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テオロッド戦記—異世界転移した俺、式術世界で国家戦争に巻き込まれる—  作者: ヨダカカツキ
第二章

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第二十七話 奇術師と不殺と。

苦節、約一週間。


俺はついに闘士寮最上階に到達した。

ここまで、短いようで、長かった。


ガレオンの私室の更に奥にSランク闘士の部屋が用意してある。現状、この階に住む闘士はたった一人。


シャイン=カムイ。目的の男。


ガレオンに案内され、俺は最上階の部屋に入った。

そこは、まるでホテルのスイートルームのようだった。

ガレオンの私室より、さらに広く、調度品も揃っている。

長居するつもりはまったくないが、元の世界だったら誰もが羨むような部屋だ。


「Sランクが二人になるのは何年ぶりかな。ちゃんと、準備しておいたぞ。

好きに使え。ちなみに、次の試合は、まだ未定だ。

この五連戦で大分やりつくしたから、少し企画を考えないとな」

そう言って、ガレオンは去っていった。


俺は深く息を吸い、すぐに部屋を出る。

向かうのは、さらに一つ奥の部屋。


シャイン=カムイがいる部屋。


ノックをする前に──扉が、内側から開いた。


そこに、シャインが立っていた。

青と白のグラデーションが特徴的な髪。

整った顔立ち。

そして──氷のような、冷たい目線。


「……何か用か?」


低い声。

敵意も、歓迎もない。

ただ、事実を確認する声。


「今日からSランクになった……〝奇術師〟ユイトです」


「知っている。昨日の試合は観た」


──観ていたのか。


「用があるなら、上がれ」

俺は部屋に通された。

先ほど俺が見た部屋とは全く違う。

なんというか、余計なものがすべて取り除かれた形。

必要最低限の家具以外はなく、部屋の広さだけが目立つ。

壁には、本が並んでいた。読書家なんだろうか。


俺が何から切り出そうか悩んでいると、シャインが口を開いた。

「昨日は、魔獣を殺したんだな」


俺の、ブラッドガルム戦のことだろう。

ということは……これまでの俺の戦いを把握しているのだろうか。


「……そういえば、そうですね。

これまでは必要と思っていなかったので、

戦闘不能で終わらせましたが……。

昨日は、やるか、やられるかでした」

俺は、ブラッドガルムの断末魔を思い出す。

生き物を殺すということは、いくら自分を守るためとはいえ、気持ちのよいものではない。


「だろうな。そう思う」

そう答えると、再びシャインは沈黙した。


「部屋、物が少ないんですね」

俺は話に困ってそう聞いた。


「生きる上で必要なものなんて、そんなに多くないだろう。

本だけあれば、時間はつぶれる」

無駄を嫌うタイプのようだ。


これは、交渉に骨が折れそうだ……。


「話はそれだけか?もう訓練に行ってもいいか」


訓練?

訓練に行こうとしていたのか。

これは、食らいつかなければ。


「あ、あの、俺も行っていいですか?」

シャインはそれを聞くと不思議そうな顔をしたが、

「分かった。付いてこい」

と言った。


闘技場とつながる通路と反対側。その階段を下りていくと、

そこには広大な土地が広がっていた。

草原。川。岩。森。


——まるで、テオロッドの式術学校だ。


魔獣を模した、大きい彫刻もある。

対魔獣の訓練用だろうか。


裏手には、石造りの建物がある。

タツオの話からすると……ここの地下が魔獣育成場だろうか。


「なんだ?訓練場は初めてなのか?」

俺の表情を見て、シャインが言った。


「はい。こんな場所があったんですね」

シャインは、草原に足を延ばし、柔軟をしている。


「Aランク以上は自由に使える。

大型魔獣との闘いが多い上位ランカーは、試合間隔が空くからな」


なるほど。確かに、寮で生活していては体力を持て余すし、

何より戦闘感覚が落ちる。


……って、おい。


Aランク以上?

