか。バカ」


「確かに俺はバカだが、そんなこと言わなくてもいいだろ!」


「……もういい。お前はそのまま突っ走れ。

問題は、会議の内容がオルディア側に漏れている件だ。

恐らく、内通者がいる。

カイ、心当たりないか?その辺の嗅覚するどいだろ」


「そうだな。ガンジ、シオンは反対派だからな!賛成派のツバサ、シゲル、シンベエが怪しい!」


「……誰でも分かりそうな読みだな。いいか?現時点での賛成、反対は参考情報だ。

次の会議でどっちに入れるかはまだ分からない。

いうなれば、ガンジ、シオンも容疑者だ。もちろん、お前も」


「だったらナギも怪しいだろ!ただの青の領主のくせに、領主の代表みたいな顔して回しやがって!シオンあたりムカついてるぞ」


「……じゃあ、お前がやってくれよ。とにかく、怪しい動きを見つけたら教えてくれ」


「おう!ところで、こいつら、ただの書記じゃないだろ?何者だ?」


カイは俺たちの方を見て言った。


「なんでそう思う」


「ビシバシ強いやつの空気がしたぜ!おい、勝負しようぜ!」

そう言うと俺の方に近づいてきた。


ナギはカイの首を掴むと、言った。

「やめろ。その方たちは、テオロッドからの特使だ。状況を理解してもらうために、会議に参加してもらった。そのよく当たる勘を、内通者探しに使ってくれ」


カイは俺に興味津々なようだったが、ナギに諌められ部屋を出ていった。

嵐のような男だ。


「随分、雑な人ですね……」

俺は呟いた。


「ああ見えて、一流の剣士なんだ。

あいつがいなかったら、俺は二回死んでいる」


ほう。命の恩人、ということか。

見かけによらないものだ。

剣士、といえばテリーズを思い出す。

ポニーテールの騎兵団長は、アレクシオと一緒に元気にしているだろうか。


それに、今日青の領に現れた、仮面の剣士。

微かに感じた既視感。

一体何者なのだろうか。


「君たちにも、内通者探しに協力してほしいんだが……頼めるかい?」


「もちろん。今後のセブンスロッドの方向性に関わりますからね」


「ありがとう。それぞれの領主の部屋割りを渡しておくよ」


そういうとナギは城の見取り図を渡した。


城に滞在する領主たちの中から内通者を探す。

ミサキの探知と、アルマの灰の式が役に立ちそうだ。


俺たちは、ナギに滞在用の部屋を二部屋借りると、作戦会議に向かった。



「思っていたよりバラバラだったな」

俺は、イエナに言った。


「うん。正直、議会制の意味を疑うくらいに。

まともなのはナギさんと、シオンって人くらいな気がする」


「同意だ。よく各領が成り立っているよ。さて、内通者探しだが……

役割分担を考えた」

俺が二人を見ると、ミサキは腕を回している。


「任せとけ!私が探知役だべ」


「ご名答。まずは動きの怪しいやつを特定しよう。

通信役は、イエナだな。中継役として各持ち場へ通信してくれ。

俺とタツオは部屋を周って、探りを入れてくる」


俺は説明をする。

すると、アルマは自分を指さしながら言った。


「私は」


「アルマは、この作戦の肝だ。対象が特定出来次第、捕縛をしてもらう」


「分かった。灰忍衆の時、たくさんやったから大丈夫」


……確かに。俺も捕縛されかけたしな。

そのあたりは安心だろう。


「内通者がいれば、会議が終わった今日中に何かしら動くだろう。

頼むぞ、ミサキ」


夜のヘリオス城は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。


灯りは最低限に落とされ、長い廊下の先は闇に溶けている。


ユイトとタツオは、その静寂の中を並んで歩いていた。


「……まずは、どこから行く?」


小声で問いかけると、タツオは気のない様子で肩をすくめた。


「順番でいいんじゃない?」


「風情がないな。普通、誰が怪しい、とかそういう会話だろ、ここは」


「ミステリーはあまり読まないからね。僕は反対派がむしろ怪しいと思うよ。

赤のガンジか、紫のシオン」

「なんで内通者なのに反対するんだ?」


「カモフラージュでしょ。最後の決議で裏切れば、全部覆る。

三対四っていうこの状況をあえて作り出しているんだよ」

なんやかんや言って、推理を楽しんでいる。


「まずは、ここからか」


俺たちは最も近い扉の前で足を止めた。


最初に訪れたのは、茶の領主シンベエ=ナガミネの部屋だった。

ノックをすると、間を置かずに扉が開く。


「ほっほ、なんですか。昼間の書記の方ですか」

柔らかな笑みを浮かべた男。

室内には酒の匂いと、積み上げられた書類の山。


「少し、書類で補足をしたくて。お話をよろしいですか?」


ユイトが切り出すと、シンベエは鷹揚に頷いた。


「構いませんぞ」


部屋に通され、向かい合う。


「オルディア連邦加入について、どうお考えですか?」


問いに対し、シンベエは一拍も置かずに答えた。

「簡単な話です。儲かるか、儲からんか。それだけです」


迷いのない声音だった。


思想がマルカドールのガレオンに似ている。

「連邦入りは儲かる、と」


「ええ。技術は金を生みますからな」


そこで、ほんのわずかに声色が変わる。


「ただ……戦争は商売の邪魔ですな。平和が一番」


その一言が、妙に現実味を帯びていた。


「つまり、平和を維持し、金を儲けるためには連邦入りが一番よいと?」


「いかにも。何か異論ありますかえ?」


シンベエは扇子を開いた。

ある意味、主張はシンプルだ。

信念はない。国家より金、というタイプだ。

判断はしやすい。


部屋を出ると、タツオと話す。

「どう思う?」

