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第九十四話 疲労

 疲れた、眠い。


 やっぱり岡田先生に僕達2人のサポートをしてもらうのは失敗だったかもしれない。


 別に先生自体の実力を疑ってるわけでは無いし、それ以外の資金や人脈、知識、経験全て申し分無いが、いかんせん真面目すぎるというか完璧主義というかで。


 連日放課後は特別に訓練してもらい、休日は異世界で実戦も兼ねて先生のフィールドワークの手伝い、それに加えて学校のレポート課題や試験で、僕はもうてんてこ舞いで寝不足だ。


 だからこうして普段から寝ている時間、その隙がある時間はより睡眠に充てて疲労を回復させなくてはならない。


 姉崎さんも大分堪えてるみたいだ。このスケジュールになってからというもの朝恒例の挨拶が無くなり、同じように机突っ伏している。


 そのおかげで変に僕と姉崎さんの中を邪推する事は・・・えー、無くなるはずもなく。寧ろ2人揃って疲れ切ってる様子から更に悪化したとも言える。


 だが今はそんなこと言ってる場合ではない、1秒でも多く体と精神を休ませなくては。


「綾瀬くん、ちょっといい?」


 頼む休ませてくれ。


 顔を上げるとどこか心配そうな表情の百瀬さんが僕に声を掛けてきた。


 姉崎さんだけじゃ無く、皆の前で百瀬さんにまで話しかけられるとなると噂話だけでは済まないかもしれない。これ以上の面倒ごとは勘弁なんだが。


「あ、あー百瀬さん、おはよう、ど、どうかしたの?」


「寝てるとこごめんね。でもどうしても気になって・・・ 茜ちゃんと、綾瀬くんはいつも通りだけど、日を追うごとにどんどん元気が無くなってて何してるのかな?大丈夫かな?って」


 いつも寝てるけど、いつも通りじゃねえよ。


「え、えーと・・・ぼ、僕じゃなくて、姉崎さんに聞ー、けば良いんじゃ・・・」


「あ!ごめんなさい。茜ちゃんがあんな疲れてるの今まで見たこと無くて心配で声を掛けづらくて、私以外に茜ちゃんがよく話してるのが綾瀬くんだから何か知ってるのかなって」


 僕の心配もしてくれ。


 あの事件の件もあり百瀬さんに対するイラつきが有頂天になりかけるが表には決して出さずに答える。


「あ、そなんだ。え、えーっと、お、岡田先生が、僕と姉崎さんの模擬戦を見て、気に入ら、れたのかな? なんか放課後残って僕達に特別に訓練をしてくれてるんだよね、ハハ」


 どうせ皆んなは僕達が放課後残ってるのはなんとなく気づいてるだろうし内容はいつかバレるから、変に誤解されるより今言う方がいいだろう。


「え! 茜ちゃんと綾瀬くん、2人で訓練してたの!?」


 え?


「え、僕も前から残って・・・た」


「全然知らなかったよー」


 何か弁明したかったが、周辺視野に映る仲良し男子グループがこちらには聞こえないように何かを話している。


 いつもなら僕とは関係ない話題の筈だが、チラチラとこちらを伺いながら喋ってるようで、十中八九僕の内容の筈だ。


 やってしまった。自ら地雷を踏み抜くとは思ってもいなかった。


「そっかー、2人で訓練して疲れてたんだね! それなら仕方ないか。でも無理しないよう気を付けてね」


 全然仕方なくねえよ。ヤベェよ。


 スタスタと用が済んで百瀬さんは席に戻って行ってしまった。


 僕は素早く体勢を戻し寝ようとするが、間に合わなかった。


「え? お前放課後訓練してんの? ハハハッ、おいおい真面目かよ」


 肩を馴れ馴れしくボンと叩かれ、思わずビクッとなってしまった。


「何何? 女子とは話せるけど男子とは話すの慣れてないの? 何それ、めっちゃ羨ましいんだけど」


 このクラスの筆頭男子グループの切込隊長こと真田くんが僕にすかさず話しかけてくる。


「でさー、2人って何? 付き合ったりしちゃってんの? いいなー意外っつうか、尊敬するわー」


 目が全然わらってない。彼はこの前姉崎さんに玉砕されて以降、ちゃんとした会話は出来てないらしい。それもそうだ放課後と休日は大体僕と先生と3人で過ごしてるから話す機会なんて学校くらいだが、過去に玉砕したのと今の疲れ切って寝てる様子からその隙もない。


 まぁ、安心して真田くん。僕もフラれてるから。言わないけど。


「い、いやー、ハハッ・・・全然、そんなことぉないよ。訓練も、終わったらすぐに姉崎さんは帰っちゃうよ」


「あーそう?へー・・・」


 なんか言えよ!こっちはもう喋ること無えよ!頼む寝かせてくれ。


 こちらの願いが通じたのか、「じゃっ」とだけ言って元のグループに戻って行った。


 取り敢えず僕の平穏は保たれた。そう思っていた。


 踏み抜いた地雷は一つでは無かった。

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