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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第二章

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第三十二話 テオロッド帰還と、再会と。

テオロッドに到着する。

何度も通ったこの城門。

最初はよそよそしく感じていたその姿も、

いつからか安心を感じさせるものに変わっていた。


城門をくぐった瞬間、張り詰めていたものがほどけたように感じる。

王宮へ続く街並み、行き交う人々の声が、俺たちを温かく包んだ。


「ただいま」

小さく呟く。


生まれた土地でも、育った土地でもない。

でも、なんだか故郷のように感じる。


王宮の会議室には、レオニスが待っていた。


「よく無事に戻った。イエナからの書簡は読んでいる」

マルカドールを出発する前にしたためた書簡は、

すでに届いていたようだ。


「目的であったシャインの解放だけでなく、

ブレイヴェンとの友好関係、マルカドールの連邦脱退方針。

予想以上の成果を上げてきたな。

特にユイト。君の活躍は、勲章ものだ。

皆、なにか欲しいものはあるか?」

レオニスは言った。


イエナです。

と言いたいところではあるが、

言えるわけもない。


俺は、少し考えると、言った。


「で、あれば、俺たちの家が欲しいです。

寮にずっと住むわけにもいかないので。

俺と、タツオと、ミサキの家を」


「ふむ。確かに、ここまでテオロッドに尽くしてくれた君たちに、

屋敷くらい用意しなければいけないだろう。王宮近くの空き家をいくつか見繕っておこう」


「実際に見てみたいので、準備ができたら教えてもらえますか?」

俺がそう言うと、レオニスは頷いた。


よし。これでミサキ側の作戦は仕込みができた。


「オウシュウの方はどうだったんだべ?」

ミサキが聞いた。

本来、自分が行くはずだった話だ。

気になっていたのだろう。


「ミサキの書簡のおかげで、話は早かったようだ。

同盟締結後、ガルフとテリーズは戻った。

これでカムイが味方についてくれれば、東側は安全になる」

レオニスは言った。


「あれ、でも二人とも姿が見えないですが……」

俺は聞いた。


「ガルフは、騎兵団を連れて、魔獣討伐に向かっている。

──ここに来て、魔獣の出没が増えた。

恐らく、オルディアが周辺地域に魔獣を放っているのだろう。

厄介なことに……繁殖するからな。討伐が追い付いていない。

テリーズは今、霊峰ライゼルにいる。アレクシオも一緒だ」


「霊峰ライゼル……アレクシオが!?」

イエナが声を上げた。


レオニスはため息をつき、答えた。


「あれから、アレクシオは全然部屋から出ようとしなかった。

理由は分からなくもないが……このままではよくないと思ってな。

荒療治だ」


「いくらなんでも、荒療治すぎませんか……?

あそこは、サイレス叔父さんでも二度と行きたくないって言ってましたよ」

イエナは食い下がる。


「だから、テリーズに頼んだ。あいつは甘えたところがある。

精神面を鍛えるには、それくらいがちょうどいい」


霊峰ライゼル、のことは知らないが、

確かにテリーズとアレクシオの姿はない。

一か月近くいない間に、色々と王宮も動いているようだ。


「そういえば、サイレスさんは?姿が見えないようですが」


「ああ。研究所にいる。この後、顔を出してやってくれ」





俺たちは、王宮を出るとそのまますぐ近くの式術研究所に向かった。

サイレスはお茶を飲んで待っていた。

「意外と早く戻ったな」

サイレスはお茶を置き、言った。

「マルカドールでの活躍は聞いたぞ。

Sランク闘士になったそうだな」


「ええ、なかなか大変でしたが……」

俺は答える。


「大した火力の出る式もないのに、大したもんだな。

頭を使ったのか?」


「……痛いところつきますね。ええ。どうせ器用貧乏ですよ。

色んな式術を組み合わせて、何とかしのぎました」

俺が言うと、サイレスは笑った。


「そんなに器用にできるやつは、私か君くらいしかいないさ。

──他の面々も、長旅で大分鍛えられたんじゃないか?