「金を積まれれば裏切ります、って言ってるみたいなもんだったね」

「そうだな。マルカドールを思い出すよ……」

俺は、胡散臭いたガレオン=ルクレールの丸顔を思い出した。

シンベエ、△と言ったところか。


次に訪れたのは、緑の領主シゲル=サツマの部屋だった。

ノックをし、昼間の書記だと伝えると、「入れ」

と声が聞こえた。扉を開けると、男は椅子に座り、酒を飲んでいる。

「会議の内容に問題でもあったか?」


低く、重い声。


「いえ。少し補足をしたくて。できればお話を」


「……いいだろう」


室内は簡素だった。無駄な装飾は一切ない。


「オルディアについて、どう見てますか」


ユイトの問いに、シゲルは短く答えた。

「我々では、勝てん。正面から戦えば、必ず負ける」


その言葉には、確信があった。


「なぜ、そう思うのですか?」


「俺は、アークネイヴァーに行ったことがある。

見たこともない機械が、そこら中にあった。

生活の基準が、我々とははるかに違った。

まるで未来の世界だ。あんな国に勝てるわけがない」

「だから、連邦入りを?」


「それも一つの選択だ。国への想いはある。


だが、無駄な戦いで民を殺すことはしたくない」

現実主義者だ。


それだけに、揺るぎがないように感じる。


「意外とまともな人だったね」

タツオが言った。

「そうだな。論拠がしっかりしている。苦渋の決断、って感じだったな」


三人目。赤の領主、ガンジ=レッカ。

カイと一緒に、反対を主張していた男だ。

「なぜ、連邦入りに反対するのですか?」


「そりゃあ、カイと一緒だよ。単純に言えば、気に食わねえ。科学が偉い、オルディアが偉い、っていう姿勢がな。

屈服するくらいなら、全面的に戦った方がいい。

他の領主はびびってやがるんだ。

俺たち赤の式者にかかれば、余裕だってのによ」


その話を聞きながら、俺はタツオをちらっと見る。

昼間同様、俺たちはフードを被っていた。


——もしガンジがタツオの髪色を見たら、腰を抜かすだろう。

ガンジの頭よりはるかに鮮やかな赤が、赤の零式を示しているんだから。


「ああいう人って、割と最初に死ぬキャラだよね」

タツオがため息をついた。

「そうだな。長くは持たなそうだな。

——しかも多分、赤の四式くらいだろ?

正直、あれじゃオルディアには勝てない」


感情優先型タイプ。

反対することが格好いい、的なパターンだろう。


四人目は、黄の領主。ツバサ=ヒナタの部屋。

扉を叩くと、すぐに柔らかな声が返ってきた。


「どうぞ」

部屋の中は明るく、整えられている。

「夜分失礼します」


「いえ」

穏やかなやり取りの後、ユイトは本題に入った。


「連邦入りに賛成する理由はなんでしょうか」


「発展、です」

即答だった。目に、強い意志を感じる。

「科学は人を豊かにします」

理想を信じている声だった。


「科学が支配する可能性は?」


「それは、使う側の問題です。式術も一緒です」


曇りのない答え。

だが、その純粋さが、逆に危うくも感じられる。



俺たちは礼を言って部屋を出る。

「うーん。科学信奉者か?若干、ノクスの色を感じたが」

俺はタツオに言った。

「そう?理想論をかざしてるだけじゃないかな。

多分、何も考えていないよ」

タツオが思い切り毒づく。

なんだ?タツオの苦手なタイプなのか?

いつになく語気が荒い。


最後に訪れたは、紫の領主シオン=キサラギの部屋だった。

扉を叩くと、扉越しに用件を聞かれた。

書記用の追加情報と伝えると、返事が返ってきた。

「……分かった。入れ」

短い一言。

室内は異様なほど整っていた。

無駄が一切ない。

「こんな時間まで大変だな」


「すいません。少し話を」


シオンはしばらく俺たちを見つめ、静かに言った。

「……君たち、書記ではないな」


「どうしてそう思うんですか?」


「空気が違う」

鋭い観察眼だった。


俺は軽く肩をすくめ、質問には答えず、本題に入る。


「オルディアについて、どう思いますか」


「合理的な国だな」

迷いのない答え。

「だが、支配欲が強すぎる」


会議と同じ意見だった。

「連邦に入れば、いずれ主権は失われるだろう」


「では、反対で?」


「現時点ではな——状況が変われば、話は別だ」

その一言に、わずかな引っかかりが残る。


「変わる可能性がある?」


「状況次第だ。適切な判断をするのが領主の仕事だ」

声に揺らぎはない。



部屋を出た後、二人は再び静かな廊下を歩いた。


「さて、これで全員か。一応、カイのところも行くか?」

俺は言った。


「いや、あの様子じゃ内通者だったらナギにすぐバレるでしょ。ユイトは誰が怪しいと思うの?」


「うーん……全員あり得る」


「そうだね。金、恐怖、理想、合理。全部動機になる」


どれも裏切りの理由になり得る。

俺は小さく息を吐いた。


「……絞れないな」


「ただ」

タツオが、わずかに視線を横に流す。

「一人だけ、姿勢が不明瞭だね」


「……シオンか」


「うん。回答も綺麗すぎる」


「一番まともに見えるけどな」



その時。

頭の中に声が響く。

エーテルリンク。通信だ。


『ユイト、動きがあったべ』

ミサキの声だ。

『紫の領主が、動いたべ。部屋を出た』


ユイトは顔を上げた。


「……当たりか」

隣で、タツオが小さく呟く。


「いこう」


二人は同時に足を速めた。

静寂だった夜が、音を立てて崩れ始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