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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第三章

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第四十三話 来訪者と、三番勝負と。

原理の間での修行を終え、寺院へ戻ると、

仲間が待っていた。


「おかえりだべ。ユイト、顔色悪いべ」

ミサキが言う。


「……やっぱり、大変だった?」

イエナが続いた。


「……死ぬかと思った」

俺はそのまま座り込んだ。

体が鉛のように重い。


アルマは平然としている。

「明日もやるぞ」


「……はい、アルマ師匠」

俺が呻いていると寺院に相応しくない大きな足音が響いてきた。


ドカドカドカドカ。


全員の視線がそちらに向く。

アルマは警戒の姿勢をとる。


「……なんだ?」

俺がつぶやくと、次の瞬間。

寺院の扉が、勢いよく開いた。


「すんまへーん!」


明るい声が響く。


「スクエアの長さん、いてます?」


入ってきたのは、細身の男。

長い外套を羽織り、どこか商人のような雰囲気だ。


その後ろに、二人の男女が続いている。


一人は、金髪の女。髪には色鮮やかな髪留めがたくさん付いている。複数のピアス。

そして、顔には派手な化粧。

元の世界で見覚えがある。

——ギャルだ。それも、ガッツリ目の。


もう一人は、無言の大男だった。

二メートル近くはありそうな気がする。

肩幅が異様に広く、背中には大きな箱のような荷物を背負っている。


三人は遠慮なくこちら側まで歩いてきた。


アルマが一歩前に出る。


「……誰だ」


男はそこで足を止め、にこっと笑った。


「いやぁ失礼。突然押しかけてもうて」

軽く頭を下げる。


「トランジアの代表やらしてもろてます。

ハルカゼ=ドモン言います」


そう言うと、後ろの二人を親指で示した。

「こっちはアゲハ」


女が軽く会釈する。

「こんちわー」

見た目通りの話し方。


「で、こっちがサブ」

紹介された大男は、無言のまま一歩前に出た。

床板が、ミシッと鳴る。


サブは何も言わず、ただ、俺たち全員をゆっくり見回した。

その視線だけで、背筋がぞくりとした。


トランジア——オルディア連邦が、直接やってきた。

目的は察しがつく。連邦入りの催促だ。


「まぁ、こんな三人でやってますんで、よろしく頼んます」


そこに、音を聞きつけたゼラドがやってくる。


「おっ、見るからな偉そうな雰囲気。

あんた、ここの長でっか?」

ハルカゼは、ゼラドに近づく。


ゼラドは静かに三人を見つめた。


「……トランジアか。連邦の使者か?

連邦入りは断ったはずだが」


ハルカゼは笑った。


「いやいや。まずはご挨拶ってことで。

そんな邪険にせえへんといてください。な、兄ちゃん」

そう言って、俺の方を見た。

「……おっ。珍しい髪してんなぁ、兄ちゃん」


横でアゲハも続く。

「それ地毛?染めてるー?いいじゃーん」


……想像していたノリと違う。


ハルカゼはくるっとゼラドの方へ向き直る。

「長さん」


「ゼラドだ」

ゼラドが名乗る。


「失礼、ゼラドはん。なんで連邦入りせえへんの?

これから世界を動かすのは、オルディアの科学やで?

これから面白いことになるで。スクエアもいつまでも鎖国しとらんと一緒に世界を面白くしようや」


ゼラドは、小さくため息をつく。


「スクエアは、観測者だ。世界の行先を見守るが、世界を面白くするという思想はない」


「いけずやなぁ。どうしても、スクエアは、連邦に入らへん。そういうことやな?」


ゼラドは頷きもしない。


「スクエアが中立を崩すことはない。ここにいる、テオロッドにつくこともない」


——しれっと正体明かさないでくれよ。


即座にハルカゼが反応する。


「あんたら、テオロッドか。遠路はるばるご苦労やな。

スクエア味方にしとこ、いうわけや。

じゃあ、俺らで勝負して、勝った方にスクエアがつくってのはどうや?」

ハルカゼがゼラドの顔を見る。


「勝敗を決めたければ、勝手に決めるがいい。

スクエアの立ち位置は変わらん」


……それだけ?

責任を放棄しているようにも聞こえるが……

ある意味一貫した姿勢だ。



ハルカゼの口角が上がる。

「ほな、決まりやな。テオロッドの兄ちゃん、勝負して決めようや」


——こいつ、話聞いてないだろ。

俺は内心で突っ込む。


「話聞いてたか?勝負に勝っても、スクエアの姿勢は変わらないんだぞ」

俺はハルカゼに言った。


ゼラドは否定も肯定もしない。

ただ、見ている。

なんか言えよ、仙人。


ハルカゼは続ける。

「中立を崩さへんけど、観測者やろ?