聞いていないぞ。


ということは。

わざわざ苦労してSランクにならなくとも。

ここに来ればシャインと会えたってことか?

俺は、大事な情報を伝え漏れたガレオンを呪った。


いや、確かにSランクになりたいって言ったのは俺だけど……。

こんな裏ルートがあるなんて想像もしていなかった。

一人悶絶する俺の様子をシャインは不思議そうに見ている。


「〝奇術師〟ユイト。お前はどこから来た」

シャインが俺に聞く。


「あ、俺は……ブレイヴェンです。ラグナから話を聞いて」

素直にテオロッドから、というには、まだ信頼関係ができていない気がする。

とっさに俺はそう言った。


「ラグナ。聞いたことあるな……。

奴隷出身で、自らを解放した闘士だな」


俺は頷く。

「そうです。時間はかかったと言ってましたが……。

シャインさんは、どうしてここを出ないんですか?」

核心。

流れで聞いたが、

──踏み込みすぎたようだ。その質問には答えず、

シャインは魔獣の彫刻へ向かって歩き出した。


両手を上げ、式術を展開する。


青と白のグラデーションになっている髪が、

白味が強くなる。

──尖った氷の塊が、魔獣の彫刻に向かっていく。


「フロストランス……!」

俺はつい叫んだ。


すると、シャインが振り向いている。

「……え?あ。技の名前です。

すいません、勝手につけました気に入らなければ忘れてください」

俺は動揺して一息に話す。視線が怖い。

いかん。タツオの影響を受けて、ネーミング癖がついているのを忘れていた。

技を見ると無条件で名前を考えてしまう。


「名前?お前が考えたのか。面白い。

では、この技はどうだ?」

シャインは別の技を出す。


地面から氷柱が発生し、魔獣の彫刻の足元に絡みつく。

ブラッドガルムに放っていた技だ。


「えーと……。アイスバインド!!」

俺が叫ぶと、シャインが笑っている。

なんだか分からないが、ツボにはまったようだ。


よし、頑張れ、俺。


大喜利みたいになってきたが……。


続いて、シャインは氷の壁を出した。

俺のアースウォールの氷バージョン。


「これは……グレイシアウォール!」


「なかなかいいな。響きがいい」

シャインは、満足そうにこちらを向いた。


「せっかくだから、普段使わない大技も名前をつけてくれ。

──ちょっと寒くなるから、気をつけろよ」


そういうと、シャインは魔獣の彫刻に向かって両手をかざした。

これまでは、氷を作り、ぶつけていたが──

この技は逆のようだ。


──彫刻の周囲から、気温を奪う。

魔獣の彫刻は、一瞬にして氷漬けになった。


「どうだ?」


俺は、カタカタ震えていた。

寒い。周辺も、一気に気温が下がったようだ。


「え、えーと…寒い…アブソリュートゼロとかどうですか」

俺が必死にそういうと、シャインは笑った。


「最高だ。今度はお前の技を見せてみろ」



え。マジっすか。

なんだか少し恥ずかしい。

俺はその後、シャインが見守る中、


「アースウォール!」とか


「トニトルス!」とか


「フレアバースト!」とか


叫びまくる羽目になった

レゾナンスシリーズに至っては、彫刻が相手なので何も起きない。

ただ叫んでいるだけだ。

シャインはなぜか満足そうに腕を組んでいた。


ひとしきり技の披露が終わると、シャインが聞いてきた。


「それだけ色んな式色をつかえる人間は、見たことがないぞ。何者なんだ、お前は」


まあ、そうなりますよね。

