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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第三章

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第四十五話 作戦会議と、ハルカゼとの対話と。

「今、現状多分俺たちはかなり分が悪い」

その夜。第二戦までを終えた俺たちは、部屋で作戦会議を行っていた。まず現状の認識を揃えたかった。


「なんで?一勝一敗でしょ」

俺の発言に対し、タツオが言った。


「お前、本当計算以外は読めないんだな……」

俺は若干呆れて言った。


「トランジアは、自国の得意分野を出した上で、

テオロッドの危険性を提示したべ。

中立の観察者と言ってはいるものの、

確実にスクエア側の心証は傾いているはずだべ。

──ハルカゼの立ち回りも上手だけど、多分裏で参謀で動いているのはアゲハだべ」


ミサキが言った。

さすがである。

我がチームのムードメーカーであり、頭脳。


「俺も、ミサキの見解とまったく一緒だ。

つまり、第三戦で相当な巻き返しをしなきゃならない」

俺は言った。


「現状決まっているものは、灰忍衆による演舞と、民の食材持ち寄りによる宴って言ってたよね。祝祭とはいえど、お祭りにしては寂しい気がするね」

イエナが言った。


「そうだな。俺たちならでは、を考えたい。それぞれが考えるお祭りを出し合おう」


いわゆる、ブレストだ。

トランジアの出方は現状想像がつかない。


「僕はお祭りに行ったことないな」

元引きこもり男が話す。


安心しろ。お前にはあまり期待していない。


「オウシュウでは、雪で色々作ったりするべ。

かまくらとか、雪だるまとか。あと、雪合戦もやるべ。

今回はあまり参考にならないべなぁ」

ミサキが言った。

雪国らしいお祭りだ。


「テオロッドではどうなんだ?」

イエナに聞いた。


「テオロッドは、結構皆で作る、って感じかな。

お祭りに来た人が参加して、皆で盛り上げる。

アウレオ=テオロッドがかなり陽気な人だったと伝えられていて、

祝祭の時は皆で大騒ぎするのが慣習。

王族も貴族も関係なし」

イエナは祭りを思い出すようにしながら答えた。


「うん。それがテオロッドらしいかもな。

参加型のお祭り。その方向でいこう。

この勝負は、結局〝どんな未来を示すか〟の勝負になっている。

テオロッドらしさが伝えられないと意味がない」


なんとなく方針が見えてきた。


「私はテオロッドの人たち好きだべ。気さくだし、皆のノリがいい」

ミサキも同意した。


「皆タメ口で怒らないのがいいよね。合理的」

タツオが言った。


……いや、それはたまたま許してもらっているだけじゃないのか?