世界の流れを観る。

なら、勝負してどっちが流れか示したらええ」


勝手に理屈を組み立てていく。

まるで政治家だ。

物語を作るのが上手い。


俺の脳内で警鐘が鳴る。

こいつは、言質を取るんじゃない。

空気を作るタイプだ


ハルカゼがこちらを向く。

「テオロッドはん。三番勝負でどうや」

完全にペースを握られている。


「いいですよ。受けましょう」

俺の代わりに、イエナが答えた。


「……イエナ!?」

俺は驚く。


「このままでは、ここに来た目的を果たせない。

せっかくわざわざオルディア連邦が出向いてくれたんなら、相手の力量を見ておくのは大事でしょ」

小声で俺に言う。


確かに。

数々のミッションをこなしてきた特使ならではの判断だ。


「三本勝負の内容は?」

イエナはハルカゼに向かって言う。


「せやな。それぞれ一つずつ決めようや。

あと一つはゼラドはん、決めてや」


「その必要を感じない」

ゼラドは固辞する。

しかし、ハルカゼはペースを崩さない。


「そりゃないで、観測者さん。

どっちかに有利な勝負になったら、正しい流れも見極められんやろ。公平な勝負を決められるのはスクエアだけや。

それくらいやってやぁ」


急に甘えた声を出す。


ゼラドは再びため息を深くつく。


「なら、スクエアの民にお前たちの作る世界を示すがいい。

三日後、祝祭がある。そこで何か出し物でもすればいい。

お前らが作りたい世界の流れを観測してやろう」


ハルカゼの目が光る。

「祭り!ええやん。祭りは大好きや。

ほな、あとはそれぞれ勝負の内容決めようや。

今日はもう遅いさかい、明日勝負内容持ち寄ろうや。

ゼラドはん、どっか泊まれへん?」


「……寺院の一室を提供する。そこで休むがいい。

アルマ、案内してやれ」


「ほんまでっか?いやー、助かりますわ。おおきに。

アゲハ、サブ、いくで。

ほな、テオロッドの皆さん、また明日!」


そう言ってハルカゼたちは去って行った。


「……嵐のようなやつらだべ」

ミサキが呟いた。


俺たちは部屋に帰って作戦会議をすることになった。


「なんか、想像していたのと違うな」

俺は言った。


オルディア連邦は、ノクスに信奉しているイメージだった。

もう少し科学者寄りというか、静かで、理知的な組織を想像していた。


思えば、マルカドールのガレオンも、当初のイメージとは全く違った。

オルディア連邦とは一体どんな組織なのか、実像がどんどん見えなくなってくる。


「うん。テオロッドに対しての敵対心もそこまで感じなかった。なんか、勝負を楽しんでいるような感じ」

イエナが答えた。


「で、こっちは何で勝負するの?」

タツオが言った。


「相手が何で仕掛けてくるか分からないからな。確実に勝てる勝負にした方がいいな……。

となると、やはり、一つしかないか」

俺はタツオの髪を指しながら言った。

「式力対決だ」


「……トランジア全員殺すってことだべか?」

ミサキが俺を怪訝な目で見る。


「いや、そんなことをしたら、スクエアから殺人国家と認定されてしまう。あくまで、式力で何かを破壊するとか、そういう対決だ。戦闘は避けたい」

俺は答えた。


「よかったべ。ユイトがいきなり好戦的になったのかと思ったべ。それなら、タツオの零式で負けはないべな」

ミサキは安心したように言った。


「でも、あのハルカゼという人……。式術者ですね」

イエナが呟いた。


「イエナ……敬語になってるぞ。式術者?

なんで分かった?」

俺は聞いた。


「あ、本当だ。あの人の髪、綺麗な茶色だった。

アゲハって子は、多分染めてるけど、ハルカゼって人は地毛っぽかった。

恐らく、茶の高位式者。テオロッドではあまり見ないけど……。

勝負は恐らく土が関係してくると思う。

——ユイトが戦うことになる気がする」


またも式術者。

式術はテオロッドの専売特許じゃないのか?


レインが言っていた赤の零式の女といい、オルディア連邦は一体どれだけカードを持っているんだろう。


「……俺、今式術使わない訓練してるんだけど」


「あくまで、可能性ね。とりあえず今日は休んで、体力戻しておいた方がいい」

イエナが言った。


まさかの来訪者に、まさかの展開。

ゼラドは関係ないと言っていたが、

〝流れ〟は確実に見られるだろう。

この三番勝負で世界の行末が変わってしまう。


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