説明が難しい。

俺は極力嘘をつかないように伝える。


「白の式者、っていうみたいです。突然変異なのか何なのか、よく分かっていないみたいで。その謎を解くために旅をしているんです。なにか知りませんか?」


逆に質問して交わす。コミュニケーションの技術だ。


「俺も、氷の式を発動すると白っぽくはなるが……お前の色は、別物な気がするな」

シャインは、そう言った。


うまくごまかせたようだ。

段々と打ち解けてきたような気もする。


——しかし、汗をかいた。

ご多分に漏れず、この寮にも風呂はなかった。

水場で汗を流して過ごしていたが、そろそろ限界だ。


ふと、俺は視界に入る景色を見る。


川。森。


——これは……造れるな。


俺は、シャインに声をかける。

「シャインさん、この後時間ありますか?」


「寮に帰って、飯を食う予定だが」


「……そのあとでいいんで、もう一度ここへ来てもらえますか?」



俺はシャインを見送ると、一旦部屋に帰り、

タオル代わりの布を用意した。


久しぶりのDIYにテンションが上がりながら、川へ向かう。

森の入り口と川がつながるちょうどよい場所を見つけ、土の式術を展開する。

二人がゆったり浸かれるスペースの湯舟ができあがる。

そこに川の水を流し込み、水を貯める。

火の式術でそれを温め、即席風呂の完成、である。


我ながら、式の扱いがうまくなったものである。


脱衣所は…別にいらないか。

俺は風呂の周りを広めに土の壁で囲った。

あとは、シャインの帰りを待つだけである。


裸の付き合いは、お互い腹を割って話すにはぴったりだ。




「さあ、こちらへどうぞ」


いぶかしげにしているシャインに、完成した風呂を見せる。


「なんだこれは」


「まあまあ。さあ、服を脱いでください」


そう言いながら、俺は服を脱いでいく。

持ってきた布を腰に巻く。見本だ。


「なに……こんなところでか」


シャインは、渋りながらも俺の言うとおりにする。

しかし、シャインは均整な体をしていた。

男の俺でもほれぼれする。

無駄な肉のない、シャープな体。

——いかんいかん、見とれている場合じゃない。


「足からゆっくり入ってください。慣れてきたら…肩まで入ります」

お湯は、俺の体感温度で四十度にしてある。


本当はもう少し熱い方がいいんだが、風呂のデビュー戦のシャインを気づかった温度だ。

俺たちは、ゆっくりと肩まで浸かると、同じタイミングで息を吐いた。


「どうですか?」

俺は、シャインの横で目を閉じながら聞いた。


「……気持ちいいな。体の疲れが取れていくようだ」


「この後、ベッドに入ると最高ですよ」


「それは…想像するだけで寝てしまいそうだ。

これは、ブレイヴェンの文化か?」


「いえ、俺の生まれた国の文化ですが……今はブレイヴェンにも風呂はあります。

しかも、ここより広く、ここより気持ちいいです」


「なん…だと…それは想像もつかないな」


そんな話をしながら、俺たちはしばしお湯を堪能していた。

シャインの顔が、トロンとしている。

チャンスだ。今は完全無防備なはず。


「……シャインさんは……なぜ〝不殺〟なんですか」


俺は、聞きたかったことを聞いた。


「殺す必要がないからだ。食べるためか、身を守るためか。それ以外、殺生の必要はない」


哲学的な話か。俺は、ここでもう一歩切り込んだ。


「それは……カムイ国の考え方ですか?」

シャインが目を開ける。


「……俺のことを知っているのか?

