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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第三章

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第三十七話 新たな旅と、宿場町トネアと。

俺たちは翌朝、馬車に乗って出発した。

まずは、カシラギ最東端、ナギラ岬を目指す。


カシラギはテオロッドの隣国でもあり、オルディアにも隣接している国だ。

同盟関係にあるとはいえ、国境近くを通る陸路は常に警戒が必要だ。


オルディアからの刺客や、人工魔獣が送り込まれる可能性もある。


ミサキの広域探知で、警戒の網を張る。

紫の二式となったツインテールは、常態的に式術を出すことも苦ではなくなっていた。


「ちょっと疲れてきたべ。イエナ、代わって」

二時間ほど馬車を走らせると、ミサキはそう言った。


イエナも紫が副式に変わるという、サイレス曰く〝前例のない〟

できごとが起き、探知式術を使えるようになっている。


俺とタツオは馬車の操縦を交代で行う。


自然とできた役割分担の中で、俺たちはナギラ岬への旅路を進む。


「カシラギは、かなり国土が広いので、数日はかかります。

途中、宿場を使いましょう」

イエナが言った。


さすが特使だ。旅慣れている。


「イエナは来たことがあるべか?」

ミサキが聞いた。


「首都であるスイレンには何度か。ナギラ岬とは相当離れていますし、文化圏も異なると思います。ちなみに、テリーズはカシラギの出身と聞いたことがあります」


そうだったのか。意外だ。

てっきりテオロッド出身だと思っていたが。


確かに、テリーズはテオロッドではあまり見ない灰色の髪──無式者だ。


「カシラギはどんな国なの?」

タツオが馬車を操舵しながら言った。


「これからは向かうナギラ周辺は、港の街ですね。漁業、海運業が盛んです。造船技術は世界でも最も高いと言われています」

イエナが答える。


「オルディアよりも?」

タツオが聞いた。


俺は、オルディアのあの発展した科学技術を思い出す。

蒸気機関。


「私が把握している情報では、そうです。もっとも、現在の状況は分かりませんが……」


もしオルディアの造船技術が発展していた場合。

海路の危険度も跳ね上がる。

逃げ場のない海で、蒸気機関の船。


オルディアの領土は元の世界で言えば東京、神奈川。

海に面した国家である以上、そうなっていてもおかしくはない。


そんなことを考えていると、ふとした疑問にたどり着く。

転移してからは日本の領土を〝世界〟として話が進んでいるが、

海外はどうなっているのだろう。


「海の向こうに、国はないのか?」

俺は聞いた。


「私が聞いている話では、二千年以上前、一度滅びたと聞いています。今世界で認識されている最も古い国は、目的地であるスクエアですね」

イエナが答える。


「そうなのか。誰か、外の世界を見に行ったりしないもんなのかな」


「少なくとも、テオロッドには海がないですからね。これから向かうナギラの民であれば、何か知っているかもしれません」


俺は知っている歴史を思い出す。

領土拡大を目指す国家は、陸の次は海の支配を目指す。

そして、その次は空。


文明レベルから考えれば、海を渡り、大陸を支配してもおかしくはなさそうだ。


貿易も盛んなマルカドールは大陸と地理的にも近い。

ガレオンに聞いておけばよかったな。

そんなところまで頭が回らなかった。


「ユイト、頭は回るのに常識を全然知らないべな。

一体どんなところで育ったんだ?」

ミサキが不意に確信をつくようなことを言う。


「う、うるさい!俺とタツオの国は、とんでもない田舎だったんだよ!」

声を荒げてごまかした。


イエナやミサキには、いつか本当のことを言いたいという気持ちもあるが、信じてもらえるかも分からないし、説明がめんどうくさい。

とりあえず名前もないような田舎の村出身ということにしておく。


そうこうやり取りしている内に宿場街に到着する。


テオロッドとカシラギの国境にあるトネアという街。

大きな河が流れていて、それが国境になっているらしい。

宿場町であり交易拠点でもあるようで、商人や旅人たちでにぎわっている。

タツオが操舵をしながら、街の中を宿に向かって進んでいく。前部座席には、俺とイエナが並んで座り、ミサキは積荷に囲まれて後部席に座っている。


「オルディアとの国交がなくなっても、商売は動いているんだな」

まるで祭りのようなにぎわいを見ながら、俺は言った。


「テオロッド東側の周辺国家は、結びつきが強いですから。特に人工魔獣の件が発覚してから、特に」


「イエナがその情報を集めたんだよな。どうやったんだ?」


アークネイヴァーでの戦いの後、迅速な情報集めを行い、テオロッドの方針を決める中でイエナが大きな役割を話したのは間違いない。


「特使の情報網は意外と広いんですよ?元々、アークネイヴァーに対する疑念はありました。周辺諸国を中心に増える変異魔獣の被害。そしてそれを迅速に討伐するアークネイヴァー騎士団。自作自演の可能性は感じていました。グラディオの言葉……俺たちが創り出した、が決定打になりましたが」