せっかくだから、今の力を見ていけ」

そういうと、サイレスは式位の測定装置を顎で指した。

「ユイト用の調整はしてあるぞ。

まずはユイト。そのあと設定を戻して、

ミサキ、タツオだ。イエナも久々に測定してみるといい」


俺たちは、順番に測定装置に乗る。

卒業試験以来の検査だ。

サイレスが、その時の結果を残していてくれた。

どれくらい成長したんだろうか。

……あれだけ闘技場で苦労したんだ。

多少は上がっててくれないと困る。


まず、俺の測定結果が出る。

いつものように、主式は青と仮置き設定だ。


主式 青

副式 茶


赤 六式→五式

青 四式→三式

黄 八式→五式

緑 六式→五式

紫 六式→四式

茶 四式→三式


……おお。全体的に上がっている。

というか、全色で式術学校卒業レベルだ。


「黄が三段階も上がっているな……相当使い込んだのか?

この成長速度では、私もうかうかしていられないな」

サイレスが解説をしてくれる。


この世界に来て、なかなか褒められる機会も少ないので、

素直に嬉しい。

脱、器用貧乏。目指せ万能の式術者。

闘技場での死闘も、無駄ではなかった……。



続いて、ミサキが乗る。


主式 紫

副式 青→緑

赤 七式→七式

青 五式→五式

黄 七式→六式

緑 五式→四式

紫 三式→二式

茶 七式→六式


「ついに、紫の二式になったか。ただでさえ紫は希少だ。

ここから先は、指導者がいないな。

それと……副式が青から緑に変わっている。珍しいパターンだ」

再び、サイレスの解説。


緑が伸びているのは……恐らく、グラディオとの戦いの後、

タツオに使ったヒーリングの影響だろう。


あの時、ミサキは異常な集中力だった。


その時の想いが、副式を変えるほど強く作用した、ということだろうか。


結果を聞くと、ミサキは、複雑な表情で答える。

「二式は当然として……なんか、ユイトと比べると伸びが悪いべ」


「ユイトは特殊事例だ。本来、こんなに満遍なく式力が伸びるなんてことはない。君も相当天才だ。もし万能を目指すなら……霊峰ライゼルにでもいけば、私を超えられるかもな」

