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第八十三話

 おっ見えてきたな。


 昼なのに薄暗い森を抜けると一変して春の陽気を感じさせる程よい暖かさと心地よい風が吹き抜け、清涼で耳ざわりの良い音を奏でる川が俺を出迎える。


 その川にかかる橋を渡り暫く歩くと見えてくるのが広く綺麗な庭園を擁しつつもそれにも引けを取らない豪華さと華やかさが感じられる豪邸が見えてくる。


 ここに来るまでコイツに聞きたいことをいくつか聞いたのだが、知らないの一点張りで結局のところ何一つコイツのことは分からなかった。


 どこか、はぐらかされている感じもしたが俺はそれ以上何も聞かなかった。ま、コイツにも言いたくない事の一つや二つあるってことだ、寧ろ人間味があって親しみやすいまである。それに今回のMVPは間違いなくコイツだ。コイツが居なきゃ今頃あの暗い世界に居続ける事になってたところだ。


 それにしても驚かされたな、まさかこの体にまだあんな力があったなんて。遠くの空を見上げると、俺の開けた穴は塞がったものの空に漂うベールの挙動が少しおかしい。


 普段ならオーロラみたいに空を割るように流れるはずが、螺旋状に天高く登っている。俺の放った衝撃で空のマナの流れが乱れてしまった影響だろうか、いずれにしてもこれ以上わかりそうもないし、これはこれで幻想的な光景だから良しとしよう。


 それに良かったのはこれだけでは無い。これは奴のスキル、つまり異空間に関することなのだが、俺の推測になるが奴の異空間はこの世界に被るように存在していた、と言うことだ。


 俺が奴の体ごと異空間を突き破った後、俺が空に向かって撃ち放った拳の衝撃で突き破られた空間の壁のようなものが完全に取り除かれたようだ。


 なぜそんなこと分かるの?って感じだが案外答えは単純だ。俺が奴とこっちの世界で戦った場所はもちろん知らない場所だったが戦いが終わった後、気づくと遠くの方に見覚えのある建物が見えた。


 この両刃剣を持っていた騎士と戦った城だ。


 すぐに俺はピンときた、リルと一緒に向かったあの避難場所。あそこでリルの母親に開けてもらった門の先はあの屋敷だったって事を思い出し、もしかしたら位置関係が同じなのかもって気づいた。


 あの騎士のことも気になっていたから一旦俺は城に戻ることにした。


 道中何体もの首無し達を見つけた。まあ、俺を見るなり逃げ出してしまったんだが。そんなこんなで城に着くと首無し騎士が動けなくなったままだったので鎧やら何やらにかけた暗示を解いた。


 最初は俺を警戒して剣を抜いて構えていたが両刃剣を返した事で何かを察したのか、どこか俺に感謝してる感じだった。


 しょーじき勿体無かったなぁ、あの剣。欲しかったなぁ。今だに操られてるままなら何の気兼ねなくあの両刃剣を持っていけたのに。


 まぁ、コイツに聞いてみたところ、いつでも同じ物が生成出来るって言ってたから問題は無いのだが、でもなぁー、オリジナルを持ってたいよなー、はぁ。


 ちなみに、騎士にスキルでリルの所にこれから行くと伝えたが騎士は行く気がないみたいだった。伝えることは伝えたし俺もこれ以上何も言わなかった。


 ま、その話は一旦置いといて騎士とのやりとりを済ませた俺は城から俺と奴が戦ったところの位置を見て大体だがこの屋敷の場所に目星を付けてやってきたって訳だ。結果は見て通りだ。


 屋敷に繋がる道の門扉が勝手に開く。どうやら使用人たちが待機していたようだ。俺は堂々と敷地に入り、あの時と一緒のメイドさんの案内で屋敷の前まで歩いて行く。


 屋敷の前にはリルとそれを大事に抱える首無しお嬢、それとこの屋敷の全ての使用人たちが俺を待っていた。まるで英雄になった気分だ。


 首無しお嬢とリルが歩み寄り深く礼をしそれに合わせて周りの使用人たちも深々と頭…… は無いが礼をする。。少し小っ恥ずかしい気分になったが大人しく我慢する。


 思い出せば、結果だけ見ればこのお嬢様にいいように使われただけだが、新しい事に気付けたし、何より誰かの為にヒーローになるのも悪い気がしない。


 完全な自己満足なんだけどな。


 リルが俺にめちゃくちゃ話しかけてくる、楽しげに興奮した感じだ。


 内容は分からないし、コイツに聞く気もない。だって、俺はもう行かなくっちゃ。


 俺がここにきた理由は一つ。


 俺はリルにある物を渡した。


 それはリル、いや首無しお嬢にも関係する物。あのペンダントだ。


 俺の体内に大事に保管してあったから傷一つない。汚いとかは言わないでくれよ、体液とか別に何も付いてないし。


 受け取ったリルは泣きながら、そして笑いながら俺に一言何かを言う。



 アリガトウ、ダテ。


 わかってるよ。初めて、いや二度目かなこれでこんなに気持ちのこもった「ありがとう」は。


 だけど…… 俺を甘く見るな。


 するとペンダントが輝きだし、光が人型となっていく。現れたのはリルの母親だ。


 ペンダントに込められたマナが消えると同時に母親も消えてしまうならと、しこたま俺のマナをペンダントに込めておいた。



 やっぱチート、裏ワザ、バグ技はこうでなくっちゃな。


 ナニガ?


 え? そんなの決まってるだろ。楽する為とかじゃなく。本来観れないはずのイベントを観るため使うってこと。


 フーン


 見ろよ、あのリルの笑顔。俺じゃなきゃ見られなかったぞ。

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