第七十二話
それにしても広い城だ、歩いても歩いても目新しさが尽きない。扉を開ければ荒れつつもかつての華やかさを感じさせる内装が一々飛び出してくる。
次の部屋もまたその次の部屋も、いい加減飽きてくるようにも思えるだろうが不思議といつまでも見ていられる気がしていた…… 俺だけが。
リルとコイツにこのての感覚、美しい物とかを眺めていたい的な高尚は感覚、情緒がこの2人の頭から欠如してるみたいだ。
リルは幾ら貴族と言ってもまだ子供、このての感覚に疎いのも分かるが、コイツは仮にも俺の頭に住み着いてるのなら一つや二つ高尚な感覚を持っていて欲しいものだが、それを言うとまた怒り出すので今は黙っておこう。
あまりにも二人から急かされるためやむを得ず俺は近くの適当な部屋に入り、窓を突き破って城の外壁を登り始めた。
ガシガシと特に何に邪魔されることも無く平然と外壁を上り数分も経たないうちに城の一番高い塔の先っちょに到達した。
眼下には都市が広がり、見渡せば俺とリルが出てきた洞窟も遠くの方に見える。だが、振り返ると自分達が通ってきた場所とは打って変わって都市の先は真っ黒い闇に覆われていた。
心なしか徐々に押し除けた闇が迫って来るように感じる。
取り敢えず箱を開けリルに景色を見せる。屋敷では何やら遠くを見ていたようだが満足できずにここまで登って来る羽目になったが果たして…… ん?どうした、俺の顔に何かついてる?
リルが俺の顔をじっと見つめる。この子何かあると人の顔を凝視する癖があるな。まあ、それはいいとしてどうしたんだ一体?
「グワー」
え?
「・・・グワーー!」
……えっとおお、お? どうし、ええ。
「グワーーー!!!」
今までは意味は分からずともリルが何かを喋っているのは分かっていたが、今回は全く分からない。
えっとなんで喋ってるか分かる?
……グワー
は?
グワーー
いや、今は真面目に教えて欲しいんだけど。
グワーーー!!!
壊れた。
「グワー!」
グワー!
外と内、両方からグワグワ言われ頭がおかしくなりそうだ。
どうしちゃったんだよ一体全体。
そんな察しの悪さを見かねたリルが暗くて何も見えない方に向かってまたもや叫び始めた。
さっきまで俺に向かって叫んでいた時よりも大声で闇に向かって声を上げる。
俺に何かをして欲しいことは分かるんだが…… 闇に向かって、闇に…… ああ、そう言うことね!
俺はリルの入る箱を閉じ、更に自分で生成した別の箱にリルの箱を入れ保護する。
要するにあの闇をどかして欲しかったんだな。
……オソイ。
何か言ったか?
ナニモ。
チッ、まあいいか。さてとリルは結構遠くの方を見たがってたからな本腰入れてやるとするか。
・・・
恐怖
その日異世界のあらゆる生きとし生けるもの達やそれ以外の、法則の外にいる者たちも例外無くそれを直感した。
これで二度目だ。
得体の知れない、知る由もない存在、化け物がまた何処かで終焉を振り撒き絶望でその地を染め上げているのだろう。
その直感に対し皆、無意識に祈ることしかできない。
手のある者は合わせ、無い者は頭を垂れる。
神を感じたことない者達はおろか、その概念すら無い者、皆一様に何かに祈りを捧げた。
どうか。
どうか……