ここでは〝不殺〟のシャインとしか名乗っていないが……」

シャインが、食いついた。


ここは、頑張りどころだ。

しかし、ここで話し込んだらのぼせてしまう。


「上に戻ったら話しましょう。まずは、風呂を楽しみましょう」


俺の意見に同意したようだ。

それからしばらく、二人は無言で湯舟を楽しんだ。



その後、今度は俺の部屋に招待する。


とはいっても来たばかりなので何も私物はないが。

用意されていた水を用意し、シャインに差し出す。


「あの、シャインさんすいません。これ、半分くらい凍らせられます?」


俺はぶしつけな依頼をする。

風呂上りは、やはりキンキンに冷えた水分が欲しい。


こればっかりは、譲れないのである。


シャインはグラスに入った二つの水を凍らせる。

見事に中に氷ができる。

少しだけ冷えるのを待ち、俺たちはそれを一気に飲み干した。

美味い。無意識に、左手が腰にあった。


「……さて、さっきの話の続きをしますか」

俺とシャインは、立派すぎるソファに腰掛ける。


まずは。自己開示が必要だ。


「……実は俺は、テオロッドから来ました。生まれは別の国ですが、今はテオロッドの民として動いています。

目的は、あなたをここから解放することです」


シャインが一気に警戒の目を強める。


「解放……?その必要はない。誰がそんな依頼を」


俺は言葉を慎重に選ぶ。

「あなたがここにいる間、世界情勢は大きく変わりました。

まず、アークネイヴァーが滅びました。今はオルディアという国になっています」


「アークネイヴァーが……!?なぜだ?科学の暴走か?」


シャインが、初めて感情を見せる。


──やはり知らなかったか。この闘士寮で入ってくるのは、

次の対戦相手の情報と、自分のランクだけだ。

それ以外、外界との情報は遮断されている。

ガレオンも、闘士と社会情勢について話しはしないだろう。


「いえ。執政官グラディオによるクーデターと、その直後の死。政治的な騒動の結果、科学長官のノクスが新たな国を宣言しました。」


俺は、アークネイヴァーでの戦いについては伏せて話した。

大分打ち解けた気はするが、現時点では、敵になるか味方になるかまだ分からない。


重要な情報は、まだ話すべきではない。


「科学長官……ノクス=ルミナスが……

それでは、あの国は科学の道を突き進むということか」

シャインは、顎に手を当て、考え込む。


「二年前のアークネイヴァーによるカムイ侵攻は、

科学発展の抑止を提言したことが原因と聞きました。

──何か、ご存じなんですか?」

俺は聞いた。


シャインは、少し考えながらも、話し出した。


「ご存じも何も……それを提言したのは、俺だ。

俺のせいで侵攻は起き……多くの民が死んだ」

侵攻のきっかけを作ったのは、捕虜となったシャイン本人だったのか。


——もう少し、詳しい部分を聞きたい。


「……なぜ提言を?」

シャインは、昔を思い出すように言った。


「あれは……もう二十年近く前だ。

カムイに、アークネイヴァーの科学者が訪れた。

科学の研究所を弟子に任せ、世界中の旅行をしているという。

カムイ国は、その男を国賓として王宮に招待した。

そこで、その男は…まだ六歳だった俺の遊び相手になってくれた」


シャインは、ゆっくりと話しだした。

「子供のころの記憶だ。その男の名前も覚えてはいない。

覚えているのは、その男が作ってくれた見たこともない玩具。

泡を作る道具や、回りながら空を飛ぶ木。

それと、彼が話したおとぎ話だ」


俺は、その玩具を容易に想像することができた。


まるで……俺の知る、どこかの世界の話みたいだ。


「おとぎ話?」

俺は、続けて聞いた。


「まるで、その男は、見てきたみたいにその話をした。

世界は、人を、国を一瞬で破壊できる兵器を持っている。

それぞれの国は、お互いがそれを持つことを知りながら、牽制をし合っている。

やがて、ある国の領土に人が溢れる。

結果、他国の領土を求める。

その国が禁断の兵器を使用したと同時に、世界中はその兵器を同時に使い、世界は滅亡した。

残ったのは、数少ない人間。

文明も、人々の営みも、正義も、悪も。

すべてが灰になった。

科学は、行き過ぎれば人を滅ぼす。


──細かい部分は覚えていないが、そういう話だった。

子供ながらに、恐ろしいと思ったことを覚えている」



──まるで、元の世界の話のようだ。

そして、その男は、それを見てきたように話した、と言う。

……他の転移者。

その可能性は否定できない。

いや、むしろその方がつじつまが合う。


「……その科学者はその後どうなったんですか?」


「アークネイヴァーに戻った後、事故死したと聞いた。

そして、そのあとを継いだその男の弟子が……ノクス=ルミナスだ」



ノクスに科学を教えたのが……転移者?

