第六十七話
さて、リルも万全とは言えないが気を取り直して屋敷の探索を始めよう。まずは何処から行くか…… うん?
ム、コウ…… ナニ……カ。
声だけしか聞こえてこないが玄関の正面の階段を上って右にある扉の事を言っている様だ。向こうに何かあるってのか? てかコイツ段々喋るようになって来たな。まあいいけど。
グルルルルルル……
悪かったって、名前はそのうち付けるから。だから唸るな。
俺は階段を上り扉を開ける。通路に敷かれた絨毯、窓、壁紙と絵画に天井所々荒らされてはいる物のどれをとっても高級、豪華、絢爛の言葉に尽きるかぎりだ。だが、コイツが言うような何かがあるようには見えない。俺は取り合えず奥に進んで行く。
壁には様々な絵画が飾られていてまるで美術館に来た気分になる。風景に誰かも分からない人物が正直これらの深みが分かるような教養は身に着けていないためただ単純にすごいの一言に尽きる。だが、そんな絵画を眺めながら歩いていると通路の真ん中あたりに掛けられた絵画が目に留まる。
家族の集合写真のように大人の男女と恐らくその子供であろう二人の姉妹が描かれた絵画だ。そしてその中でも目を引いたのがそこに描かれた姉妹だ。背の低い妹の方はリルだ、まあこの子の家だからそれは当然として問題は姉の方。顔はもちろん見ても誰かは全然分からないが、その身に着けたドレスには見覚えがあった。
ここに来る前、屋敷で俺を案内して飯を食わせてきた首無しお嬢様と同じドレスだ。
マジかよ……
偶々かもしれないし俺の記憶違いかもしれないが、いや。コイツがわざわざ此処を教えたのはこれを俺に見せるためだ。リルとあの屋敷の首無しお嬢の関係を俺に知らせるために!
でもどうやって?は後でコイツに聞くとして、問題は俺がここに来た経緯だ。俺は首無しお嬢の屋敷で飯を食って気づけばここに居た。間抜けに聞こえるが今は置いておく。そしてリルを見つけた。さらにリルと首無しお嬢は姉妹…… 偶然にしては出来過ぎじゃないか。俺がここに送られたのは最初は嫌がらせかとか何なら何かの生贄かとも思った。
でも。もし。この子を見つけて連れ帰るのが目的だったら…… 飛躍し過ぎか? はぁー、これ以上は無駄か。どっちにしろ俺の目的は変わらないからいいか。だが確信はまだ持てないのでリルにこの事はまだ伝えないでおこう。
俺は絵画をあとにしてその場を離れた。それから手当たり次第様々な部屋を物色しているといつの間にか書斎に入り込んでいた。
いつも通り何かないかリルが見やすいように箱を抱えながら物色していると、デスクに一枚のメモが置かれていた。俺にはさっぱり分からない物なのでただの背景と化していたが、リルには違ったようだ。
メモを見るなり声を上げ俺をそこまで誘導する。ジッとメモを見つめること数分。リルは俺に何かを必死に伝えてくる。
だが、如何せん何を言ってるのか分からないで困っていると急に意識の奥底からコイツが喋り出す。
ウ、エ。イキ……タ。イ。
え、お前リルの言葉分かんの!?
チョト、ネ。