サイレスが言った。


霊峰ライゼル。

さっき、レオニスも言っていたな。

文脈から察するに修行場みたいなイメージだが……。

後でイエナに聞いてみよう。


続いて、タツオ、の予定だったが、

サイレスが「なにか嫌な予感がする」と言って、

先にイエナを乗せた。


ちなみに、この予感は、すぐに現実のものとなる。


イエナの結果。

長いことイエナと一緒に旅をしているが、

イエナの式位は見たことがない。


主式 緑

副式 紫

赤 八式

青 五式

黄 五式

緑 二式

紫 四式

茶 八式


「イエナ……副式が紫に変わっているぞ」

サイレスが呟く。


「えっ……本当だ。これまでずっと青だったのに……」

イエナも、結果を見て驚いている。


「黄と青の式者の間に生まれて、副式が紫になるなんて……

一体どんな式の使い方をしたんだ?」

サイレスは若干呆れたように言った。


──エーテルリンク、通信式術の影響かもしれない。

「あの、その件で後ほど相談が……」

俺は、サイレスに概要を話した。


「……それは興味深いな。後で詳しく聞こう」


この式術が使えるようになれば、戦略の幅は飛躍的に広がる。

ぜひサイレスの見解を聞いてみたい。


「では、最後はタツオだな。嫌な予感がするが……乗ってくれ」


言われてタツオが乗る。


相変わらず、ほとんどのメーターは反応していない。

俺と特訓した茶だけは八式から七式に上がっていた。


問題は……赤、である。

メーターは上昇を続け、最高値に到達し、振り切れている。

そして、直後、測定器はビィィンと嫌な音を立てて……

ボンッ、とメーターが爆発し、動作を止めた。


……目につける某測定器かよ。


サイレスは、ため息をつく。


「やはり……タツオ、君はもう測定機に乗るな。

修理するの大変なんだぞ、これ……」

珍しく、サイレスがうなだれている。


測定不能。つまり、タツオの赤は零式に到達していた。

なんとなく、分かってはいたが。

インフェルノ。

忘れもしない。

グラディオを一瞬で焼き尽くしたあの業火は、

完全に神話の類のものだ。


「……さて、先ほどのエーテルリンクとやらの話も聞きたいところだが。

君たちの帰還を聞いて、会いたがっている者たちがいる」

サイレスがそう言うと、俺たちの後ろに目線を移した。


振り向くとそこには、長髪のちょっとスカしたあの男がいた。


「……レイン!」

俺が呼ぶと、レインは片手をあげ、こちらに近づいてくる。

後ろには、おかっぱ頭のノエル、そばかす緑のフィルもいる


「ブルーオーダー勢ぞろいだべ」

ミサキが言った。


「やあ。お帰り、フォーリナーの諸君。しばらく見ない間に、更に成長したようだね」

相変わらず、変な話し方ではある。

しかし、根はいいやつなのを俺は知っている。


「皆、ここにいるってことは……卒業試験は?」

俺が少し慎重にそう聞くと、

レインはお決まりのポーズで言った。

「全員合格さ。これで、みんな王宮式術者だな」

ビシっと親指を立てている。


「僕は無免許だけどね」

流れをぶった切るように、タツオが言った。


「……え?なんで?」

レインがきょとん、としながら言った。


「面接で落ちた」

タツオが答える。


「え……?形だけと言われているあの面接で?