「方向性が決まったら、スクエアの人々が楽しんでもらえる内容を考えよう」


夜の会議は色々なアイデアが飛び交った。

タツオが何度も居眠りしているのを起こしたが、

途中であきらめた。

あまり役に立ちそうもない。

こいつは当日働かせよう。


会議も大分白熱してきたので、一旦休憩を入れることにした。

俺は頭を冷やそうと寺院の外に出た。


クアドリス峰の山頂の夜は肌寒く、静かだ。

本当にここに何千人も集まるんだろうか。


両手で体を包んでいると、少し先に焚き火が見えた。

暖をとらせてもらおうと近づくと、

焚き火の主は、ハルカゼだった。


「おう。テオロッドの、ユイトやったな。

どうや、そっちは?いい作戦できたか?」


煙草を吸いながら、気さくに話しかけてくる。


「絶賛議論中だ。そっちは?こんなところでさぼってていいのか?」

俺は横に座り、言った。

聞きたいこともある。ちょうどいい。


「ええやん。議論できるのはいいチームや。

うちは役割分担が明確やからな。

頭脳はアゲハ。力はサブ」


「あんたは──ハルカゼは何を担当しているんだ?」


「見れば分かるやろ。──人たらしや。

ユイトも、俺のこと好きになってきたやろ?」

そういうとハルカゼは笑った。


否定できない。俺はこの男の魅力を感じ始めている。


「……なんかでこぼこのチームに見えるけど、ちゃんと分担できているんだな」


「せや。難しいことはアゲハに考えてもらったらええ。

俺はうまく立ち回るだけや。それで、気が付いたら首領になってた」


「……いつから一緒なんだ?」


「もう五年くらいやな。アゲハはまだ十五歳くらいやったな。

俺は三十歳やった。俺はまだ土木の職人をやっとったわ。

ひょんなことでアゲハと仕事をしてから、気が付いたらこんな地位になっとったわ。サブは昔っからの弟分やけどな。いつの間にか身長抜かれて、あんな大男になっとったわ」


三十歳と十五歳。

普通にしていたら出会うはずのない年齢差だ。

きっと、何か物語があるのだろう。


「トランジアは、なんでオルディア連邦に入った?」

俺は、直球をぶつけてみることにした。

イエナの影響を受けているのかもしれない。

彼女はいつも直球だ。

しかし、ハルカゼ相手には回りくどくないほうがいい気がした。


「直球やな。前も言った通りや。科学が作る未来が、生活を豊かにすると感じた。それだけや」


「ノクスに誘われたのか?」


「いや、ノクス長官は、オルディアから出てこない。

トランジアに来たのは、リーヴァっちゅう部下の女と、エルデネっていう式者や」


意外と、なんでも話してくれる。

これも、外交術のうちなのか?


「……ハルカゼは、式術者だろ?なんで科学の味方をするんだ?」


「それ聞くかあ。長くなるで?」


「大丈夫だ。興味がある」


「おっ、やっぱりユイトはもう俺に夢中やな」


「まあ、そういうことでも構わないよ。教えてくれ」


「五年前の震災や。

俺とアゲハが出会ったきっかけでもある。

あの時感じたんや。自然の前で、式力の無力さを。

目の前で多くの人が波に飲み込まれた。

アゲハがおらんかったら、もっと死んでたやろな。

科学が発展すれば、それを未然に防げるって話や」


震災。

この超未来の日本でも、地震大国であることは変わっていないようだ。

しかし地震予知など、元の世界でもできていなかったはずだ。

あくまで予測レベル。

それをできるとオルディアは言っているのか。

──おそらく、連邦入りを打診するための詭弁だろう。


「アゲハはその話に懐疑的やったけどな。式力は、生まれつき持っているやつとそうでないやつがおる。やけど、科学技術の恩恵は誰もが平等に享受できる。それが決め手やった」


「……科学の発展がもたらす危険性もあるけどな。警鐘を鳴らしたのは、シャインだけかもしれないが」


「シャイン?シャイン=カムイか?あんさん、知り合いか。

アークネイヴァーに喧嘩売った王子で有名やで。科学が嫌いなんか?」


「科学が発展すると、世界はそれを使って争いを始める。そしてたどり着くのは、世界の破滅。それを予言した科学者がいたんだ。

他ならぬ、アークネイヴァーに」


「なんやそれ。戦争が始まるってことかいな?それやったら、式術も一緒やん。あんさんところのタツオっちゅう赤髪、ありゃあもう兵器やで」


「式術は人の意志で制御できる。科学は、人の意志を超えてくる。そこに違いがあるような気がする。

──というか、戦争はすでに始まっているんじゃないのか?」


俺は言った。会話にズレを感じる。

テオロッドとオルディアは既に戦争状態にある認識だった。

しかし、ハルカゼはその認識がなさそうだ。


「戦争にならないように、俺らは動いてるんやで。テオロッド含む東側が科学発展を止めるためにオルディアをつぶそうとしている、それを阻止するために西側と連携を深める。それが俺たちの今の指名や。トランジアは西側の入り口やからな」


「なるほど……これが情報操作か。テオロッドは、科学発展を止めようとはしていない。ただ、オルディアによる世界の独裁を止めたいと思っているだけだ」


「なんやて。全然話がちゃうな。あのリーヴァって女、嘘ついとったんか」


「まあ、どちらが嘘かは自分で確かめてくれ。とにかく、テオロッドは戦争なんてしたくない。むしろ、各国の自治を大事にして、世界を平和に維持したいだけだ。三百年間、そうだったんだろ?」


「……せやな。トランジアがテオロッドにどうこう言われた歴史は聞いたことがないわ。まあどっちでもええわ。どのみちオルディアの属国になるつもりはあらへん。祭りでテオロッドっちゅう国を見してもらうわ」


そう言うと、ハルカゼは立ち上がった。


「そろそろ戻らんとアゲハに絞られるわ。

じゃあな、ユイト。おもろかったわ。また祭りで会おうや」


思わぬところで、思わぬ話ができた。

しかし、大きな収穫だ。


オルディア連邦はやはり一枚岩ではない。

そして、裏でやはり情報操作によって世界を操ろうとしている。

このまま野放しにしておけば、テオロッドは世界の悪にされ、

世界はオルディアの意のままに動かされてしまう。


俺は、立ち上がり寺院に戻った。


まずは祭り対決。

俺たちらしさ、テオロッドらしさを、世界に見せつけてやろう。


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