だとすると……。

オルディアの異常な速度の科学発展は、その男が支えたことになる。


シャインは続ける。

「俺は、子供の頃のその話をなぜかずっと覚えていた。

そういう話は、お前にもあるだろう?

アークネイヴァーがどんどん科学発展をしていることも、聞いていた。

俺は、次期王として、未来のカムイを、未来の世界を守らなければいけない。

俺は、特使を通して意見を伝えただけのつもりだった。

しかし……アークネイヴァーは即座に侵攻を始めた」

シャインは、その時のことを思い出すように言った。


「侵攻の要因を作ってしまったのは俺だ。

カムイ国は、青の式を駆使して必死に戦った。

俺も、最前線で戦った。

双方、被害は甚大だった。多くの民が……死んだ。

これ以上続けば……本格的に世界は戦争になる。

俺は、自らを捕虜として差し出す条件で、停戦を申し入れた」


シャインは捕まったのではなく、自ら捕まったのか。


「では……シャインさんがここから出ない理由は……」

俺が言うと、遮るようにシャインが言った。


「戦争が再び始まるからだ」


そういうことか。シャインのあの強さなら、とっくに解放条件も揃っているはずだ。


なぜここにいるのかと考えていたが……それは、戦争を防ぐためだった。


「戦争なら……すでに始まっています」

俺はシャインに伝える。


「……なんだと?」


「オルディアは、マルカドールを含める四国で、オルディア連邦という経済連合を作りました。

それを皮切りに、領土を拡大し、世界を牛耳るのが狙いでしょう。

事実、テオロッドの王子は誘拐され、属国化を要求されました」


「王子が……。殺されたのか?」


「いえ。何とか取り返しました。

しかし、両国は緊張状態が続いています。

今にも全面衝突の可能性があります」


「式術と科学の全面戦争か……さらにひどい状況になっているじゃないか」


俺は頷く。


「率直に言います。シャインさんには、ここを出て、カムイに戻ってほしいと考えています。

そして、叶うなら、オルディアの暴走を止めるため、テオロッドに協力してほしいと考えています」


シャインは、その話を聞いて考え込む。


「……お前の話を信じる根拠がない。極めて一方的な見解に聞こえる」


「そうですね。なので、まずは確かめてください。世界がどうなっているかを。

そして、カムイがどう動くべきかを。

もしカムイがオルディアにつくなら……それはそれで仕方ありません。

ただ、ここにいては、世界の現実は見えません」


俺がそう言うと、シャインは俺の目を見て言った。


「その点に関しては、お前の言う通りだ。

真実は、出てから確かめればいい。だが、俺がここを出て、

仮にアークネイヴァー……オルディアが、カムイに攻め込んだらどうする。

その責任を、お前は取れるのか?」


シャインは、俺に聞いた。


俺の話が、嘘だった場合。

いや、真実だったとしても、その可能性はある。


「テオロッドは、カムイの味方をします。

それと……俺が全力で戦います」


俺がそういうと、シャインはきょとんとした顔をして笑った。


「お前が…?一人で何ができる。相手は国だぞ」


「シャインさんも、一人で戦ってきたじゃないですか。

結局国だって、人の意志の集合体です。

一人の強い意志があれば、国だって変えられます」


青臭い、理想論だ。


でも、シャインの話を聞いていて思ったことを、そのまま口に出しただけだ。


俺一人でどうにかできるとは思っていない。


でも、俺一人で変えられるものもきっとあるはずだ。


シャインは、あきらめたように言った。


「……なんだか、昔の俺みたいだな。分かった。乗ってやる。

しかし、ガレオンが簡単に出してくれるとは思わないがな。

そのあたりは考えてあるのか?」


俺の想いは、通じたようだ。


しかし、ここからだが本番だ。


シャインの同意は得た。

次は、ガレオンも納得させなければいけない。


そのためには……

ガレオンが求めることを、やればいいはずだ。


闘技場が湧き上がる、最大の見世物を。


──さあ、一世一代の大芝居だ。


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