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第七十話

 どうやら、リルとこの騎士は知り合いだったようだ。さっきから満面の笑みで騎士に話しかけている。コイツの翻訳によるとこの騎士はリルの命の恩人らしい。


 だが、話しかけられてる当の騎士様は何やら苦しんでいる様子。頭を抱え(無いけど)何かに抗うように悶えている。


 今まで襲ってきた首無しに対する違和感とこの首無しの騎士の様子を見るに、およそ何かに操られているのは確定的だ。


 え? そういえば両断されてなかったか?だって、全然問題無い。斬られた瞬間傷口から腕はやして離れた体を掴んで引き寄せてくっつけたから。


 だけどどうするか、この騎士をここで始末するのは簡単だ、悶えてる今なら隙だらけだからな。でもリルの恩人となると話が変わってくる。流石に目の前で恩人を嬲り殺すのは如何なものかと、と言うわけだ。


 かと言って放置するのもな〜、この異空間の支配者的な何かとこれから恐らく戦うわけでその時こいつに邪魔されると結構厄介だ。


 それに、リルの恩人なら尚更助けてやりたい。う〜ん…… 暗示スキルの効きも悪いしどうしたもんか、暗示で命令を上書きできれば楽だったんだが、かなり強力な支配力で俺のスキルが掻き消されるみたいなんだよなぁ。


 やっぱり元凶を消すしか今のところ解決策が思い浮かばない。かといって放置もできない。うううううん。



 ……よし。ここに縛りつけておこう。


 要は元凶を倒すまで大人しくして貰えればいいんだ。早速俺は生成スキルで鎖を数本用意し悶える騎士をお構い無しに雁字搦めに縛り上げ、地面にこれまた生成スキルで作ったぶっとい楔で鎖を固定し更に暗示スキルを使う。


 勿論騎士には掻き消されるので使わない、使うのは騎士の身に纏った鎧と二振りの剣だ。鎧と剣には当然だが支配は及んでいないあくまで騎士本体のみだ。


 俺の暗示は抵抗しようと思えば出来るし、そもそも知能が高かったり自意識が強かったり感情が昂ったりと要因が重なると効きづらかったりするが、その代わり際限が無い。


 どれほど強力な支配だろうとそいつの使う道具までは支配できないだろう。それに、何となくだがこの支配の条件のようなモノが分かってきた。


 これだけ見ていれば俺でも分かる。この強力な支配の肝は『首』だ。まあ、単純に趣味の可能性もあるがリルの頭が隠されていたのが証拠だ。


 恐らくこのスキルは支配したい相手の首を奪うとその下の体を操れるとかそんな感じだろう。正直俺も何言ってんだって感じだが、そうにしか見えないんだから仕方ないだろ。


 ま、謎を解いたところで早速暗示をかけよう。まぁそんな凝った暗示はかけないが。


 俺は騎士の鎧と剣に『その場を動くな』と言う暗示をかける。これで鎧と剣はこの場に固定され騎士も同時に動けなくなった筈だ。



 それではお楽しみタイムに移ろう。


 こいつが持っていたこの両刃剣。見れば見るほど厳つく無骨で野蛮でとても常人が扱える様な代物で無くメチャカッコいい。


 つい最近槍をどっかの誰かに奪われそのまま消えたから、どうにかうまいこと暗示をかけてこれを俺の物にしたい。



 カ、シテ。カ、シ、テ。


 え〜。


 コイツが何やら騒がしい、無視して暴れられるのも嫌なので渋々両刃剣を持たせる。壊すなよ。


 すると。


 カ、カイジョ……カカ。イジョ。


 両刃剣全体に何やらガラス割れのようなエフェクトが広がり想像通りの割れる音が鳴り響く。



 ・・・は!?オマエ何した!?


 ツナカリ、キッッッタ。



 いや、え、は、いや、あ? 


 数秒固まる俺をリルは不思議そうにじっと見つめていた。

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