「なにか、魔獣製造の証拠が見つかったのか?マルカドールの育成場のような施設があったとか」


「証拠?ないですよ。状況証拠と推論だけで、後は噂です。

各国上層部に、アークネイヴァーの自作自演の可能性を示唆しただけです。もはやそれが事実として認識されていますが」


おお……。

ということは。

仮説を流布し、事実のように転換したということか。

この子、やりおるな……。


「ノクスはアークネイヴァーが滅びた原因をテオロッドのせいにして喧伝しています。情報戦を仕掛けられている以上、こちらも対抗しないといけませんから。

長年培った各国との信頼のおかげで、あちらのプロパガンダはほとんど効果がありません」


「ざまぁみろって感じだべ」

ミサキがそう言った。


「ノクス=ルミナスか。何者なんだろうな。あまり、大物な印象はないけど……」

俺は言った。


俺は、一度だけアークネイヴァーで見たノクスの顔を思い浮かべる。

科学者然とした風貌。

こけた頬、少し影のある表情。

国を転覆させ、それを乗っ取るような人間には見えなかった。


「ノクス=ルミナスは、テオロッド出身の可能性があります」

イエナが答えた。


「え?でも、髪の毛灰色だったべ。無式者だぞ?」

後ろからミサキが身を乗り出し言った。


「テオロッドにも、無式者はいるの。私たちの近くにいないだけ。農民や商人、職人は無式者も多い」

ミサキに向かってイエナは言った。


「ルミナス、という姓は、テオロッドの神職を務めていた家系。数十年前に犯罪を起こして貴族ではなくなったけど、あまり多い姓じゃない。何かテオロッドに対して因縁があるのかもしれない」

イエナは何か考えるように言った。


話をしていると、目的の宿に到着した。

相変わらずの歓待である。

皆、イエナ様、ようこそ!と目を輝かせている。

イエナの外交術はテオロッドの武器のひとつだな。


ここで一泊し、順調に進めば明日はナギラ岬に到着できる見込みだ。

夕食を終え、部屋に戻ろうとすると再びミサキから招集がかかった。例の作戦会議だろう。


俺たちは宿の会議室を借りて、向かい合った。


「よく世界情勢の話の後にこの話題をしようと思えるな」

俺は開口一番言った。

イエナの話を聞いた後、俺はしばらく世界のあるべき姿について考えていた。

正直、恋愛モードは一切なくなっていた。


「逆に言いたいべ。恋と世界情勢なら、私は迷わず恋を選ぶべ。ユイトの情熱は、その程度だったんだべか?」

ミサキは俺を睨みつけ言った。

「明日世界がどうなるか分からないのに、大事な人へ気持ちを伝えなくていいべか?」


うっ……。

なんかそれっぽいことを言われている。

恋に走った女は恐ろしい。


「……であれば、ミサキはさっさと伝えればいいじゃないか」


「伝えるんじゃなく、伝わることが大事だべ。

そのための作戦会議だ。ユイト、初心を思い出すべ!」


ぐっ……。

なんだか論破されそうだ。


「分かりましたよ……。で、ミサキはその後どうなんだ?まさかのルームシェアになったものの、余計家族感が強まったような気がするが」


俺が反論すると、ミサキは唇を噛み締めた。

「そうなんだべよ……。毎日顔を合わせると、余計に扱いが妹じみてきて……。距離の詰め方が分からないべ」


ふむ。悩みは俺と同じ方向のようだ。

長く旅をした結果、この四人の絆は相当深まったと思う。

が、それはチームとしての信頼感であり、恋愛のそれとは違う。


「ユイトは、作戦会議進んでるべか?」


「ああ……。下地は作ってある。残りは、サイレスさんとローディンが引き継いでくれた。テオロッドに帰れば、いつでも実行できる」


「そうかぁ。私は次どうしたらいいべ……」


ガンガンいこうぜ一辺倒でやってきたこれまでだが、難攻不落のタツオ城は揺らがない。

だとすれば作戦変更も必要かもしれない。


「そうだな……。次は、〝いろいろやろうぜ〟で行くか」

俺は言った。


冗談で〝式術つかうな〟とか〝いのちをだいじに〟とか言いたかったが、やめておいた。


「どういう意味だべ?」


「俺の国の格言で、恋はタイミング、フィーリング、ハプニング、という言葉がある。

しかるべき時に、感性が一致し、想定しない何かが起きた時、恋が芽生えると」


「それ、マルカドールでやったべ」


「あれはいささか狙いすぎだったかもな……。

もう少し、角度の違う作戦でいこう。そうだな……。

ミサキ、お前、胸の大きさに自信はあるか?」


「なっ……!何を言い出すべ急に!」


「ああ。俺の世界ではこれをセクハラと言う。

立場によっては仕事を辞職に追い込まれるような発言だ。

だが、安心しろ。そういう意図ではない。

純粋な情報収集だ」


「……。言わなきゃダメだべか。まぁ……なくはないべ。

最近大きくなってきたし」


やはり、俺の見立て通りだ。

小柄な身長とツインテールで幼稚な印象を与えてはいるが、実はミサキは順調に発育している。


十八歳の健全な男子の視線がそれを判断しているから、間違いはない。


「ふむ。——では、作戦を授けよう」

俺がそう言うと、ミサキは唾を飲んだ。


「水着回大作戦だ」


「みずぎ……?」


「ああ。一般的にはサービス回として認識されているが、実は様々な要素が詰まっている。普段隠されたそれぞれの体、そして開放感の中、海や川ではしゃぎ合う共通体験。

数多くのフラグ立てがその流れで発生するケースも多い」


「ユイト、何言ってるかわからないべ……」


「ああ……すまん。少し遠くへ行っていたようだ。

とにかく。ミサキはイエナと一緒に水着の準備をしておけ。

俺はタツオと準備をしておく。

明日、出発前に買い出しだ。この街なら売っているだろう。

これからいくナギラ岬も、スクエアも海がある。

絶対に必要な場面が訪れるはずだ」


俺は熱弁する。

途中、ミサキのためなのか自分のためなのか分からなくなってきたが。


とりあえず、フラグは立てた。

後は回収されることを祈ろう。



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