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第六十六話

 おお……


 思わず心の声が唸り声になって漏れてしまう。豪華な扉を開けて目に映る装飾は豪華の一言に尽きる。つい最近同じような感想を抱いた気もするが、とにかくこの屋敷がリルの目的地に違いない、屋敷に入るなり何やら大声で叫んでいる。多分『お父さん、お母さん』そんなところだろう。聞きなれない単語だが恐らくだが言っている意味がなんとなく分かってしまう。


 叫びが段々悲痛さを増していく。


 なるほど、ここはリルがこんな姿になる前に住んでいた屋敷だったのだろう。だからこの街を見た時からここに来たがっていたんだな、そして……


 だけど現実はそんなに甘くない。物語みたいにどれだけ願っても叶わないものは叶わない。この街の荒れようを見ていれば何となく察しがつくと思うが幼い少女にそれは酷な事か。


 目から涙を溢れさせながらも必死にリルは呼びかけるも、誰もいない空間にリルの声だけが響く。


 泣き出してもいいはずだが、涙を流すだけでジッと一点を見つめ固まっている。


 この子は今何を思い、何を感じているのか一言二言では到底言い表せないものがこの子の中に渦巻いてるのをひしひしと感じる。


 ハッキリ言ってこの子は今まで、どんな人生を歩みそこにどんな物語があってどんな未来が待っていたのかなんて知らないし正直俺には関係ない話だ。そもそも俺の目的はこの子と一緒にこの闇から脱出することだけだった。


 でも…… 


 意識の奥底から震えた唸り声が聞こえる。おや?意外とコイツも同じ気持ちか。


 そうだよな…… せっかくこんなやべぇ力を持ってるんだ自己満足かもしれないし偽善かもしれない。だけどこんなの見せられちゃ、黙ってられないわな。



 仇を取ってやる。


 俺のスキルで伝わった言葉を受けリルは俺を仰ぐ。


 途方もない時間、箱に閉じ込められ一人寂しく泣き続け、やっとの思いで家に帰っても自分を出迎えてくれる者は一人も居ない。


 家族に会いたかったな…… 俺もだ。


 でも俺はまだマシなのかもしれない。こんな姿になっても門をくぐれば家族のいる世界に行けるんだから。



 だからせめてリルの受けた屈辱と無念は俺が代わりに晴らす。


 グルルルルルルル……


 悪かったって。俺とお前で、だな。


 よし、まずはこの屋敷を見て回ろう。何か持ち帰れるものとかいろいろ有るかもしれないからな。



 だからもう泣くな。涙より笑顔、だ。


 あ、しまった。


 俺はこの言葉を笑いながらリルに送ってしまった。牙を剥き出しにし口角が吊り上がったコレは果たして笑顔と呼べるのか疑問だし、何より俺の顔を見てあんなに泣きじゃくったこの子がどうなるか想像がついたからだ。


 しかしそれを聞いたリルは箱の中に敷かれた布に顔を埋め涙を拭った後、俺に向き直りニコっと白い歯を見せながら笑顔を向けてくる。


 俺より強いなこの子は。

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