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第九十三話 交渉

 告白騒動により僕のメンタルはズタボロになったがようやく話を進められそうだ。


「僕が先生にお願いしたいことは一つ」


「金をくれ、とかじゃないだろうね」


「そ、そんなんじゃないですよ。えっと・・・先生にお願いしたいのは僕たちを、サポートして欲しいんです」


 先生は考え込むように腕を組みながら聞き返す。


「内容がフワッとし過ぎてるわね、もう少し詳しく話してくれない」


 異世界探索は思っているよりも難しい、これが姉崎さんと2人で異世界に行ってわかったことだ。


 当たり前かもしれないが、物事とは授業で習って蓄えた知識だけではどうにもならない事ばかりだ。異世界探索はその最たる例なのかもしれない。


 あの世界は学生2人でどうこうできるような甘いものでは決してない。経験や知識、装備に人材、あらゆる要素を揃えないことにはとてもあの世界ではやって行けない。そこで・・・


「そこで、知りたい事を教える代わりに、この私にスポンサーになって欲しいわけね・・・ 笑えるわね」


 嘲笑ぎみに先生は鼻で笑い、あしらうように僕を見る。


「あまりにも一方的すぎる提案ね、私のメリットが少な過ぎるわ。そもそも、私があなたの話を聞かずとも事件の真相に近づいてる事実を忘れてないわよね?」


 自信満々の表情で先生は更に話を続ける。


「そこでどうかしら? あなたは私に事件の詳細を話す、私はこの学校にいる間あなた達と一緒に異世界に行ってサポートする。それで手を打たない?」


「ちょ!そんなの・・・」


「ダメです」


 あまりの速さの僕の即答に先生だけじゃなく、途中何かを言いかけた姉崎さんまで、呆気に取られている。


 だが先生はすぐにも険しい表情を作り僕を睨みながら口を開く。


「綾瀬くん。子供じゃないんだから、駄々をこねてもどうにもならないわ。私だって忙しいの、ここまで譲歩したのだからあなたもそれで手を打ちなさい」


「疑問に思わないんですか?」


 自分の求める回答が得られず、若干イラつきが見え始めるも、大人と子供という立場にそのイラつきをグッと堪え言葉を返す。


「何を、かしら?」


 僕は背後に今の今まで大口を開けたままの門に目配せする。


「先生はこの学校に来て高いマナレベルや変に実戦慣れした熱量の違う僕らに目をつけ観察してたんですよね?」


「そうね。『だから僕たちは他とは違う』と言いたいの? 確かにあなた達2人は周りよりレベルは高いわ、でも所詮レベル2そう珍しいものではない、運よくこうして門を見つけたにすぎないわ」


 そろそろ本題に入らないと、何とは言わないが袋の緒が切れそうだ。


「2つです」


「?」


「先生が僕たちの条件を呑んだ方がいい理由は2つあります」


「・・・ハァ、いいでしょう。最後のチャンスです」


 もう半ば諦めの表情で、もうさっさと終わりにしてくれと言わんばかりだ。だがこれを聞いて同じような表情でいられるか見ものだ。


「まず一つ目、結論から言います。僕は条件はありますが・・・門の出現予測ができます」


「え!? 何ですって?」


 僕の口から出た予想外、というか規格外の言葉に目が飛び出る勢いで驚く。


「この門も僕が見つけた物です、決して運ではありません」


 さっきまでのイライラして呆れた表情から一転、何かをものすごい勢いで考えている、先生の研究者としての顔が現れる。


 門は頻繁に現れるも出現を、予想、予測するのは困難で、出来たとしても一度開いた場所にもう一度開くのを待つぐらいしか方法が無い。人通りの多い目立つ場所に開いた門というのは当然ながら取り合いになりやすく、その権利確保のために金も莫大にかかる。


 逆に目立たない山奥や自然に埋もれた門を見つければ競争になりにくいが、机上の空論でしかない。


「それは、あ、あなたのスキルで見つけた物なの?」


「いえ、そういうスキルを持っているわけじゃなく、僕のスキルを応用して見つけてるだけです」


「・・・まだ、100%それを信じることは出来ないわ、でも・・・それがもし本当で、それを見せて証明してくれるなら、あなたの条件を呑んでもいいわ」


「わかりました、近い内に必ず見せます。もう一つは聞かなくていいんですか?」


「ああそういえば、正直最初の1つだけで頭がいっぱいになって忘れてたわ。一応聞かせて」


「あの事件についてですが・・・先生は僕から話を聞かないと決して真実には辿り着きません」


「それってどういう・・・」


「ちょっと!待ってもらっていいですか?」


 今まで黙っていた姉崎さんが声を荒げ間に入る。全くいい所なんだから邪魔しないでよ。勘違いで僕をフッたくせに……


「あんた何でそんなスラスラ喋れてんの?」


 あ


 その瞬間、今までドヤ顔で先生と交渉していた自分を思い出して急激に恥ずかしくなり顔が真っ赤になってしまった。


「あ、いや、え、えと、あの」


 何も喋れなくなっていた。

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