第七十七話
それにしても不気味だな、この道は。
門をなんとか抉じ開け次元の狭間に置いていかれずに済んだ俺は再び街に訪れていた。
元々この異空間に満ちた闇は俺が粗方吹き飛ばしたが、街から向かいの二つに分断された山脈の奥に見える巨大なドームとそこからここまで伸びるこの道、それから道の周りに付いたデカい手形は相変わらず黒く溶けた何かが不気味に蠢いている。
試しに黒いドロドロに触ってみると生ゴミでも触ってるみたいなベチャベチャな感触でついでにメッチャ纏わり付いてきて気色悪かった。幸い臭いがなかった事と寧ろ見た目が黒くて良かったとすら思う。
味はー、うん。試す気になる訳がない。
元々ここを出る事が目的だったが、リルに仇を取ると約束してしまったし、そもそもこんな光景を見たからにはここに巣食う何かを放置してはおけない。
それに…… バッドエンドに成らずともノーマルエンドじゃあ締まりが悪い。目指すならやっぱりハッピーエンド一択だ。
でも正直なところその場のテンションと言うかノリというか勢いだけでここに戻ったと言っても過言では無い。もし異空間の主を倒したとして果たしてここから出れるのか?という疑問、心配が今になって頭の中を反復横跳びし始める。
ここまで来たからにはやるしかないのだが、若干足取りが足取りが重い。
まあ、最悪出られなくてもコイツがいるから話し相手には困らなそうだから良しとしよう。
さてと、じゃあ早速お宅にお邪魔するとしますか。
マナが身体中に広がり元々生物の域を超えた身体能力が更に凄まじく強化されていく。若干残念なのは今だ攻撃的なスキルが一つも無いということだけだ。
辛うじて生成スキルで武器を作ったり部位に重ねて擬似強化したり、腕などを生やして手数を増やすくらいは出来るがあくまで補助的な役割が精一杯なのが現状だ。
暗示や生成、その他俺の知らないスキルも含め現状あまりにも特殊なスキルが多すぎる。無いものねだりというか隣の芝生は青く見えるというか、一つくらいは『剛腕』や『斬撃』みたいなメジャーで使いやすいスキルが欲しかった。
ハッキリ言って俺が『剛腕』でぶん殴ったら、地球割れると思う。マジで
ま、今でも十分強いから良いんだけど。
纏うマナの質がどんどん上がっていく。マナは本来肉眼では確認できないが、操作して集めたりスキルを使うなどして見る事が出来る。
だが俺の場合はそれが少しイキ過ぎている。
身体中に莫大なマナが集められ密集した結果、俺の体は完全に黒く染まっている。光すらも俺のマナの重力を振り切れず全てが呑み込まれ、その影響で俺の身体周辺が吸い込まれるように歪んでいる。
何もしていないのに地面が若干沈んでいる。
あれ? 民族少年と戦った時よりマナの出力が上がってるみたいだ。マジかよ。俺まだ強くなるのか。
黒に染まった体は輪郭が分かりにくくなったものの、その口元に浮かべた妖しい笑みだけ唯一暗闇から覗かせる。
向こうに見える黒いドームを凝視ししっかりと狙いを定める。
心の中でカウントダウンを…… サン、ニ、イチ。取ろうとしたらコイツが勝手にし始め、仕方なくそれに合わせる。
ゼr
その瞬間凄まじい力で蹴り上げられた地面が爆発し地形を帰る。
音速は優に超え、軌道にあった物は灰燼に変え、軌跡には何も残らず、闇よりも暗い一筋の黒い彗星と成ってドームへと殴り込み、直後烈火の如き轟音が響き渡る。