ノエルですら受かった面接で?」

レインはまだ理解できずにいる。


「ノエルですらってなんだよ。俺はバッチリだったぞ」

横でノエルが不満そうに言った。


「皆、積もる話もあるだろうが……今日は目的があって来たんだろう?」

サイレスが空気を読んで話を戻す。


「あ。そうそう。今日は諸君に頼みがあって参ったのだ。

俺たちブルーオーダーと……実演訓練をやってくれないか?」

レインは我に返って言った。


式術合戦?なんじゃそりゃ。

案内されるまま、俺たちは式術訓練場へ移動した。


「やることは簡単。それぞれが得意な式術を見せ合い、

良いところを吸収し、改善点を指摘する。

──俺たちは実践経験が少なくてな。諸君は経験豊富だろう?アドバイスが欲しくてな」


なるほど。これから王宮式術者として生きていく上で、

式術の実用性を計りつつ、研鑽をしたい。そういうことか。

訓練場には、模擬魔獣の人形や、防火壁がある。

タツオが入試で破壊した穴は、きれいに直っていた。


「オッケー、じゃあ僕から行くね」

タツオがそう言ってずいっと前に出る。


それを、俺とサイレスはタツオの肩を掴んで止めた。


「お前はやるな」


最初に実演するのは、俺からということになった。

サイレスからも言われた通り、火力のある技は持っていない。しかたないので、多少見栄えのするあの技をやることにする。力を溜め、地面に意志を送る。


「アースホール!」

訓練場の一角に、大きな穴が広がっていく。


技を終えると、レインが拍手をしている。

「戦闘で大いに役立ちそうだな。

敵の足止め、連携の破壊、色々利用機会がありそうだ。

ところでその、アースホール、っていうのはなんだ」


「あ、これは……技名。なんか、名前がないと落ち着かなくて」

俺は答えた。


「ユイトも、やっと理解してくれたね」

タツオは満足そうに腕を組んでいる。


レインは、それを聞くと、ちらっとサイレスを見て、聞いた。


「サイレス先生……いいんですかね?」


「……本来、自然の力を借りて発動する式術に名前をつけるのは禁忌とされてきた。

自然の怒りを買い、借りられる力が減る、とな。

しかし……タツオを見ていると、それはただの迷信だな。

好きにすればいいさ」

サイレスが眼鏡をくいっと押さえながら言った。


なるほど。

この世界で式術の名前を聞く機会が少なかったのは、

そういうことだったのか。

その辺の禁忌を平気でぶち破ったのはタツオだが、

俺ももはや技名なしには生きられない体になってしまっている。

シャインとのSランカー対決を思い出す。


「では、次はこちらから。ノエル、行けるか?」

レインが言うと、ノエルが腕をまくって前に出る。


両手を掲げ、雷を溜め、模型魔獣に放つ。

アレクシオほどではないが、俺よりもはるかに強い雷が模型を撃つ。


「おおっ。トニトルス、だな」


俺が言うと、ノエルが食いつく。

「それなんだ?技名か?」


「ああ……。俺が勝手につけたんだけどな。雷の式術のことだ」

俺は答えた。


「かっこいいな。それ、俺も使ってもいいか?」

ノエルは、少年のように目を輝かせる。

俺は、頷く。


「ユイトも大分ネーミングスキルを上げたね」

タツオが腕を組みながら頷いている。


どの立ち位置だよ、お前。


「次は、私が行くべ。紫の二式、しっかり見とけよ」

ミサキが前に出る。


紫の霧が、あたりに広がる。

範囲が──広い。明らかに以前より広がっているように見える。

「これだけ広ければ……敵の隊列ごと幻惑かけられるだろうな」

サイレスは感心したように目を見張った。


「次は俺だな」

レインが前に出る。


両手に水が集まり、それを一つに束ねる。

そして、それは水柱となり、両手から模型魔獣に放たれた。


こんな使い方もできるのか。タツオのフレアレイの水バージョン、と言った感じだ。

俺は感心して拍手をした。


「ユイト=カタギリ。どうだ?」

レインはこちらに向き直り、言った。


「え、いや、いいんじゃないかな。攻撃力高そうだし。

俺も真似しようかな」

俺は拍手を止めて答えた。


「いや、そうではなく……名前だ。技の」

レインは言った。


……この男もそっちパターンか。

どうやらこの世界の人たちは、名前に飢えているらしい。

「えーっと……ウォーターガン、とか?」

俺は適当に答える。


「やっつけだね、ユイト」

すぐにタツオにはバレる。


しかし、レインは喜んでいる。

「おお!素晴らしい名前だな!今後使わせてもらおう!」


俺はなんだか申し訳ない気持ちになり、別の案を考えた。

着地、レインの技はアクアストリームとなった。


残すところは緑のイエナとフィル。

実演は難しいということで、実践訓練はこれで終了となった。


「良い技名をもらった。充実した時間をありがとう」

レインは言った。


目的がずれている気がするが……まあいいか。


「君たちは、もう向かうのか?」

サイレスがブルーオーダーの面々に聞いた。


「はい。この後、馬車に乗って出発するつもりです。」

レインが背筋を伸ばし、答える


ん?どこかにいくのか?


