第九十一話 交渉開始
「それで、ここまで一緒に来たってわけね」
「ご、ごめん……」
開口一番、温度を感じない呆れられた声色を聞いて、僕はただ一言謝ることしかできなかった。
「まあ、そんな話はもう良いじゃないか お互いこれからは仲良くやりましょ」
事の発端である岡田先生は全く気にする素振りがないことに、少しは気にしてくれと心の中で呟いた。
あのお話というか誘導尋問というか僕のただの自白に近い自爆の後、早速先生は休みの日に僕達の異世界探索に付いてくることになった。
是非僕達と親睦を深めたいとか何とか言っていた。
もちろん姉崎さんにこの事を伝えたが、意外にもメッセージのやり取りでは淡白な感じで、怒ってないかなっと思って安心していたら出会った瞬間これで、僕の心のHP残量はもはやゼロになる寸前だ。
「それにしてもよくこんな門を見つけたね〜、感心するよ」
そんなズタボロの僕を余所に先生は会話を挟んでくる。
あのお話でいろいろ聞かれた僕だが話した内容は、僕と姉崎さんの2人で異世界に行ってレベリングをしている事だけだ。
事件のことを聞かれ動揺はしたが、当たり障りない事しか話さなかった。
先生はついこの間までバリバリの研究職員だ。もし話でもして研究や実験に強制的に付き合わされて本来の目的が邪魔されるのだけはゴメンだからだ。
まあ、変にはぐらかしたせいで付いて来られたと考えられなくもないが。
「ところで、姉崎くんはスキルがあるから百歩譲って良いとして、綾瀬くんは武器は使わないのかい?」
「そ、それは・・・」
さすがにデータ上存在しない事になった物でも、合成棍を気軽に学校の人間に見せたら大変なことになると思って今回は持って来なかったけど返って怪しまれてしまった。
(ど、どうしよう)
「ああ、こいつはいつも囮役なんで武器は持たないんすよ」
(うっ)
姉崎さんが哀しくなるようなフォローをすかさず入れてくれる。
「あらそう、てっきり長柄の武器なんか使ってそうな感じがしたのだけど」
「えっ!? グフッ!!」
思わず驚いた瞬間、脇に肘鉄が炸裂し口から空気が漏れた。それを何処か呆れるように先生は見ていた。
「ハア、とにかく私が受け持つクラスで死人を出すわけにはいかないわ 綾瀬くんこれを」
そう言って手渡されたのは警棒のような片手で振りやすい棒状の武器だ。
「取り敢えず、今日はそれを使いなさい」
死人を出したくないなら僕らが異世界に行くのを止めるとかしろよ…… いや違うか、勝手に行かれるくらいなら見ていた方がって感じか。
「さて、準備も整った事だし早速行きましょうか」
「イヤイヤ、なんで先生が仕切ってんすか」
「? 当然でしょ私が1番経験豊富で、そもそもあなた達の担任なんだから」
「てか、綾瀬から聞きましたけど あたし達に付いて来るのとあの事件の真相究明に何の関係があるんですか? 綾瀬が事件のこと聞かれて狼狽えたのは普通にショックだったからですよ」
「それよ!」
「え!?」
「そこが気になるのよ」
急に声を荒げる先生に流石の姉崎さんもびっくりして後退りした。
「私はこの学校に赴任してあの事件についていろいろ調べたわ そしたらね、なんて言うの、違和感 そう違和感みたいなモノがそこら中に見つかったの」
だんだんと熱を帯びる先生に僕らは黙って聞き入ってしまった。
「私の受け持つクラスは全員で19人中退者退学者共にゼロ、だけど他のクラスは今は違うけど入学当初は20人、学年は全部で3クラスだけど、あなた達のクラスだけ最初から1人少ないの、しかもその年は定員割れもしてなかった」
「まだあるわ、学校関係者片っ端から事件について聞いて回ってたら学校が運営する寮の寮母さんが奇妙な事を言ってたの」
それを聞いて思わず口を挟んでしまった。
「覚えの無い誰かの私物が置いてあった、ですよね」
「ちょっと綾瀬」
それを聞いてやはりと言わんばかりに先生の口角が上がる。
「やっぱり、何か知っているのね 詳しく聞いても?」
「そ、それについては・・・条件があります」
「・・・聞かせて頂戴」
僕は何としてもアイツを見つけ出す。
カクヨムにこの作品をリメイクしたやつを載せようと思ったんですが、頭がパンクしたなので辞めました。




