第八十二話
俺は気づくと暗い世界から一変して太陽が降り注ぎ緑豊かな大地の空へと放り出されていた。
青い空に白い雲、風とそれになびく草木。色が豊かで明るい世界はなんて素晴らしいんだ、と感動していたいが絶えず溢れ出すマナを制御するのでそれどころでは無い。
例えるなら、車の運転中急にアクセルを踏まれる感覚に近い。発進した時にはもう遅く、おまけに俺にブレーキは付いてない。
振り返ると明るい背景の中に大きくヒビ割れた、まさに次元の裂け目と呼べるような穴と俺の体当たりをモロに喰らい裂け目から俺と一緒に飛び出して来た奴の姿が見えそのまま地面に倒れ込んだ。
次元を超えた時の衝撃のおかげで失速する事ができた俺は奴に遅れて地面に着地する。
だが・・・
ヤバい、ヤバいって!
今も尚溢れ出てくるマナに俺はパニックを起こしていた。
止めろ止めろ!! これ止めろ!!
このまま行くと破裂してしまうのではないかと思わず確信してしまうくらいのマナが絶えず流れ出して、空間が歪むどころか近くの物を吸い込み始め、もはやブラックホールのような何かに成りつつある。
それに事故とはいえ奴をこちらの世界に連れてきてしまったが大丈夫か、と言う懸念もある。てか、あの体当たりをくらって生きているのか疑問だが。
ヤバい、そんなことよりも早いとこ、このマナをどうにかしないとマズイ。
周りの物を手当たり次第に吸い込み、俺を中心に空気が流れ込み風が吹き荒れる。
おい! これやり過ぎだって!
スマンスマン
誤って済む問題か! どうにかしろ!!
ムリムリ、ブッパナセ
ぶっ放すって、何処にだよ! 何処にだよ!!!
アイツアイツ
目の前で倒れていた奴がピクリと動くと奴の巨体を囲うように球体の陣が描かれ徐々に奴はその陣ごと空中に上がっていく。
うわー、あいつの下半身って芋虫みたいな感じだったんだな・・・ 組み合わせがキモいな。ん?
奴の散らばった肉片が集まりだし体が修復されていく。奴が復活した瞬間明るかった周囲が薄暗くなっていく。何やら薄い膜のようなものであたり一帯が覆われたようだ。
ハヤクハヤク
分かってるって。
何が起きるかは分からないが、よからぬ事が起きるのは明白だ。だが、今の俺は暴走状態に次ぐ暴走状態。一歩でも走り出そうものなら地平線の彼方まで吹っ飛んでいくだろう。故に
慎重に・・・ 慎、重に。
一歩一歩丁寧にゆっくり、確実に奴に出来るだけ近づき狙いを定めていく。
だんだん周囲が暗くなる。まるで俺が先程までいた異空間と同じ空気感になり始めた。
奴も何らかの儀式に集中しているためか妨害が特に無いのは不幸中の幸いだ、かと言って俺の様子を奴は見ているはずだ悠長にしている暇もない。
俺の方もマナが集まりすぎてその場が陥没していくほどだ。
これを下向きに打ったらヤバそうだな。
ダメダメ! ゼタイダメ!
大丈夫、流石にそれくらいわかるって。
コロンデモ、ダメ!
わかったって!
太陽の光がもう僅かにしか感じれないほど暗くなる。草木が永遠の眠りにつき時が止まったように静まり返る。
そして……
俺はゆっくりと飛び上がり、奴目掛けて拳を撃ち放った。
・・・
は!? 俺どうなってる!?
気が付くと俺は空を見上げ倒れていた。体をあちこち触り異常がないか確かめる。どうやら特に問題はなさそうだ。
周囲を見ると俺を中心に広がるように森が薙ぎ倒され地面はあの赤い隕石との衝突の時と同様に白く砂漠化している。
おーい、大丈夫そうか?
ウエ、スゴイ
一応コイツに呼びかけて大丈夫そうか聞いて見るとすぐに返事が帰ってくるので相変わらず大丈夫そうだ。そしてコイツに言われた通り上を見上げると……
……。
本来空の向こうには宇宙があって星々が輝いて幻想的な光景が広がっていると思ってたしそれは異世界でも変わらなかった。だけど今頭上に見えるのは空でも星でも宇宙でもなく、唯の真白く何も無い空間が無限に続く様子が見える穴だった。
十中八九俺が開けたものなのだろうがこれだけの規模になると何処か他人事みたいに感じてしまう。
というか、何処となく門に似ているような気がする。あれに入ったらもしかしたら地球に戻れるかもとそう思ってしまう。試しにちょっと覗くだけでもと飛び上がろうとすると。
・・・ヤメトケ
まさかのコイツに止められてしまった。やっぱりこれを解決しない事には先に進めそうにないな。
お前は一体なんなんだ?




