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第六十八話

 俺の意識の奥底に潜むもう一つの人格に言われるがまま俺は屋敷の屋根の上に登っていた。


 最初はコイツがリルの言葉を本当にわかっているのか半信半疑、いや全疑だったが屋根の上に向かうとリルは満足した様子だったし着いたら着いたで遠くの方を何かぶつぶつ喋りながら見つめていた。


 どうやらコイツは本当にリルの言葉が分かるらしい。


 まあ、都合がいい事には変わらないので引き続きコイツにはリルの通訳をしてもらうとしよう。


 だがここに来てリルの表情が険しい。さっきからずっと遠くの闇に覆われた領域を見ている。向こうに何か気になる物でもあるのだろうか。


 すると、リルはまた何やら俺に向かって話しかけてくる。雰囲気だけで見ると何やら不満というか文句があるように見える。あー、翻訳をお願いしても?



 ……モト。ウ、エ。


 もとうえ…… もっと上に行きたいのか!でもこれ以上高い所となると…… 真ん中の城しかないな。だったら早速行くとするか。


 屋根の上で踏み込むと屋敷を壊してしまいそうなので、一旦地面に降りてリルの入った箱の蓋を閉めガッチリ抱えてからマナで足を強化しつつ一気に飛び上がる。


 それにしてもデカい城だ。クレーンなどの重機が無いのにこれほどの城を建ててしまうなんて、これもマナという不思議な力の恩恵か、この世界をまだほんのちょびっとしか見て回ってないが見れば見るほど謎が深まるばかりだ。まあ、楽しみが尽きなそうなのでその点は良かったと思う。



 …ケ、ロ。


 ん? どうした。


 ヨケ、ロ!!!


 その瞬間、俺の飛び上がるスピードを軽く凌駕した速度で下から何かぶっとい物が回転しながら飛来する。


 ギリギリで身を捩り何とか回避するも推進力が落ち、城のどこかの外壁にへばり付くことになった。すぐさま飛んできた方向を凝視するも何も見当たらない。辺りを見回しても結果は変わらなかった。しかし


 マエ!!


 正面を見るといつの間にか同じ高さにまで上がってきたソイツと対面した。


 首が無いのは言うまでもないが、人にしてはかなりデカい。くすんだ鎧を身に纏い後ろでなびくマントは絵になるカッコよさだが見惚れている暇はない。


 両の手に握られた二振りの剣が今まさに自分自身に振り抜かれようとしていた。マズい! と思ったのも束の間、いつの間にか生成された腕で俺は二本の剣を受け止めていた。



 た、助かった。ありがとう。


 コイツからは何も返ってこない。まるで目の前に集中しろと言わんばかりだ。

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