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第八十六話 赴任

 いつもと変わらない日々、だけど何処か物足りない日常。時間だけがダラダラと過ぎて思わずその流れに身を任せてこのまま何も無くただ灰色のままに生きてしまいそうだ。


 アイツとのリンクを毎日確かめる。その都度繋がってることに安堵するが、同時に疑問も生まれる。


 アイツは案外向こうで上手くやっているのかもしれない、と。だってそうだろ? アイツが穴に落ちてもう数ヶ月経ったが未だにリンクが切れない。てことは向こうで何らかの生活基盤を整えて普通に暮らしてるのかもと言う荒唐無稽の考えが浮かぶのも無理もない。


 もしそうなら一々学生2人で危険な異世界に出向かず、ちゃんと訓練を積んで国でも企業でもしっかりとした組織に所属して言われた事をこなしてアイツのことは忘れて地に足つけたほうが良いのではと思ってしまう。


 アイツを助けるだとか正直言っておこがましいように思えてくる。何様だって感じでバカみたいな自分がなんだか笑える。



「………………」



 あの2人を助けたのはハッキリ言って凄いとしか言えないし、アイツの底知れない勇気に僕も助けられた。誰もがそう簡単には持ち合わせて無い力だと思う。


 だけど……


 ……



 ・・・



「せ、くん」


 遠くの方から誰が読んでる気がする。


「綾瀬くん」


「は!?」


「やっと起きたー」


「ご、ごめんなさ、えっと、も、百瀬さん」


 クラスメイトの名前が一瞬出て来ないくらい寝ぼけてしまっていたようだ。


 彼女は 百瀬桃花(とうか)


 茶髪のおさげと、少し大きい部分が特徴的な女子生徒だ。


 普段は姉崎さんとよく話していて人当たりの良さそうな感じだが、どことなく良いお家柄の雰囲気というか、育ちの良さみたいなのが所作から垣間見え、何となく話しかけづらい人物となっている。


 本人にはその自覚は全く無いようで、つまるところ男子達が勝手に百瀬さんを高嶺の花にしてしまっているだけなのだが。


 僕にとってはちょっと違う意味で印象的な人だけど。


「忘れ物取りに来てよかったよー、綾瀬くんまだ寝てるんだもん」


「あ、いや、えっと、き、今日って何かあったんだっけ?」


「今日は珍しく全校集会があるから皆んなもう行ってるよー」


「あ、そうだったん、だね、ごめんうっかりしてた」


 こう言う時に限って姉崎さんは声を掛けてくれない。話しかけられて困ってると行った手前、こんなこと思うのはお門違いだが、少しだけ腑に落ちない。



 うちの校舎に体育館と言う名称のものは無く代わりに訓練場が校舎の地下にいくつもある。今日の集会はその中でも1番広い第1訓練場で行われる。


 少し駆け足で向かったがそこまで遅れてるわけではなくギリギリ間に合った。


 学年とクラス毎に並びその場に座って話を聞く。ある意味学生らしいイベントだ。内容は何も入ってこないけど。


 皆、寝ないようにするので精一杯って感じだ、中には夢の中に旅立ってしまう人もいるけど。


 だが、ここで少し驚きのニュースを聞かされる。なんと日本の異世界研究機関から教師及び教官として1人この学校に赴任、するらしい、というよりしたらしい。


 それもこのクラスの担任として。


 すると1人の女性が横からスタスタと歩いて生徒全員の前に立つ。


「はじめまして皆さん、私の名前は『岡田さなえ』と申します以後お見知り置きを」


 岡田と名乗る女性が挨拶をしてしばらく生徒たちを見回した時だった。何となく岡田という女性と目が合った気がした。


 僕は咄嗟に目を背けた。

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