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第八十四話 慣れた日常

なんと!総合評価が100ポイント行きました!!

この作品を見てくれて本当にありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします!!!

 背の高い草が生い茂る草原を1人の青年が息を切らしながら走り草木を掻き分ける。


「ハァ、ハァ」


 青年、よりも少年に近い印象の若い男で、クリーム色の長い髪を揺らし、手には黒く細長い得物を持っている。だが何かに追われているのかその表情は決して明るくない。


 後ろを振り返ると獰猛な牙を覗かせ唾液を撒き散らしながら黄色に光る鋭い眼光で追いすがる狼が見える。


 男はマナという超常的な力で強化されているが、それは向こうも同じ。寧ろ、人と狼では基礎スペック的に見て追いつかれるのは時間の問題だ。


 足音が直ぐそこまで近づいている。口呼吸特有の息遣いが背後に迫り背中がざわつく。


「あと、もう少し」


 手に持つ得物で反撃したいが、そんなことすれば()()が台無しになったしまうため焦りをグッと堪え走り続ける。


 すると目印の巨大な岩が見えてきて、早くこの危険な役から解放されたいという一心で足を更に早めラストスパートをかける。


 マナで更に足を強化しオリンピック顔負けのスピードを出して今にも追いつきそうな狼から距離を離そうとする。


「うあっ!?」


 だが、不運な事に急に足を早めたことで地面のちょっとした窪みに足を取られてしまう。


 手で体を支え転びはしなかったものの当然狼はその隙を逃すことなく飛びかかってくる。それを察して咄嗟に真横に飛び退き一撃は回避したが、完全に足が止まり引くに引けない状況だ。


 この狼は『荒牙』と呼ばれ、同レベル帯では防ぐ手段がほぼ無い攻撃力の高さを誇る危険な魔獣だ。逆に言えばそれ以外は普通の狼と何ら変わらないと言えるが、結局は狼なので人間からして見ればどっちにしろ脅威なのは変わらない。


 噛まれれば一巻の終わりのため緊張が増し、それが却って体を強張らせてしまう。


 自分の事を殺そうと狙う眼光から目が離せない。少しでも気をそらした瞬間、飛び掛かってくる事を予感してるからだ。


 ジリジリと歩み寄られそれに合わせ後ろに下がる。


 そして……


 背後から聞こえた草が擦れる音に一瞬気を取られた隙に狼が飛び掛かる。


 得物を咄嗟に前に出し狼に噛ませガードするも押し倒されてしまう。狼は一度得物から牙を離そうとするが、寧ろこちらから得物を押し込み牙を離させないようにするがこのままでは万事休すだ。


 どうにかこの状況から脱するか考えを巡らせるが、唾液がボタボタと垂れる狼の口元が薄く光始める。


「マズい!」


『荒牙』の名が示す通り、牙を使ったスキルが発動されようとしていた。今喰らい付いているこの得物ですら容易に砕かれ、体のどこかに咬み付かれでもしたら狼の昼食になること間違いなしだ。


 もう終わりか、その時。


「オラァ!!」


 高く勢いのある聞き慣れた怒号が聞こえ、目の前の狼が横に吹き飛ぶ。


「早く立て!」


 髪の長い金髪の女性にそう言われ、すぐさま立ち上がり構えを取る。


 狼はフラッと立ち上がるも下を向いていて息も絶え絶えの様子だったが、一気に間合いを詰め女性の方に飛び掛かってきた。


 口元は青白く光っていた。狼は敢えて下を向きスキル発動をこちらに悟られないようにして不意を突いてきたのだ。


 だが、女性は難なく突撃を躱し、通り抜けざまに拳を振り下ろす。ズドンと重い音が鳴り狼が地面に叩きつけられる。


 狼は完全に動かなくなり、確かめると既に息は無くなっていた。


「つ、疲れた」


 気力が抜けその場に座り込んでしまう。


「たく、何疲れてんのよ。綾瀬は殆ど何にもしてないじゃない」


「で、でもここまで連れて来たのは僕だよ」


「走るのは誰でも出来るし、そもそも指定地点まで連れて来れてないでしょ!」


 大きな岩を指差しながら女性が、姉崎茜がしょぼくれる男性、綾瀬志狼を怒鳴りつける。


「いや、でも」


「いやもでもも無いから、次からはしっかりしてよね」


 まるで、そこで話は終わりと言わんばかりに話を区切られ僕はそれ以上何も言えなかった。

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