エピソード・オブ・ミサキ テオロッドの家探し
タツオとの待ち合わせ場所は、王宮の入り口にある、
アウレオ=テオロッド像の前だった。
ここは、テオロッド市民の待ち合わせ場所として有名な場所である。
髭を立派に蓄えたアウレオ様の像の周りには、
同じく待ち合わせと思しき人たちが待ち人を待っていた。
この日のためにミサキは、マルカドールで買った服や装飾品で
がっつり着飾っていた。
ユイトに大半返品させられたが、お気に入りの何着かは残しておいたのだ。
冒険で来ている衣装は実用性優先なので味気ない。
髪もいつもより念入りにとかしているため、ツインテールもばっちり決まっている……ような気がする。
約束の時間の十分前に、タツオはやってきた。
性格的に遅刻を覚悟していたので意外だった。
タツオはいつもとそう変わらないシンプルな服装だ。
だが、またそれがいい。
「あれ?いつもと服装違うね」
タツオは、すぐにミサキの変化に気が付いてそう言った。
「いつもとちょっと変えてみたべ。……どうだべ?」
ミサキは照れを隠しながら聞いた。
「うーん、そうだね。馬子にも衣裳、ってやつかな?」
タツオは答えた。
……なんか褒められた気がしない。
むしろ、馬鹿にされた気がするべ。
ミサキはタツオの言った意味が分からなかったが、
あえて深堀しないことにした。
予定時間の五分前、レオニスから命を受けた従者がやってきた。
今日の家探しのエスコート役だ。
家探しの段取りは、ユイトに代わりタツオが事前にレオニスから聞いていた。
王宮近くの貴族街にある空き家から、条件に合うものを見繕っているという。今日内見するのは、そのうち三軒。
従者の案内に従い、二人はテオロッドの街並を歩いていた。
先頭を歩くのは、従者の男。
少し離れて、二人で歩く。
果たして、これはデートと呼べるんだべか……。
まあ、新婚夫婦みたいな気持ちで楽しむべか。
しかし、いざ二人となると緊張して話せないものである。
「こちらが、一軒目でございます」
従者が案内するのは、石造りの落ち着いた家。
二階建てである。外観の雰囲気は悪くない。
王宮や式術研究所からも歩いて五分くらいで、
生活するうえでは便利そうだ。
「部屋数は全部で三部屋ございます」
業者が言う。家に入ってみると、
広い居間があり、そこからつながる一部屋。
二階に二部屋あるようだ。
タツオは間取りを見ながら呟く。
「うーん……悪くないけど、ちょっと部屋数が足りないかな」
「足りない?」
ミサキが首を傾げる。
「うん。二人で住むには狭いよね」
タツオがミサキを見ながら言った。
ミサキの心臓が跳ねる。
ふ、二人分…!?
もう、一緒に住むことまで考えてるだべか。
それはちょっと、飛躍しすぎだべ……。
まだ手をつないでもいないのに……。
ミサキは顔を赤らめる。
「次の家に案内して」
タツオは、業者にそう言った。
二軒目は、日当たりの良い木造住宅だった。
庭もあり、平屋で土地が広い。
ただし、少し王宮からは歩く。
徒歩十分くらい。
「庭があるのはいいよね。野菜とかも育てられそうだ」
タツオは、庭にある花を見ながら言った。
「台所は?広い?」
タツオは従者と家に入っていく。
ミサキは、妄想する。
二人で野菜を育て、収穫し、料理する。
どんな料理がいいかを相談しながら、一緒に食事する。
あぁっ!もう完全に夫婦だべ。
まずオウシュウにいる両親と兄弟に挨拶に行かなければ!
みんな、驚くべな。
ミサキはタツオについて部屋に入った。
「ここ、部屋数は?」
タツオが業者に聞いた。
「平屋なので、先ほどと同じ三部屋ですね」
「うーん。ちょっと手狭かな」
タツオは首を傾げている。
狭い……?
まさか、その先の……家族計画を考えているだべか!?
子供は何人がいい?
とかそういう系の話だべか?
ああーっ!落ち着くべタツオ!
物事には順序というものが……!
ミサキのテンションは頂点へ到達する。
「うーん。次最後だっけ?そこ行ってみようか」
三軒目。王宮からは少し歩く。
徒歩十五分くらい。
「貴族が住んでいたんですけど、引退して田舎暮らしするとのことで、空き家になっています。ここは広いんでおすすめですよ」
土地は最も大きく、大きな庭もついている。
しかも平屋。贅沢な土地の使い方をしている。
中に入ると、業者が誇らしげに説明する。
家具や調度品もそのまま残っており、
すぐにでも住めそうだ。
大きめなLDK以外に、五部屋。
タツオは気に入った様子で頷いている。
「ここいいな」
「でも、広すぎねえか?掃除が大変だべ」
ミサキは言った。
声が浮ついている。
タツオが、指折り数える。
「寝室が二つ。作業部屋が一つ。
来客用が一つ。あとは……物置かな」
「ん?し、寝室は……一つでいいべ?」
勇気を出し、ミサキは言った。
「え?ユイトは分けたいっていうと思うよ」
「……え?」
ミサキは思考が止まった。
「ん……?」
タツオもはて?という顔をしている。
そしてミサキは自身の盛大な勘違いに気づく。
ああああああああああああ!!!
叫びだしたいし、
穴があったら入りたい!!
恥ずかしさの勢いに任せて、ミサキは言った。
「部屋が余ってるなら私もここに住むべ!!」
完全に勢いである。
「え?まあ……広いし、いいか」
タツオは了承した。
──軽い。
あまりにも軽い。
ユイト……!
ガンガンいった結果……
結果オーライ、だべ。
……手ごたえはないが。
こうして、三人のルームシェアが決定した。