「霊峰ライゼルは、着くまでの道のりも大変だが、着いてからのほうが大変だ。控えめに言って──地獄だ。くれぐれも気をつけろよ」

サイレスは言った。


「はい。無事、アレクシオ王子の護衛を務めてまいります」

レインはそういって胸に手を当てた。


ほほう。文脈判断すると、彼らはアレクシオの護衛に旅立つようだ。

しかし、また霊峰ライゼルの名前が出てきたな。

だんだん気になってきた。


「では、フォーリナー諸君。そして、サイレス先生、イエナ姫。無事、ブルーオーダー初任務を果たしてまいります」

そう言って彼らは訓練場を旅立っていった。


卒業したばかりで、いきなり大役だ。

まあ、俺たちもそうだったが……。


この国の人材不足問題もなかなかのものだ。

しかし、ブルーオーダーが揃って卒業できたことは、自分のことのように嬉しかった。

絆の深い三人だ。

きっとこの後の旅路も連携して乗り越えるだろう。

——アレクシオは、元気でやっているといいが。

テリーズに加え、あの三人も追加されれば、まあ大丈夫だろう。

その後、サイレスと共に再度研究所に戻った。


「で、そのエーテルリンク、とやらを見せてもらおうか」

サイレスの要望に応えるため、まずは実践したほうが早いとなった。


俺たちは研究所の外へ行き、イエナを媒介にして通信をした。


『聞こえますか?サイレスさん。多分今、式力とともに俺の話がそちらに届いているはずです。

一方通行なんで、一旦切ります。

——今度は、そちらからこちらに〝つなぎ〟ます』


通信方向を切り替える。イエナは少し息が荒い。

五往復くらいが限界と言っていたし、かなり疲れるのだろう。


『ああ。聞こえた。これは……式術の超応用だ。

私には思いつきもしなかった。これがあれば、確かに戦術に革命が起きるな。一旦、戻ってきてくれ』

通信が切れた。


俺たちは研究所に戻る。

「いったいなんなんだ、君たちは。技名をつけたり、式術のこんな使い方を発見したり……まるで別の世界から来たみたいだな」

サイレスは俺たちが戻るなりそう言った。


俺は一瞬ドキっとし、とっさに答えられなかったが、タツオが言った。

「うん、そうだよ。異世界からきたんだよ」


おい。なにいきなり暴露しているんだよ。

俺は焦った。


が、その反応を冗談と取ったのか、サイレスは笑った。

「ははっ。そうだな。君たちの国は、よほど発想が柔軟なんだろう。

——まさに異世界だ。

さて、このエーテルリンクの件は私が預かろう。

これはいわば、私の探知の術の進化版だ。

緑と紫を掛け合わせて、通信が成立している。

緑と紫で生体エネルギーを探知までは私でもできるが、

人と人を〝つなぐ〟のは、緑の超高位者でないと難しいだろうな。私でもできる気がしない」


エーテルリンクは、イエナあり気の式術のようだ。

全員ができればイエナの負担も減るし、連絡の幅も広がると思ったのだが……。

そうなんでもうまくはいかないか。

俺たちはひとしきり旅の話を終えると、揃って研究所を出た。



「ブルーオーダー、受かってよかったべ」

ミサキが言った。


「そうだな。頑張ってたからな。アレクシオも、あいつらがいれば安心だろう」

俺が答える。


「そうですね。でも……そんなに簡単じゃないですよ、霊峰ライゼルは……」

イエナが顔をしかめながら言った。


「そういえば、霊峰ライゼルってどんなところなんだ?」

俺はイエナに聞く。


「霊峰ライゼルは、〝原理の聖域〟と呼ばれています。

通説では、テオロッドの祖、アウレオの生誕地と言われています。

標高が高く、馬車でいけるのは途中までです。最後には三千段の階段が待っています」


「三千段……?そんなの登れないだろ」


「はい……地獄です。頂上では、〝編纂者〟と呼ばれる人々が式術の歴史を紡いでいます。

サイレス叔父さんは、そこで三年間修業と式術の調査をしていたそうです」


「イエナも行ったことあるのか?」


「はい。私は数日滞在しただけですが、空気も薄く、天候も荒れています。

王族の通過儀礼的な場所です。

地理的にはテオロッド国内にありますが、どこの国家にも属していません」


ヴァチカン市国みたいなイメージだろうか。

しかし、標高が高い。そんな山、埼玉にあったか?

本当にここが未来の日本なら、地殻変動が起きているのかもしれない。


「アレクシオ……文句言ってそうだな」


「はい。テリーズに怒られていると思います」

イエナがそう言うと、俺たちはアレクシオがぷんぷんしている姿と、それをたしなめるテリーズの姿を想像し、笑った。


なんにせよ、元気になってくれればいい。

そしてまた、俺たちに笑顔を見せてくれる。

その日が楽しみだ。

旅の疲れもあったので、俺たちはその日は解散した。


明日から、しばらくはテオロッドで骨を休めよう。

まあ、俺とミサキには大切な作戦が控えているのだが……。


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